背景・課題
人口・財政
総人口・年齢別人口
人口推移について、昭和55年から平成2年にかけては、高い人口増加率で高成長期となっていた。しかし、総人口は2000年をピークに減少傾向に転じている。年齢別人口については、幼年人口は減少傾向、老年人口は増加傾向であり、平成12年には幼年人口数と老年人口数の逆転が起こった。また、増加傾向にあった生産年齢人口は平成12年頃からは減少傾向にある。年齢別の人口構成割合で見ていくと、幼年人口、生産年齢人口の割合はともに減少傾向にある。一方で老年人口割合は増加し続けている。平成12年には老年人口割合が15%を超え、超高齢化社会となり、さらに平成17年には第一次ベビーブームの世代が65歳以上になり、老年人口が大幅に増加した。今後は第二次ベビーブームの世代も高齢に近づいていき、第三次ベビーブームは訪れなかったため、幼年人口の増加も見込めず、さらなる少子高齢化が懸念される。
自然動態
自然動態について見てみると、平成19年までは出生数が多く自然増となっていたが、平成20年以降は死亡数が上回り自然減へと転じ、その後も自然減は拡大している。出生数は年々減少していく傾向にあるのに対し、死亡数は高齢化の進展により増加傾向にある。平成29年時点において自然減は483人ですが、死亡数の増加により自然減のさらなる拡大が考えられる。また、出生数に影響を与える合計特殊出生率は全国平均、茨城県平均を下回る低水準にとどまっていて、全国的に回復基調にある直近についても、土浦市は低下傾向となっている。平成25年の時点での合計特殊出生率は1.33(全国平均 1.43)と人口置換水準の 2.08 を大きく下回っており、今後も大きく改善する見込みはない状態である。
社会動態
社会移動に関しては、転入数が平成10年以降減少傾向にあり、平成26年の転入数は6,600 人程度となっている。一方で転出数は、平成15年までは増加傾向にあったが、以降は減少傾向となっている。平成14年以降は一部の年を除き、転出超過で推移しているが、その傾向は比較的大きい時点であっても300人程度の転出と、それほど大きな転出超過となっていない。また、土浦市と茨城県内他市町村との間の社会移動の状況をみると、転入数から転出数を差し引いた純移動数では、かすみがうら市や水戸市、石岡市など土浦市の北側に位置する市町村との間では転入超過となっている一方で、つくば市や阿見町、牛久市、龍ケ崎市といった土浦市の南側に位置する市町村との間では転出超過となっている。茨城県外の都道府県との間では、東京都、千葉県との間では大幅な転出超過となっているが、埼玉県や神奈川県との間では凡そ均衡した転出入となっている。
年齢別の社会移動状況を見てみると、男性の15~19歳が20~24歳になる時に、一度大きく転出超過となり、さらに25~29歳になるときに大きく転入超過となっている。これは、高校卒業後の就職・大学進学等に伴う転出者が多い一方で、大学卒業後の就職による転入者が多いためであると推測される。また、男女ともに30歳代での転出超過が目立つが、これは結婚や出産・育児、住宅購入などのライフイベントとそれに伴う住居変更の必要性の発生が要因として考えられる。
財政概要
財政収支について、土浦市の財政は慢性的な収支不足状態であると言えます。平成29年度から平成39年度の累積収支不足額は、130億円になる見積もりである。この財政収支の赤字分を補填するために利用してきた財政調整基金が枯渇する見込みである。財政調整基金は自治体が財政的に余裕のある年度に積立てておく貯蓄だが、土浦市によるとこれが平成36年度に枯渇する。財政調整基金が枯渇すると、以降は解消困難な財源不足へと陥るため、財政収支の改善は土浦市の喫緊の課題であると言える。
歳入
平成28年度の歳入の内訳は、市税の割合が最も高く、約4割を占めている。地方交付税(7%)、国庫支出金(14%)、市債(19%)も比較的歳入に占める割合が高い。市税としては、市民税(個人・法人)や固定資産税などがあげられる。土浦市では、個人市民税税収は緩やかに上昇する見込みとしているが、今後人口減少に伴って納税義務者数は減少する。さらに世帯年収割合を全国と比較しても、高所得者が特に多いわけでもないため、個人市民税の増加は難しいと考えられる。また、固定資産税税収についても、地価が下落している地区が多く、減少する傾向にある。
歳入
土浦市の歳出の合計はおよそ総額560億円である。このうち人件費、扶助費、公債費を含むものを義務的経費、投資的経費、その他には物件費、維持補修費、補助費をまとめたものを分類した。投資的経費については、行政がプロジェクトによって能動的にアプローチできることため、柔軟に設定でき、扱いやすくなっている。平成32年度までに現在の大規模なプロジェクトが完了するほか、投資的経費を抑えることで減少傾向になっている。平成33年以降は年間35億円で投資的経費を推移させる予定である。この35億円とは、既存の公共施設、交通インフラを維持更新していくために必要な金額であり、新たな投資をしないことで投資的経費を抑え、財政収支の負担を軽減させようとする見通しである。
問題の概要
土浦市は現在人口減少と少子高齢化という二つの大きな問題を抱えている。これらの問題の主な原因は、人口の自然減の進行、土浦市外への人口流出、高齢化の進行が考えられる。これらの問題は、財政を圧迫している。人口の自然減の進行や人口流出は、地方財政の収入源である個人市民税、固定資産税の減少を引き起こしている。高齢化の進行については、扶助費の義務的経費の負担増大を引き起こしている。これらの対策として土浦市は平成32年度の大規模プロジェクトの完了を機に投資的経費を既存のインフラ施設を最低限維持できる金額に推移させ、財政収支の負担を軽減させる予定である。しかし、土浦市では、現在進行形で停滞しているプロジェクトがあり、このままの工期で進めると40、50年かかり200億円規模のプロジェクトがある。このように土浦市の見通しと現場では乖離がある。交通・都市構造
土浦市における交通・都市構造問題を時系列・交通モード別に分類し、課題発見を行った。時系列としては「現在」「これから」「さらに先」と分類しており、「これから」は土浦市が目指している将来都市像に、「さらに先」は日本の大きな社会的潮流に即して論じている。交通モードとしては「自動車」「コミュニティバス」「デマンドタクシー」「鉄道」「民間バス」の5種に分けて論じている。自動車問題
マスタープラン上の自動車に関する問題まず自動車問題として、マスタープラン上で土浦市内の課題や問題として取りあげているものをまとめた。
