以上の考察を踏まえて、私たちはつくば市の公民館に以下のことを提言する。 提言:つくば市の公民館に対する相互補完体制の提案 つくば市内に17館存在する公民館に、それぞれ得意分野を持たせることを提案する。 その得意分野の選定は、対象地域の基本的特性を分析した上で決定する。 しかしあくまで公民館に最低限度必要な設備、例示すると会議室や寄り合いの場に使用できる和室、 またある程度サークル等の多目的な利用に対応できる部屋、等の基本的な設備はすべての公民館に 備わっている必要がある。それらを前提条件として踏まえた上で、 それぞれの公民館で個性化を図っていくことが望まれる。 付け加えるが、公民館の個性化とはあくまで利用者を限定するのではなく対象者と考えて、 業務の効率化を図っていくことである。 公民館の得意分野とは、施設面での設備の充実、開設時間の多様化、学習・教育の充実が考えられる。 まず施設面での設備の充実だが、従来の「地域づくりのための公民館」という考えの元では 公民館の施設は、日常生活圏施設としての役割からも、どうしても画一的にならざるを得なかった。 しかしその従来の日常生活圏施設、つまり対象地域の住民に根ざした施設、という枠組みに とらわれないで広域的に考え、体育館などの運動設備を備えた公民館や、 専門的な調理室を備えた公民館、お年寄りのために和室などのコミュニティースペースを備えた公民館、 またパソコン学習ができる設備を備えた公民館、などの設備面の個性化が望まれる。 理想としてはこれらの設備がすべての公民館に供わっているのが望ましいのだが、 それは経済的な面から難しい。そのために、それぞれの公民館において、得意分野という形で 変化を図ることが望ましい。 次に開設時間の多様化だが、先述したとおり、今までの公民館の社会的な位置付けでは 時間的な面でも画一性を迫られていた。しかし利用者の年代・職業属性の違いにより、 公民館を利用する時間帯に違いがあることがわかった。この属性による違いに対応するため、 たとえば夜間しか利用できない会社員、公務員などの人々のための利用時間の延長が考えられる。 現在公民館の開設時間は午前9時から午後10時までとなっている。 ここでさらに長い時間の開設を要求するのはその対応する職員の手間、また経済的な面でも難しい。 そこで開設時間の多様化として、開設時間を1時間半遅くずらした公民館を提案する。 午前10時半から午後11時半まで、と開設時間を遅くずらして設定することによって、 今まで利用しづらかった人々が利用できるようになる。 すべての公民館が同時刻に開設しているのに比べて、開設時間をずらすことにより 住民の利用可能時間に柔軟に対応する事ができる。これは公共サービスの公平性にも則しているといえる。 次に学習・教育の充実だが、こちらも属性により求めるものに差が現れている。 そのため学習・教育の面での個性をもたせることが必要である。 内約として講座の対象、そして内容の変化が望まれる。 各公民館の得意分野として、対象利用者の属性にあわせた学習を設定し、 それに設備面での充実を掛け合わせて、更なる学習・教育の場としての役割に努める。 このように対象者を設定することによってより専門的な教育やより実用性の高い教育に 勤めることができ、教育の質の功上につながると考えられる。 以上3点の得意分野を持たせることによるメリットをまとめると、 従来の公民館では対応しきれなかった細かなニーズへの対応ができる、ということになる。 各公民館が独自の方向性を定めることによって、行政の経済的負担を増やすことなく、 かつ住民の求める要望にも柔軟に対応することができると考えられる。 ここで、公民館に得意分野を持たせることの背景として重要になってくるのが、 公民館同士で機能の相互補完化を図る、ということである。 そこで従来の対象地区を少しまとめて考える。3〜4の対象地区を1つの対象地区として考え、 その中の各公民館で個性化、そして相互補完化を図っていく。 あまりにも広い範囲、たとえばつくば市全体で個性化を図るということにすると、 アンケートでは「魅力は距離的な不満を上回る」という結果が出たが、 だからといって距離がいくら遠くてももいいということはなく、 その点での住民の不満は大きくなるであろう。 この個性化が住民にとって利用機会の減少となってしまう恐れがある。 これらの不満をなるべく少なくするために、 ある程度中域での公民館の相互補完体制を構築する必要がある。 この中域的な公民館の考え方は従来の日常生活圏施設としての公民館の位置付けからは 少し離れた考えであるため、つくば市における広域生活圏施設である圏民センターと 一部役割を共有する部分が出てくるかもしれないが、 住民の視点から見ると利用施設の選択肢が増え、それが学習の機会の拡大につながるので、 これは望ましいことと解釈する。 |
