水の都 土浦

商業施設の郊外化により、かつて賑わいがあった中心市街地は今では廃れている。また隣接する霞ケ浦は都市化による人口流入の増加や生活様式の変化に伴い水質が悪化しており、水質の改善が求められている。 土浦市の中心市街地は、近代以前から城下町として栄えていた。中心となる土浦城から守りのための堀が張り巡らされ霞ケ浦の水運と共に発展してきたが、経済成長と共に水路は中心市街地から消えてしまった。土浦市の中心市街地の親水性を高めもることで、忘れかけている水の都という土浦市のアイデンティティ―を取り戻し、守る必要がある。 以前の水の都という印象を取り戻すために、霞ヶ浦沿いの地域で「ウォーターフロント開発」、中心市街地では「水質改善」と「水路再生」を行う。

ウォーターフロント開発

対象となる地区は港町である。港町地区は、土浦駅の東側に位置し最東端まで土浦駅から徒歩20分である。霞ヶ浦に面しているものの、地区のほとんどが住宅であり、霞ヶ浦の景観が生かされているとは言えない。平成26年土浦市かわまちづくり計画によると、桜川から港町にかけて散策路が整備され、地元住民が健康のために歩くには良いが、さらに整備を進めることで、市外からも人を呼び込める魅力ある地区にすることができると考える。その整備の内容とは、まちづくり会社が中心となり、市と市民が協力して決めていく。一つ考えられる案としては、現在の散策路の幅を広げ、霞ヶ浦や桜川を借景したカフェなどを集積させることである。現在ある散策路や、桜川沿いの桜並木と合わせて、カフェ巡りもできるスポットとして、賑わいが創出できると考える。

水質改善

次に水質改善について。土浦市は、市が抱える最重要課題の一つとして霞ヶ浦の水質浄化を挙げている。かつては霞ヶ浦には多くの遊泳場が存在し、遠方より大勢の人が訪れていたが、都市化による人口流入の増加や生活様式の変化に伴い水質が悪化し、人が水辺から遠ざかりつつある。市民の霞ヶ浦のイメージは、平成3年度に実施したアンケート調査では、「大変汚れている」と感じている人が68.8%を占めていたが、平成24年度のアンケートでは33.5%に減少した。しかし、「大変汚れている」と「少し汚れている」を合わせると依然として76%を占めており、水質の改善をはじめとする「汚い」というイメージの脱却が急務となっている。 そこで、霞ヶ浦、市内の河川のうち、上記のウォーターフロント開発など観光に利用される水辺を優先的に、集中的に浄化する。参考となるのは、カナダのトロント・ウォーターフロントにある、シェーボーン・コモン(Sherbourne Common)だ。水質浄化の施設といえば、汚い、臭いといったイメージがあり、「Not In My Back Yard(NIMBY)」、施設の必要性は認めるが、自らの居住区域には建てないでくれ、という立ち位置にある。しかし、シェーボーン・コモンは、大規模な公園な設計の中に、有毒な副産物の発生しない、紫外線による汚染水浄化施設を入れることで、汚水処理施設の負のイメージを払拭し、同時に賑わいの創出にも成功した。 そのような施設を、川口運動公園の中の空き地に設置する。現在川口運動公園付近は、土浦市川まちづくりの中の水辺拠点として位置づけられているが、敷地東側に約30000㎡の空き地がある。この場所は、マンションが建つ計画であったが途中で頓挫し、基礎と柱の一部が残されている。この空き地を有効活用し、水質浄化と賑わい創出を同時に行うことができると考える。
写真の説明を入れます

水路再生

最後に水路再生について。かつて土浦市は城下町として栄え、土浦城を中心に市街地に水路が張り巡らされていた。しかし、戦後土浦市が人口の増加とともに発展すると、水路の多くが埋め立てられたり、暗渠に姿を変えたりと、水路は土浦市民から遠い存在となっていった。しかし、水路は都市化が進む現代に多くのメリットをもたらすものである。水の有効活用に関する環境学習の場、維持管理を通した地域コミュニティ再生の場、都市のシンボルとして歴史と文化を継承する場として期待され、地域のアイデンティティとなり、観光資源として都市の価値を高めうるものである。また、空洞化が目立つ土浦市街地や商店街の空き地を、公共的空間として活用することは、市街地活性化施策になりうる。加えて、このような水路を再生するうえでは、その土地本来の地形が考慮することが必要であり、いわば都市の記憶を取り戻すことにもつながる。 水面再生にかかる費用として、初期費用は84,600円/㎡、維持管理費は1,900円/㎡・年である。下記の図は、かつて土浦市の市街地に張り巡らされていた水路を現在の地図に反映したものである。その面積は、2つの沼を含めて約220,000㎡である。今回は沼の再生までは考えないので、沼を含めない水路のみの面積は約80,000㎡である。よって、沼を含めないすべての水路再生にかかる費用は、初期費用が約67億円、維持管理費が152万円/年である。 水路再生実現における課題は、水路のための水源の確保、水路再生により生活スタイルが変わる周辺住民の理解などがある。水源に関しては、すでに河川などに放流されている下水再生水・地下構造物への浸出水についても、水路を通したうえで河川に放流することで解決される。また、それまで車道、遊歩道、公園などに利用されていた水路敷が、水路復活によって消失し、周辺住民の生活スタイルに影響を及ぼすことに関しては、まちづくり会社や市の職員が、周辺住民たちと繰り返し協議することで理解を得ていく。地域の都市水路ビジョンを示し、行政と市民が共通認識の下で計画を行っていくことが重要となる。また、整備された水路の維持管理により、地域コミュニティの創出も期待される。地域住民だけでなく、水路によりメリットを得るテナントなどの企業、商店街、市民団体などの多様な主体が維持管理に参加することが可能となるようし、地域一体となって水辺空間の創出に尽力すべきである。
写真の説明を入れます

SAMPLE COMPANY

SAMPLE COMPANY