挙げられた課題・問題点は三点あり、第一に「通学路などの生活道路の整備」がある。土浦市には狭隘道路と呼ばれる幅員4m未満の道路が多く存在しており、人や自転車の通行が危険であり、また、車両のすれ違いも困難になるという問題が発生している。さらに小中学校の通学路になっており交通量が多いにも関わらず、狭隘で歩道がなく危険な道路も存在している。これらの問題は地域間交流のみならず、地域生活にも大きな支障をきたしていると言える。
第二に「危険箇所、渋滞箇所の改善」である。問題とされている点は、交通量が多いのに関わらず幅員が狭い道路が存在すること、高架橋下などの交差点の見通しが悪いということだ。これについては下の『交通事故』のセクションで詳しく取り上げる。
第三に「生活道路が迂回路として使われる」ことである。上記二つの問題点により幹線道路が混雑し、それを回避するために生活道路を迂回路として車が利用しているという問題が発生している。本来は歩行者優先である生活道路に車が多く入り込んでくることにより、歩行者の安全が確保されず危険である。
交通事故
茨城県の中での土浦市の交通事故がどの程度の発生量なのかを平成29、30年の茨城県の市町村別交通事故発生数からみたところ、14件という水戸、つくばに続く件数である。44の市町村がある茨城県内ではトップクラスの事故発生数であると言える。渋滞
常陸河川国道事務所では一般道における主要渋滞箇所を茨城県全体で示しており、それによると土浦市周辺に集中して渋滞箇所が存在していることがわかる。以下の図は赤のラインで平日のピーク時の時速が20km/h以下の区間を示しており、赤の丸で渋滞多発個所を示している。その地点の共通点としては高架構造であるということと、片側一車線であることが挙げられる。高架構造の道路では下の道路から上の道路に合流するときになかなか合流できずに混雑してしまう、高架下の信号が青になるまで時間がかかるなどの問題がある。片側一車線の道路では停止するバスを追い越せずに混雑してしまう、走行する自転車を追い越せないなどという問題が発生する。狭隘道路
マスタープラン上の問題としても述べたが、土浦市では整備不十分で道路幅の狭い狭隘道路も多く存在する。これにより、車両同士のすれ違いが厳しいなどの危険が生じてしまうという問題や、走行する自転車や原動機付自転車を追い越せずに渋滞の原因となってしまうなどの問題が発生している。コミュニティバス
キララちゃんバスに関する課題は大きく2つある。1つはバス路線に関する課題である。現在のAコース・Bコース・Cコースはそれぞれバス利用不便地域の緩和に繋がっていると考えられるが、不満の声も挙がっている。具体的には、まだまだバス利用不便地域があって困っているという路線拡大を求める市民の意見がある。その一方で、財源が厳しいという理由やキララちゃんバスの目的の1つである中心市街地活性化との整合性という観点から路線縮小を検討する市の意見もあり、両者の意見が反映されたバス路線の見直しが求められている。
2つ目は利用者に関する課題です。下図に示されている通り、平成19年度から26年度までは利用者が増加していることが見て取れるが、しかし平成27年度には減少してしまっている。この原因の1つにバスの運賃が100円から150円に値上がりしたことが挙げられる。
しかし、キララちゃんバスの目的は市民を補助することであり、収入を得ることではないため、値上げによる利用者減少は問題だと考えられる。財政を見直し、市民には影響の少ない部分での経費削減が必要である。
のりあいタクシー土浦
こののりあいタクシー土浦は、他自治体が行うデマンドタクシーに比べると明らかに高い値段設定だが、利用者数は確実に増加している。しかし一方で利用登録をするのに実際に市役所に出向かないといけない、職員が自宅まで訪ねて来てやっと登録が完了するなど煩雑な面が多く、高齢者にとって難しく利用しづらいとの意見も散見される。
また利用者数は伸びているが、のりあいタクシー自体の収支率は低いため財政赤字の要因となっている可能性がある。果たして本当に廃線となったエリアで利用されているのか、それともバスが有るのにも関わらずタクシーが利用されているのか、また特定のエリアで多く利用されているのであればバス路線を復活させるべきなのではないのか、といった点について検討する余地がある
鉄道
常磐線における問題・課題を深堀するにあたって、我々は1、電車全般の問題(全国的に問題になっていること)
2、交通網形成計画の市民アンケート(市民が不満に思っている問題・課題)
3、実際に見えている問題(現地見学をして分かったこと)
の以上3つの項目に分けて考えることにした。
始めに、電車全般の問題について。全国的に鉄道に関して問題となっていることとして、路線事故・財政の問題・電車の遅延・環境問題・迷惑行為(痴漢・喧嘩等)等様々な問題が挙げられるが、常磐線において特に顕著になっている問題として路線事故がある。
2010年以降、土浦市内の常磐線の駅における人身事故は、土浦駅で11件、神立駅で8件、荒川沖駅で7件起こっており、また、常磐線全体では219件もの人身事故が起こっている。これは明らかに問題であると言え、ホームドア設置等の対応策を早急に考える必要性があると考える。
次に、交通網形成計画の市民アンケートを参考にした市民の意見について述べる。市民アンケートでは、様々な意見が市民から挙がっていたが、その中でも特に多かった常磐線の駅が居住地域から遠い・便数が少ない・料金が高いという3つの意見を取り上げた。また、これらはあくまでも市民の意見であるため、ここでは実際に問題として認識すべきかに関しての検証も同時に行うこととする。
まずは、駅が居住地域から遠いという問題についてですが、常磐線は土浦市内のちょうど中心を通っており、駅から遠い地域に住んでいる人が一定数いることは明らかである。
それらの人が実際、定期的に常磐線を利用しているのであればそれは問題であると言えるが、常磐線を利用している人の明確なデータを得ることができなかったので、駅が居住地域から遠いということは問題であるとは言えないと結論付けた。
次に、常磐線の本数が少ない・最終便の時間が早い・料金が高いという問題について考える。料金に関してはJRの基準営業キロごとの料金と比較し、本数に関してはその他在来線と比較してみたが、はっきりと料金が高い・本数が少ないとは言えないことがわかった。むしろ、常磐線は料金が高く・本数が少ないと思っている住民の意識の方が問題ではないかと考えた。なぜなら、そのような意識の定着が影響で今後の鉄道による交通に悪影響が及ぶ可能性があると考えたからである。