実際のつくば市のモデルを作成するにあたり、その根底に考えることは、 あくまでも実際の地域に即した得意分野を持たせるということである。 高齢者が多い地域の公民館を若者向けにしても、それではそれに伴う弊害が強まってしまう。 いかに効率よく個性化付けするか、が問題となる。 つくば市の公民館対象地域別年齢構成(図3.1)によって分析すると、 つくば市全体の人口のうち、20歳までが25%、20歳〜40歳までが35%、 40歳〜60歳までが15%、60歳以上が15%となっている。 内約として、周辺開発地域では40代以上の年齢構成割合が大きくなっている。 対称的に学園都市地域では40代以下の人口の割合が大きくなっている。 その属性の偏りを考慮して、公民館に得意分野を持たせる必要がある。 ![]() 図3.1 公民館対象地区別年齢構成 まず、市北部の大穂、筑波、吉沼の3つの公民館について考える。 ![]() 図3.2 中域的公民館対象地域体系例1 ![]() 図3.3 中域的公民館対象地域体系例2 地域別年齢構成から把握すると、これらの公民館はどの公民館も高齢者の人口の割合が高く、 そのため、個性化の基本としてはあくまでも高齢者の利用の面で得意分野を持たせる、 という方針になる。ただこれら3つの公民館すべてにおいてこの個性化を推し進めていくと、 青年、中年齢者の利用に関してデメリットが生じると考えられるので、 この地域では筑波、吉沼公民館を高年齢者対象、大穂公民館を特に対象を持たない公民館と設定する。 高年齢者対象公民館では、学習・教育の面では高齢者の方が重視する傾向が強かった生涯教育の充実に、 講座や設備の充実で対応していくことが必要である。 また、高齢者向けにコミュニティースペースの拡大に努める必要がある。 また高齢者向けの公民館ということもある、夜間の活動を余り求められてはいないため、 閉館時間を早くすることも考えられる。 大穂公民館は少ない属性の人をカバーするために、特に個性を持たせない公民館として設定する。 次に同様に豊里、島名公民館についても個性化を図っていく。(図3.3) この2つの公民館も先述した大穂、筑波、吉沼公民館と同じ様に 対象地域では高齢者人口の割合が高いため、 重点的に高齢者用の公民館として個性化に努める必要がある。 それに加え、少ない属性の人の利用のカバーに努めるため、またバランスを考えて、 島名公民館を高齢者向け、豊里公民館を特に対象を持たない公民館と設定する。 ![]() 図3.4 中域的公民館対象地域体系例3 以上のように対象地域住民の属性、また周辺公民館との相互補完体制の構築のための バランスを考えて、公民館の個性分野を設定していく。(図3.4) 周辺開発地域の残りの公民館の個性化については谷田部、広岡、桜公民館については高齢者向け公民館とし、 小野川、南、西公民館は特に個性を持たせない公民館として設定する。 学園中心地域の春日、竹園、二宮、吾妻、並木、手代木公民館についての提案をする。 まず春日、吾妻公民館だが、この2つの公民館は対象地域の年齢構成が 非常に若く偏ったものとなっている。そのため、開設時間を遅くずらして設定することが求められる。 施設的には体育設備の充実、またその時勢ののトレンドに柔軟に対応して設備を対応させていくことが 必要である。青年向けの公民館としては市内ではこの2館のみの設定となるが、 実際の公民館の利用者の比率からこの数が妥当であり、また青年は行動範囲も広いため、 市の中心部に2館を存在させることによって、対応できるものと考えられる。 次に竹園、二宮、並木、手代木公民館だが、地域の基本属性としてこの地域は、 比較的新しく誕生した住宅地であり、また公務員住宅の存在等により、 対象地域の住民の年齢構成は、30代〜50代の割合の値が非常に他の地域と比べて高い値となっている。 そのため、これら中年層に対応した公民館の個性化が求められる。 具体的には、「技能」を身につける公民館と、「知識」を身につける公民館を提案する。 「技能」を身につける公民館とは、調理室の機能の充実、パソコン室の完備、 音響施設の充実等ハード面での充実に励み、日常生活に役立つ技能の取得に対して努めることが望まれる。 また「知識」を身につける公民館ではソフト面の充実、 つまり人生を豊かにする知識の取得を目的とする。 婦人講習会や、悩み相談、地域に関する講習会等などの講座の充実や、 これらのサークルを優先的に誘致、そして住民に対する積極的な情報公開により それらの効果を広げていくことが必要である。 この2点での個性化を、竹園、二宮、並木、手代木公民館に割り振る事を提案する。 これらの個性化により、従来の公民館では対応しきれなかった 細かなニーズへの対応ができる、と考えられる。 |