都市計画マスタープラン演習1班

提案4Rain Garden

雨庭(あめにわ)の設置

背景

本提案の背景には土浦市街地の気候変動に伴う豪雨の激甚化による、深刻な水害リスクがあります。土浦市が公表している「内水ハザードマップ」による浸水想定地域の多くはもともと田畑や蓮田であり、宅地化に伴って水路の排水容量が不足してしまっているためであります。特に、二中地区において浸水深が1mを超える深刻な被害が想定されていますが、現在、同地区では新しい水路(木田余ポンプ場)を建設中であり、工事完了後には浸水危険性はほぼなくなる見込みであるなど対策が進められています。一方、市役所や土浦駅を含む中心市街地においては、想定されている浸水深は最大で50cm未満と比較的浅くなっているものの、住宅や商業施設が高密度で立地しているため、一度浸水すれば大きな被害が発生する可能性があります。しかし、道路幅員が狭く住宅が多いため、対策工事が困難となっており、有効な改善策が見つかっていない状態が続いています。また、霞ケ浦流域、特に土浦市を含む西浦周辺では、市街化に伴い農地や緑地が減少し、アスファルトや建物といった「不浸透面」の面積率が上昇し続けています。不浸透面が増えると、雨水が地中に浸透せず、路面の汚れを巻き込んでそのまま霞ケ浦に流れ込むため、窒素やリンなどの汚濁負荷を増大させ、霞ケ浦の水質悪化の一因となっています。

雨庭背景1 雨庭背景2

図:雨庭提案の背景

概要(詳細)

背景にある課題を踏まえ、防災と環境の課題を同時に解決する解決策として、「雨庭」を市内全域に導入することを提案します。雨庭とは、屋根や道路に降った雨水を下水道に直接放流することなく、植栽された窪地に導き、一時的に貯留し、ゆっくりと地中に浸透させる機能を持った緑地空間のことです。
雨庭設置の先行事例として、京都市や熊本県の取り組みが挙げられます。京都市では、「市民公募型緑化推進事業」の一環として四条堀川交差点などの植栽帯を雨庭化し、大雨時の道路排水不良を解消することに成功しています。また、熊本県では「緑の流域治水」として、高校生が施工に関わる形で学校敷地への雨庭整備を進めています。これらの事例は、用地確保が困難な市街地においても、既存の道路空間や学校敷地を有効活用することで、雨庭の導入が可能であることを示しています。

雨庭詳細1

図:雨庭の概要

対象地(整備計画)

この計画では、土浦市内水ハザードマップの想定雨量(過去に浸水被害が発生した平成20年8月末豪雨の雨量、1時間に31.0mm、10分間に22.5mm)に対応するため、市街地中心部(約118.8ha)の雨水処理を補完する施設として、合計6.1ha(深さ60cm)の雨庭を市内に分散配置します。この「6.1ha」という面積は、土壌への浸透を見込まず、市街地全域に降る31mm の雨量を物理的にすべて受け止めると仮定した場合に必要な面積として算出されたものであり、実際には雨水は土壌に浸透するため、もっと少ない面積で受けとめることが可能になります。
設置場所は、特定の土地に依存せず、道路、公園、民間地、公共施設を活用します。

設置場所 整備イメージ 面積(目安)
道路・路肩 路肩に砂利を敷いた溝を作り、路面の雨水を直接吸い込ませる(バイオスウェル) 1.5ha
公園・緑地 芝生を少し低くして、大雨の時だけ一時的に水を溜める 2.0ha
住宅・民間地(上流) 庭や駐車場の隅にある空きスペースを、雨水の吸い込み口にする 1.5ha
学校・公共施設 敷地の端にある緑地を、雨水を溜めて地中に逃がす場所に変える 1.1ha
合計 6.1ha
雨庭対象地

図:雨庭の対象地

これらを設置することにより、降雨量が内水ハザードマップで想定される雨量(31mm/h) より多いか少ないかに応じて2段階の効果を発揮します。
想定内の雨量(~31mm/h)の場合:雨庭の貯留機能により100%カバーし、内水氾濫のリスクを解消します。なお、この試算は土壌の浸透能力を見込まず、雨水を全量貯留すると仮定した数値であるため、実際には土壌への浸透効果が加わり、防災安全率はさらに高くなります。
想定外の雨量(31mm/h~)の場合:ゲリラ豪雨のような設計を超える未曾有の豪雨が発生した場合でも、雨庭を経由させることで下水道への流入量を50%程度カットし、流出ピークを最大6 時間遅らせます。これにより、浸水が発生したとしても被害を最小限にとどめることが可能になります。

雨庭詳細2

図:雨庭の詳細効果

定性的効果

雨庭には、流出抑制とピークカットの2つの治水機能を有します。
流出抑制は、通常の降雨であれば、流出総量の90%以上を地中に浸透させ、下水道への流入をほぼゼロにします。また、想定外の大雨であっても、流出総量を50%程度に抑え込むことが可能です。
ピークカットは、雨水を一時的に溜め込むことで、雨水が下水道に到達する時間を最大で6時間遅らせる効果があります。これにより、降雨のピーク時に下水道管や排水ポンプにかかる負荷を分散させ、内水氾濫の発生を防ぐことができます。また、内水氾濫が発生してしまう場合にも、発生までに時間の猶予を持たせることができるため、住民の避難を余裕をもって行うことができます。
雨庭を設置することにより、防災面だけでなく多面的な利益が都市にもたらされます。植物と土壌による濾過作用によって、雨水に含まれる汚濁物質は除去され、霞ケ浦の水質保全につながります。また、植物の成長に伴い土壌構造が発達し、浸透能力等の防災機能が経年的に強化される点も特徴です。加えて、都市の修景・緑化、ヒートアイランド現象の緩和、二酸化炭素吸収源としての機能も期待できます。

定量評価

環境便益としては、雨庭は植物の光合成による二酸化炭素の吸収・固定効果をもたらし、年間CO2削減量は95.95 t-CO2/年となります。経済的便益としては、年平均被害軽減期待額が約4.2億円になると考えられます。

収支

項目 金額(円)
初期投資額 15.3億円
補助金 7.6億円
運用費用 0.6億円/年
定量的便益 合計 4.2億円/年
直接収入 0円
間接収入 0円
コスト削減額 4.2億円/年
年間収支 +3.6億円/年

現金収入ではないですが、市が負担すべき損害の回避分を利益とみなします。

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