最後に、実際に見えている問題として、土浦駅前ロータリーの混雑の問題を考える。実際に見学をしたところ、朝・夕方の通勤ラッシュ・帰宅ラッシュの際に送り迎えの車やバス・タクシーでロータリーが非常に混雑していることが分かった。混雑が原因で事故などが起こる可能性もあり、これは問題であると考える。
民間バス
土浦市内を走る民間バスが抱えている問題を深堀していくにあたって、常磐線と同様に、1、バス全般の問題について(全国的に問題になっていること)
2、土浦市の交通網形成計画の市民アンケート(市民が不満に思っている問題・課題)
3、交通網形成計画より(実際に目に見えている問題)
の以上3つの項目に分けて考える。
始めに、バス全般の問題について考えます。全国的に民間バスで問題になっていることとして、運転手の不足・経営状態の悪化・廃止路線・バス時間の不確定さ・車両事故等様々な問題が挙げられるが、ここではバス時間の不確定さについて取り上げる。
土浦市内を走っている民間バスが慢性的に遅延しているという事実はないが、少なくともバスの時間が不確定であることにより、バスの満足度が低下していることは明らかである。キララちゃんバスにすでに導入されているバスロケーションシステムの導入の必要性があると考えられる。
次に、土浦市の交通網形成計画の市民アンケートを参考にした市民の意見について考察する。市民アンケートでは、様々な意見が市民から挙げられているが、その中でも特に多かったバスの便数が少ない・居住地域からバス停が遠い・料金が高いという意見を取り上げる。また常磐線と同様に、あくまで市民の意見であるため、ここでは実際に問題として認識すべきかに関しての検証も同時に行うべきであると考える。
この事柄を検証するにあたって、大分市を対象として具体的数値を用いたバスの満足度評価により、理想的な運賃や本数、距離を出した先行研究を参考にした。
この研究によると、理想的なバスとは、本数が1日60本以上であり、料金が200円台までで、居住地からバス停までの距離が500m以内であるバスのことを言うことが分かった。一方で、土浦市内の民間バスは本数が1~56本、料金は1000円を超えるところもあり、また、居住地からバス停までの距離も500mを超えるところもあることから、土浦市内を走るバスは理想的なバスではないと言える。しかし、この先行研究はあくまでも大分市内に限って調査した研究であるため、一概に土浦市内を走っているバスが理想的ではないとは言えない。
最後に、土浦市内の交通網形成計画に関して、ここではバス路線廃止の問題を取り上げる。道路運送法の改正の影響などもあり、平成13年度以降土浦市内では40系統以上のバス路線が廃止されている。この影響もあり、土浦市内のバス停において、片道200本を超えるバス停がある一方で、片道数本しかないバス停もあるなど、地域ごとにばらつきがあることが顕著になっている。確かに、需要を考えると適切な本数であるバス停もあると考えられるが、それでも地域間の本数の差は顕著であるため、ここでは問題として取り上げる。
住環境
土浦市の住環境の現状と課題を探るうえで、浅見泰司著の「住環境―評価方法と理論―」にて記載されている住環境評価指標の利便性、保健性、快適性、安全性、持続可能性のうち、持続可能性を除く4つの指標を用いて調査した。持続可能性については、人口や産業などを用いて評価するため他課題班の調査結果を持続可能性に関する評価として代替する。利便性
初めに徒歩圏内における日常生活の利便性にスポットをあて、生活にまつわる施設として、集会施設、病院(内科)、コンビニエンスストア、食料品店、日用品店、金融機関、公園、小学校、中学校、駅に関して中学校区ごとに各地区の特徴とともにまとめた。
《二中地区》 二中地区は、大学や高校など教育施設が集積している地区であり、土浦駅との間で通学等による若者の自転車交通量が多い地域である。また、二中地区の中心部には徒歩圏に内科がある病院施設がないことが課題としてあげられる。
《四中地区》 四中地区は計画的に整備された住宅団地が多く存在し、医療・教育施設が集積している地域である。一方で、地区の西部では居住誘導区域内において徒歩圏内に集会施設が不足している。
《都和地区》 都和地区は工業団地が集まっており、居住誘導区域が点在していることが特徴だ。都和中学校周辺の住宅地では公園が多く立地しているが、他の住宅地では少なく、立地に偏りがある。また、日用品店や食料品店が徒歩圏にない誘導区域が存在しており、誘導区域内においても利便性に偏りが大きい地区である。
《五中地区》 五中地区は神立駅を中心とした副都心であり、おおつ野地区は協同病院の移転とともに整備された住宅地が広がっている。一方で、神立駅周辺では徒歩圏内に食料品店が不足している地域があることが課題として挙げられる。また、新興住宅街であるおおつ野地区において集会施設が徒歩圏内にないことも課題として挙げられる。
《三中地区》 三中地区は荒川沖駅を中心とした副都心として整備が進められ、国道や高速道路など広域的な交通網が充実している。一方で、駅付近や地区内の北部の居住誘導区域内における集会施設の不足が課題として挙げられる。
《六中地区》 六中地区は阿見町と隣接しており、自衛隊霞ヶ浦屯地や隊員の宿舎が立地して0いる。また花室川によって地区内が南北に分断されている。南北それぞれの地域で人口が集中している地域があるが、地区全体として施設が少なく、特に地区内に金融施設が全くないことが特徴的な地区である
《新治地区》 新治地区は地区全体の74.9%が自然的土地利用であり、筑波山ろくや農産物が生 み出す自然豊かな田園環境があり、他の地区に比べ高齢化が顕著な地域である 新治地区には、日用品や食料品、わくわくサロンなど地域の生活拠点としての施設が集積している「さん・あぴお」という商業施設があるが、誘導区域外に立地しているため、人口が集中している地域からの徒歩によるアクセスが難しいことが課題として挙げられる。
保険性
保健性に関して、伝染病予防と公害防止の側面について土浦市の現状を述べていく。 伝染病予防の重要な指標として、汚水処理が挙げられる。土浦市の汚水処理人口普及率は96.2%(全国90.9%・茨城83.3%)であり、全国的に高い水準となっている。同様に下水道普及率も87.9%(全国78.8%・茨城61.5%)であり、広く整備が整えられていることがわかる。 公害防止に関して、土浦市は公害防止協定の締結と公害苦情・相談の受付の2つの施策を行っている。現在、市に寄せられる苦情・相談の内訳は、悪臭、騒音に関するものが多く、これらは工場などが起因する産業型公害ではなく、野焼きなど、近隣関係やモラルの低下等によって起こる都市型公害が増えている。一方で、H27年度に実施された市民満足度調査では、公害防止に関する施策の満足度は3.25(平均3.05)であり、平均より高く、施策の継続的な実施が必要である。
安全性
次に安全性に関して、防犯、交通の大きく2つに分け現状をまとめていく。防犯性
防犯に関して、土浦市では町内会単位で自主防犯組織が結成されており、平成29年3月現在、167町内で約7,000名の方々による防犯ボランティア活動が活発であり、犯罪発生の抑止に大きく貢献している。これは茨城県内において最多の結成数である。また、平成27年度に行われた市民満足度調査における「防犯まちづくり」に関する満足度も平均より高く、住民の防犯意識が高いことが言える。 一方で過去数年に遡っても土浦市の犯罪率は県内でも高い水準で推移している。特に窃盗犯が内訳の大部分を占めるが、窃盗犯の認知件数は年々減少している。しかし、粗暴犯(暴行、傷害、脅迫など)の認知件数のみ増加傾向がみられる。

交通安全性
土浦市の交通安全性について、2017年の土浦市の交通事故状況は、発生件数717件(県内3位)、負傷者数910人(県内6位)、死者数4人(県内12位)、人口一万人当たり死傷者数65.45人(県内1位)と、交通事故に関して県内で高い順位を記録している。 一方で、茨城県全体で交通事故状況の推移については、発生件数、負傷者数ともに年々減少傾向にある。



快適性
快適性について、人為的環境と自然的環境の2つに分け現状をまとめた。人為的環境の快適性
先に述べたように、土浦市は自主防犯組織の結成率が高く、自治組織が活発に活動していることが特徴的である。一方で中心部では、マンション等に住む若者世代の自司会への参画が課題とされ、世帯ごとのライフスタイルによって住民間の交流に大きな差があることが考えられる。 また、防災や衛生、景観などに影響を与える空き家に関して、土浦市における空き家率の推移は、平成15年の調査では15.6%(全国12.2%・茨城県13.5%),平成20年は22.0%(全国13.1%・茨城15.3%)と大きく増加しており,全国や茨城県全体よりも高い傾向にあることが分かる。平成29年に行われた空き家現状調査によると、空き家の数が多いだけでなく、7割が管理不全、8割に樹木の繁茂がみられるという結果となり、数の多さ以外にも問題があることが浮き彫りとなった。


自然的環境の快適性
次に、徒歩圏における自然享受の場として公園・緑地に着目した。土浦市には現在262箇所の公園が存在し、うち52箇所は都市公園である。また一人当たりの公園面積は、県の平均が9.3㎡であるのに対して土浦市は5.96㎡と、平均の2/3以下の値となっている。 下記の図はは住区基幹公園の誘致距離を半径とし、人口メッシュ重ねたものである。図から公園の立地に関して地区ごとにばらつきがあることがわかる。特に人口が集中している地区では、二中地区、都和地区、四中地区、三中地区において公園の規模や数、管理不足が見受けられた。



観光・産業+歴史
土浦の工業
現在、土浦市にある工業団地は「東筑波新治工業団地」、「テクノパーク土浦北工業団地」、 「神立工業団地」、「土浦おおつ野ヒルズ」の4つである。茨城県の県ごとの製造品出荷額等 と土浦市の県内での製造品出荷額等はともに上位にあり、全国的に見ても土浦市は工業が盛ん な都市であるといえる。2017年には茨城県内区間で圏央道が開通した。土浦市には関東を縦に 走る常磐自動車道と横に走る圏央道が通っており、工業立地は大変良好であると考えられる。 また、圏央道沿線の都市では新たな工業団地の造成・分譲が行われ、製造品出荷額が増加した。 しかし土浦市は、2010年から2016年にかけて事業所数・従業員数・製造品出荷額等は横ばいの 状況が続いている。さらに、現在土浦市にある4つの工業団地において、分譲可能な区画は 土浦おおつ野ヒルズの3区画のみで、わずか7.8haである。つまり、工業団地の多くが分譲完了 状態にあり、企業誘致の余地がないと考えることができる。これが土浦市の工業における大き な課題である。土浦の商業
土浦市内の商店数、従業者数、年間商品販売額は年々減少傾向にある。更に中心市街地の空き 店舗数は増加しており、土浦市の市街地の衰退や経済の低迷は顕著である。調査によると、 1979年は土浦一強であったが、つくばや荒川沖の発展によりこの時代は幕を閉じた。そして 2014年には、土浦市内に大型ショッピングセンターができたこともあり、駅周辺の衰退が際立 つ結果となった。このように、大型ショッピングセンターや、ロードサイドショップの台頭に よる商業の郊外化が進んだ。また、平成21年のイオンモール土浦開店を契機に、減少から増加 傾向に変化した。このことからも、商業の郊外化が進んでいることがわかる。以上のことから、 つくばや荒川沖の発展、イオンモール土浦の登場により、土浦市全体というよりは中心地の 衰退が進んでいることが土浦市の商業の課題であると明らかになった。土浦の観光
平成29年度の「県内の市町村別年間観光客数」の推移によると、茨城県内で土浦市は観光客数 が比較的少なく、観光地として確立していないことがわかった。そこで、観光地の立地条件に ついて、2009年の小松原尚氏の既存研究では、「日本国民の7割以上にあたる都市での生活者 は、山間地域に対して、自らの日常生活とは異なった自然環境の中での休息や様々な体験活動 への期待が大きい」とあった。加えて、観光地の立地条件を以下のようにまとめている。 ・山岳と水辺の観光利用がされている ・誰もが楽しめるイベントが開催される この2つの条件をもとに土浦市の観光の現状をみていく。 まず、自然資源についてみていく。土浦市には霞ケ浦や筑波山麓といった豊富な自然資源がある。 筑波山麓ではパラグライダー体験、霞ケ浦では遊覧船やクルージングなどのレジャー産業も行わ れており、市内には霞ケ浦総合公園や土浦港なども立地している。しかし、湖観光を行っている 他の観光地と比較して、土浦市は周辺施設に乏しいという弱点を持つ。地図上で土浦市と霞ケ浦 を見ると一目で分かるように、霞ケ浦を利用した観光施設がある行方市や大津市と比較して、土 浦市は霞ケ浦への設置面積が小さい。このことから新たに施設を建設して観光地として確立させ るのは難しいと考えられ、既存のレジャー観光の活用が重要なポイントとなる。しかしながら、 平成29年の土浦港の遊覧船の利用者数は、島根県松江市の遊覧船利用者数と比較すると非常に少 なく、土浦市での水辺観光の知名度はまだまだ低いと考えられる。このように、土浦市には観光 地の立地条件として必要な山岳、水辺は存在するが、観光資源としては活用しきれていないこと が課題として挙げられる。 次に、市内で促進しているサイクリング事業についてだ。近年、土浦市はサイクルツーリズムに 力を入れている。土浦市にはつくばと霞ケ浦を結ぶ自転車道である「つくば霞ケ浦りんりんロー ド」が通っており、全国的に有名な「ビワイチ」や「しまなみ海道」と比較すると利用者は少な いが、増加傾向にあることがわかった。しかしながら、「つくば霞ケ浦りんりんロード」の利用 者の多くは観光目的ではないことが予想される。水郷筑波サイクリング環境整備総合計画によると、 同サイクリングロードを用いて、「地域の豊かな自然や食,人とのふれあいなどをサイクリングと 併せて楽しむことができる地域」を将来の姿として設定しており、このような将来の姿を実現する ために土浦市では様々なサービスを提供している。具体的には数種類のマップ・コースを作成して 配布、種類や形式が豊富なレンタサイクル等を行っており、サービス面では充実しているといえる。 その一方で利用者アンケートでは舗装の劣化と自動車との衝突の恐れが問題点として挙げられており、 回遊性・安全性の点では課題が残る。 次に、イベント事業についてみていく。まず、土浦市には三大イベントと呼ばれるものがある。 それは、毎年3月下旬から4月上旬にかけて行われる桜まつり、8月第1土曜日・日曜日に行われる キララまつり、10月第1土曜日に行われる土浦全国花火競技大会である。これらだけで、およそ 100万人もの観光客が訪れる。そのほかのイベントとして主なものは、スポーツ系のものとして かすみがうらマラソン、食に関するものとしてカレーフェスティバル、その他にも雛まつりなど、 年間で約30ものイベントが開催されている。そして現状、集客数は茨城県内においても5位と上位にある。 また、土浦市を訪れる観光客の約60%は、イベントによるものであった。さらに、土浦市への来訪回数を訪ねた アンケートでは、5回以上との回答が50%を超え、リピーターの存在が大きい。だが、これも花火大会 のリピーターが多くを占めていると考えられ、その依存度の高さが伺える。以上のことより、土浦市に おけるイベントは、三大イベントを中心に集客が多く、これは土浦市の観光の特色で強みである。 しかし一方で、イベントのなかでも花火大会による観光客の割合が格段に大きく偏りがあるという課題もある。 最後に、歴史的観光について述べる。土浦市には、まちかど蔵という城下町地域がある。まちか ど蔵には、観光案内や観光土産品の販売を行っている「大徳」と、そば打ち体験や多目的工房で ある「野村」が代表的な施設としてあげられる。土浦市はまちかど蔵を利用した観光を提唱して いるが、城下町観光を盛り上げていくには、いくつか課題があると私たちは考えた。近隣の城下 町観光地には、川越や鎌倉がある。川越は近年人気が上昇している。蔵造りの街並みが並んでお り、奥に進むとシンボル的存在の「時の鐘」がある。また、川越市の特産物である「川越芋」を 利用した名産品の売り込みに力を入れている。通りには、食事処や土産店も多くあり、1日歩い て楽しめる規模がある。また、滋賀県長浜市の黒壁スクエアでは以前、黒壁銀行として機能して いた建物を、ガラス館にし、シンボル的存在になった。またそれを機に、黒壁スクエア全体もガ ラスの町として有名な観光地になっている。 以上のような例と比較すると、まちかど蔵は、シンボル的な存在はなく、また力を入れて売り込 んでいる名物品もない。更に、川越では市の0.38%(図26)を城下町の街並みが占めているが、まちかど蔵は土浦市の0023%(図27)しか占めていない。また、都心からのアクセスを考えると、東京から車で、約1時間で行けるので、良いと言えるが。同じ時間で行ける範囲には、「川越」や「鎌倉」があるため、土浦市だけが持つ強みでなない。よって、まちかど蔵単体で観光資源として利用するには問題点が多く、他の観光資源と絡める必要性があるのではないか。環境・防災・農業
環境には様々な要素があり大気汚染、悪臭などの公害から酸性雨や地球温暖化など地域間から地球規模の問題まで存在している。こうした問題点のうち土浦市がどのようなものを問題として取り上げ、どのような対策を行っているのかを土浦市環境白書(平成29年度活動報告書)をもとに洗い出し、そのほかの情報をもとに総合的に土浦市が抱えている問題点や課題点を、5つの基本目標(1.自然環境、2.生活環境、3.快適環境、4.地球環境、5.人づくり)ごとに考察していく。
自然環境
【霞ヶ浦】『霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画(第7期)』によると、平成27年度の霞ヶ浦の水質はCOD8.2mg/L(環境基準値3.0mg/L)、全窒素1.1mg/L(環境基準値0.4mg/L)、全リン0.094mg/L(環境基準値0.03mg/L)といずれも環境基準を大きく上回っており、改善されていない。また、平成27年度の霞が浦(西浦)の汚濁負荷割合を見ると、生活排水による負荷が全体の約22~46%を占めていることが分かる。下水道整備により生活排水負荷を減らすことが喫緊の課題と言える。土浦市の公共下水道普及率は87.8%(県平均60.8%、県内第3位)であり、汚水処理人口普及率96.2%(県平均82.6%、県内第4位)と県内でも高水準にある。霞ヶ浦の水質改善は、土浦市のみでなく、霞ヶ浦流域の市町村全体で取り組まなければならない課題である。
【里山】
現在、市では里山保全に関する取り組みを行っていない。市内では主に、認定NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」が宍塚大池周辺の里山保全を行っている。しかし、平均年齢層が60代と高齢であることから、存続が危ぶまれています。良好な自然を守るためにも、後継者育成が課題となる。
【生物多様性】
市内では宍塚大池が特定植物群落に選ばれており、市全体が筑波山地域ジオパークとして認定されている。市内は都市開発や霞ヶ浦護岸工事などにより、生物種が減少しているが、生物多様性をどこまで回復させるかを定め、地域で無理なく保全を行える仕組みづくりが必要である。
生活環境
【廃棄物】土浦市のゴミの排出量は全国平均よりも約1.5倍多くなっている。現在土浦市はこの問題を解決するために減量化目標と資源化目標を掲げている。減量化目標とはゴミの排出量を946 g/人・日以下(約16%減)に減らすことであり、資源化目標とはリサイクル率を24.6%以上にあげることで、どちらの目標も平成33年度までに達成することを目指している。
【騒音振動】
騒音は公害の中でも比較的多い苦情で生活環境の課題となっている。現在土浦市内には工場などの事業所が多く立地しているもののこれらの施設への苦情は少なく、自動車騒音に関しては常時調査を行い自動車騒音の状況を把握しているという現状である。一方で、カラオケや飲食店等による近隣騒音の苦情が多く、こういった問題に対する具体的な対策案を作れていないという課題がある。
【悪臭】
土浦市における悪臭に関する苦情の原因の多くは小規模事業所や家庭でのゴミの焼却である。現状、ダイオキシン類対策特別措置法による排出基準が厳しくなったことでゴミ焼却炉の廃止が相次ぎ、工場や事業所への苦情は減少している。しかし、市役所に寄せられる悪臭の相談・苦情の割合は小さくない。臭気の測定は気象条件に左右され、また価格が高い機器の使用が必要になるため、臭気測定による原因対処は現実的ではない。今後の課題としては、なぜ悪臭の相談苦情が発生しているのか、悪臭による被害は実際にはどの程度のものなのかを把握し、優先して対処していくべきなのかを考えていくことであると考えられる。
【放射性物質・ダイオキシン】
東日本大震災による放射性物質の除去は子供の施設(小中学校、児童館、公園など)や公共施設、民有地において平成26年度に除染作業が終了し、基準値が下回ったことで除染作業計画は完了している。また一般住宅においても基準値を下回るように除染を実施している。平成24年から土浦市内で生産された農作物の放射性物質検査を行っており結果はホームページ等で情報提供している。学校給食で使用される食材についても同様に検査を行っている。
ダイオキシン類の調査は事業所周辺の一般大気環境において調査を実施してきたが全地点において大気の環境基準値を大幅に下回ったことから平成27年でモニタリングを休止している。
快適環境
古くから発展してきた土浦駅付近を含め、土浦市では駅を中心に市街地が拡大している。さらに車社会に伴う郊外への開発により田畑や森林の開発により、さらに郊外の市街化が進展した。この拡大はまとまりをもって高密度には行われず、ランダムに開発が進むスプロール現象が起きた。また、近年では人口減少などにより、郊外に広がった市街地の中にランダムに空き地などの空き空間ができ始めるリバーススプロール現象が起きている。こうしたスプロール現象による低密な郊外に広がる市街地は高密な市街地に比べ環境負荷が高くなることが知られている。市ではこうした現状に対して、居住誘導地区を設定し郊外化を抑制し高密な市街地を保とうとしている。この居住誘導地区は現在土浦市が設定している市街化区域とほぼ等しく、現状の市街化区域には公園は全部で52か所ある。しかし、市民からは徒歩圏内の公園が少ないという意見も見られ、実際に地図上でも公園や二次林などの緑・オープンスペースが少ないことがわかる(図1.5-4)。
このような緑・オープンスペースの管理には税金が投入されている。公園では木々の剪定や下草の処理などの委託費、二次林の保全林整備については森林湖沼環境税を使用した身近なみどり整備事業として行っている。しかし、管理主体が市から民間へ移る動きが近年見られる。市では新治運動公園の桜の里親となり管理を行う土浦市桜の里親制度事業が平成22年から、市民による公園管理を支援する公園里親制度が平成24年から行われている。
以上のことをまとめると、土浦市の住民には公園のようなオープンスペースが求められているが、現状の市街化区域及び今後居住を促していく地域にはそのようなスペースが少なく、こうしたオープンスペースの管理も民間へと移動している。さらに、人口減少によって財源が減少しており、市のみによるオープンスペースの増設や維持管理は将来的に難しくなっていくことが予想される。
こうした状況下では既存の公園やオープンスペース以外の、空き地などの閑空間の活用、残存する二次林の保全などによる、豊かな緑・オープンスペースの形成・維持を行政単体ではなく、民間と協力して行えるかが課題となる。

地球環境
土浦市では温室効果ガス排出量の削減を掲げ、人への意識改革と設備投資を主軸として行っている。しかし、温室効果ガスの排出量は増加傾向にあり、現状の対策のみでは不十分であり他の対応も必要であることが考えられる。他の対策として、人口減少やライフスタイルの変化を見据えた建築の空間構成とデザイン、それを可能とする規制や法制度の見直しが考えられる。ひとづくり
土浦市では、環境保全に充てられている予算は決して高くありません。そのため住民による積極的な自然保護や環境問題解決行動が重要になってくる。現状の環境問題の深刻さや自然の活用方法などをふくめ、特に若い世代を中心に教育していく枠組み作りが必要になる。まとめ
土浦市の直面する環境問題は多種多様で様々な対策が必要なことがわかる。一般的にこれらの問題を引き起こしている原因は都市構造や私たちのライフスタイルなどによることがわかっている。市民の環境意識を変えることが土浦市の課題であり市民や事業所に対して積極的に情報提供をしている。しかし、ここ数年で土浦市は水質や二酸化炭素排出量など一部の環境基準を改善できずにいる。これは、設備投資や意識変容だけでは根本的な解決は難しいことを示している。また、市の財政には限りがあり、環境に充てられる財源はわずかである。以上のことから、これからの環境の改善や問題の解決には地球温暖化と水質改善、空洞化対策と治水対策など複数の問題を解決できる政策や事業を検討し展開していくことが重要である。防災
災害対策に関する課題は未だに多く残されています。また、土浦市の予算は、減少していくと予想されており、これに伴い災害対策費も減少していくことも考えられる。以上のことを踏まえると、今後は限られた予算の中で防災対策の質をどのように向上させていくかが課題であると考えられる。
農業
今後土浦市内での農業は発展的な存続に重点を置いていくのではなく、持続的な存続を考えていくと同時に適切に農業を撤退していくことも考えなければならない。【存続の在り方】
農業経営主体や農業形態の在り方、また、農業以外の観光産業や多面的機能の保持といった多様な側面を踏まえたうえで、「どの農業を・どういった方法で維持していくのか」を農業区画レベルできめ細やかに決めていくこと、および決定事項に沿った制度の整備が必要になる。
この際に注意しなければならないのは「農業が無制限に展開されることなく、持続的に行うことを可能にしてくこと」を前提とした取捨選択を行うということである。
【撤退の在り方】
筑波山麓付近は漸次森林に戻していく、住宅地が近い土地では耕作放棄地を無秩序に発生させない、住宅地内に存在するものは遊び場として整備するなど、市内の地理特性および立地条件に合わせた適切な撤退のための指針の整備が必要になる。
この際には、洪水防止機能といった多面的機能の観点を踏まえて、農業から撤退した土地の後の土地利用を明確にし、跡地の適切な活用についても規定していくことも必要になる。
以上の観点を踏まえ、地区の性格を踏まえたきめ細やかな新たな指針及び制度を作っていくことが土浦市の農業の課題といえる。
公共施設等再編およびインフラアセットマネジメント
土浦のインフラの現状
土浦市が保有する公共施設は建築物施設と非建築物施設に分けられ、小学校や市役所の庁舎などの建築物施設は214施設、非建築物施設のうち駐車場などの交通施設は6施設、広場・公園施設などは61施設整備されている。その中で学校教育施設が最も広い延床面積を有しており、次に広いのは行政施設、住宅施設となっている。経過年数別で延床面積の割合に注目すると、30年から40年未満が41.4%で最も多く、次いで40年から50年が19.0%となっており、老朽化が進んでいる。
公共施設における収入は平成26年度の全体の収入として約9億4930万円、一方の支出として平成26年度では、維持管理費に47億3230万円、事業運営費に57億8210万円となっている。
土浦市が保有するインフラ施設は主に道路、橋梁、上下水道、給排水・処理施設を指し、給排水・処理施設は全部で28施設整備されており、インフラ施設への投資的経費は平成26年度に45.9億円となっている。
土浦のインフラの全体課題
ここでは主に4つ取り上げる。・人口減少、少子高齢化への対応
・今後も人口が減少し、少子化、高齢化が進むと見込まれている。
・市民の需要変化への対応や、生活に必要不可欠な公共施設の適切な配置計画が必要である。
・投資的経費増加への対応
・人口減少により自主財源が減少し、扶助費などの支出が増加し、財政状況が厳しくなっていくことが予想される中、公共施設やインフラ施設の大規模改修や建て替えなどに多額の投資的経費が必要であり、財源の確保が重要である。
・施設の効率的な配置や長寿命化改修によって、施設の量や事業の費用を抑え、投資的経費を減少させることも求められる。
・施設老朽化への対応
・築30年以上経過している公共施設の延床面積の割合が63.4%と全体的に老朽化が進んでいる。
・特に学校教育施設、子育て支援施設、行政施設、住宅施設の老朽化が激しい状況だ。学校教育施設、行政施設、住宅施設は公共施設に占める延床面積の割合も高く、今後は大規模改修や建て替えなどを行う必要がある。
・施設サービスへの対応
・平成26年度の公共施設の年間稼働率は文化施設で34.8%、生涯学習施設で30.5%と低い状況となっている。
・市民の需要の変化を踏まえ、施設サービスの適正化や、民間企業との連携などを含めたサービス水準の向上などが求められている。
各施設の課題
a. インフラ施設インフラ施設は道路、および上下水道を指す。
・施設更新費の増加
・土浦市の上下水道普及率は県平均を大きく上回り、新規整備は一段落しつつある。
・高度成長期に整備されたインフラの多くが更新時期を迎え、現在の予算と比べ今後40年平均で年あたり31.9億円、必要額が増加すると予想される。
・手法の見直し、長寿命化などで費用を圧縮する必要がある。
・施設縮小の困難性
・インフラ施設はネットワークとして機能するものが多く、再配置や統廃合などの施設縮小が他施設と比べて困難である。
・縮小も検討しつつ、今ある施設を効率よく維持管理する手法が必要とされる。
・予防保全型管理の実行
・インフラ施設の計画的修繕・長寿命化は更新費用圧縮に大きく寄与する。
・土浦市でも『橋梁長寿命化修繕計画』等を策定しているが、予算不足等により施設修繕が計画通りに進んでいないのが現状である。
・民間活力導入の検討
・PFI、包括委託など、民間事業者のノウハウを導入することで効率的なインフラ維持管理が期待できる。
しかし、民営化に伴うデメリットをどのように回避するか各地で試みが行われている段階で、慎重な検討が求められる。
b.交通施設
交通施設とは、土浦市営駐車場(駅東・駅西駐車場)を指す。
・老朽化への対応
・駐車場は土浦駅の東西にRC造の立体駐車場が整備されている。どちらも築後20年が経過しており、老朽化が進行している。
・駐車場の形態の見直し
・両市営駐車場の稼働率は平均値を大きく下回っており、土浦駅東駐車場の稼働率は20%台と利用率が極めて低い状態が続いている。
・両市営駐車場の利用料金の上限額が土浦駅周辺の民間も含めた駐車場の中で最も高く、稼働率を低下させている要因であると考えられる。
・運営形態を直営から指定管理者制度へ戻すなどの管理対応の他、利用料金の改定や周辺施設との提携を強化する必要がある。
・土浦駅周辺の民間駐車場の合計駐車可能台数は1955台であり、現在の両市営駐車場の1日あたりの利用平均台数の712台を上回ることから、両市営駐車場が除却されたケースにおいても日常の駐車場利用に支障はないと考えられる。しかし、土浦花火大会などの大規模なイベントにおける駐車場のキャパシティ確保は必要であると考えられるため、立体駐車場から平面駐車場に変更するなどの対策が考えられる。
c. 消防施設
消防施設は大きく消防署等、分団車庫を指し、消防活動の拠点として消防署4施設、分署1施設が設置されている。分団車庫は旧土浦市に20施設、旧新治村に18施設設置されている。
・各施設の老朽化
・荒川沖消防署、神立消防署、新治消防署、南分署は築後30年を超えており、荒川沖消防署と神立消防署は平成24年に改修工事を行っている。
・新治消防署、南分署や分団書庫の老朽化対応と施設の安全性確保が必要となる。
・人口増加地域における消防空白
・立地適正化計画によって今後都市機能を誘導するおおつ野地区の近隣に消防施設が存在せず、火災時等の初期対応に遅れが生じる可能性がある。
・おおつ野地区に最も近接する消防施設は沖宿町の17分団車庫であり、おおつ野方面への移転も踏まえた適正配置が求められる。
・分団車庫の立地の偏り
・分団車庫の多くが新治地区に集中しており、立地に偏りが見られる。
・今後の人口分布や立地適正化計画による人口誘導、各施設の老朽度を考慮した訂正配置の検討が必要である。
d. 広場・公園施設等
・広場・公園の管理計画の見直し
・土浦市の平成24年度マスタープランに記載されている市民アンケートによると、「公園緑地の整備はいずれの規模についても不満である」との回答が半数を占め、不満の大半は広場・公園施設等の設備管理に関するものであることがわかっている。
・各公園事業予算の約7~9割が清掃費やごみ処分費などの公園管理費用として外部委託されており、設備管理の徹底には管理費用の削減が必要である。
・設備管理の徹底には現状の管理費用の再検討が必要であり、各広場・公園について管理の頻度を順位付けし、上位の広場・公園から優先的に管理するなどの対策が求められる。また、街区公園などの比較的小規模な広場・公園等における周辺住民による維持管理が促進される必要がある。
・公園密集地域においては、近隣で機能が重複している広場・公園を統合し、規模の大きな公園に機能を集約、小さな公園は広場のみや水場のみなど機能特化型に作り変えることで、工事負担の軽減や整備費の縮減、改修ペースの向上を図るなどの対策が必要である。
・市民との協議や周辺ニーズを踏まえた管理計画を実施すると同時に、市民と協働した広場・公園の維持管理を行うなど官民一体の設備管理が求められている。
e. コミュニティ・文化施設
コミュニティ・文化施設のうち、「亀城プラザ」「市民会館」「博物館」「上高津ふるさと歴史の広場」の4つが文化施設に該当する。
・亀城プラザと市民会館の機能重複
・亀城プラザと市民会館は比較的近くに建っていながら、両者共に会議室などの貸出を行っており、施設の役割が重複しているといえる。
・両施設の予約状況から市民会館での稼働率が比較的高い一方で亀城プラザでの稼働率は低い水準であることが推測される。
・このことから、各施設の役割の見直しや統廃合などによる改善の余地は十分にあると考えられる。
f. 子育て支援施設
土浦市の子育て支援施設とは保育所、児童館等、幼稚園、児童クラブを指す。
・幼稚園
・充足率は平成27年度時点で34.3%と低い水準である。
・平成30年に土浦幼稚園、新治幼稚園の2園に再編、平成33年度末には0園に再編予定となっている。
・保育所
・充足率は平成26年度時点で82%と高い水準である。
・「公立保育所民間活力導入実施計画」(2018年)に基づき民営化していく方針。
・委託・移管後についても、市が保護者と事業者との調整を図り、必要に応じて事業者への指導を行うなど積極的に関与していく必要がある。また、全国的に民間の保育所が経営悪化で閉園している例が多くあり、その対策が求められている。
・また、民間も含め保育士が不足しており、待機児童も出ている。民営化するだけでは根本的な問題解決が図れないため、今後保育士をどう確保するか検討する必要がある。
g. 学校教育施設
土浦市の学校教育施設とは小学校、中学校を指す。
・児童数・生徒数の減少
・少子化が進んでおり、児童数・生徒数ともに減少している。
・新治地区では統廃合が行われ、平成30年度より小中一貫の新治学園義務教育学校として整備された。
・統廃合の検討
・上大津西小学校(52人)、菅谷小学校(152人)と市の定めた適正規模に満たない小学校があり、早急な対策が必要となっている。
しかし、統廃合先として考えられる上大津東小学校はおおつ野地区にあり、今後、児童数増加が見込まれるため、現時点では様子見をしている状況である。
・平成28年の上大津東小学校の児童数推移予測である。これによると、平成30年の予測児童数は324人で、平成30年(現在)293人とわずか2年で30人ほどの誤差がある。
・こうしたことから、おおつ野地区の人口は想定ほど増加しておらず、もう一度見直すことで統合の余地があると考えられる。
・将来的な施設のあり方
・人口減少と高齢化が進む社会において小中学校のような施設のニーズは減る一方で福祉施設の需要は増加する可能性がある。さらに各施設の老朽化から施設の統廃合が必要である。(施設の多機能化)
・公共施設面積の4割が学校施設で、市の全域に平均的に立地していることから、学校を拠点にすることが考えられる。
h. 住宅施設
土浦市の住宅施設というのは、市営住宅を指す。
・財政圧迫
・人口減少、少子高齢化などにより本市の財政は苦しい状況だ。
・大半の施設が築後30年以上経過しており老朽化が著しく、効率的な施設の改修、更新が必要である。
・入居率が高い上に待機者も存在しており、簡単には縮小化ができない。
・市営住宅とは別に、生活困窮者に対して住居確保給付金制度も行い、二度手間が生じている。
・全ての市営住宅が更新される80年後の損益について、平成30年度の土浦市予算案をもとに計算している。
・市が上げている市営住宅の延べ床面積から更新費を計算すると今後80年で17,026,731千円という費用がかかる。
よって、今後80年間の利益から費用を引くと、約92億円という損失が生まれる計算になる。
・家賃設定の困難性(※研究論文から)
・近傍同種家賃は一般的に市場家賃の8割程度であり、市場家賃よりも安いために適切な退去インセンティブになっていない可能性がある。
※近傍同種家賃とは入居したのちに収入が超過してしまった収入超過者に対して課せられる家賃で、市営住宅と似たレベルの民間賃貸住宅の家賃となる。
・しかし、公共機関は市場の十分な情報を持っていないため、適切な家賃設定が困難な状態にある。
・低所得者の集中定住による外部不経済(※研究論文から)
・低所得者が集中することにより、コミュニティが形成されないなどのことから地域イメージの低下をもたらす可能性がある。
・財・サービスの需要が低下し、それに伴い財・サービスの種類も減少する恐れがある。
・指定管理者制度の困難性
現在全ての市営住宅を直営により管理している。そのことから、民間活力の導入(指定管理者制度)を検討している。
・指定管理者制度等の民間委託によって民間企業が利益を出すには以下の方法が主となっている。
・附随事業(建物の中に民間施設を併設)
・区画整理により余剰となった土地に民間施設を導入
・生活困窮者のセーフティネット
・市営住宅は生活困窮者のセーフティネットなので、徹底された管理運営が必要だ。
・直営や民間活力導入以外の新たな手法を模索する余地がある。
※「公営住宅が住宅地の価格形成に与える影響と政策の妥当性に関する考察〜東京都区部の住居系地域における分析〜」川原拓より