社会工学実習都市計画分野の意義-Concept of Policy and Planning Sciences Urban and Regional Planning-


社会工学実習都市計画分野は1班5、6人のグループで計3週間の実習を行います。
つくば市の中心であるつくばセンター周辺の地区を@公園地区A広場地区B商業地区、の3つの地区に分け、それぞれの地区においてフィールドワークを行い、その地域の問題点や改善点を把握し、地区をよりよいものにするための現実的かつ壮大な提案をしていただきます。
では順を追って実習について説明していきます。

□対象地域の説明
□社会工学的アプローチについて
□実習内容
 @1週目
 A2週目
 B3週目

□対象地域の説明

・対象地域周辺

@公園地区:つくば駅北
筑波大学キャンパスへ続くペデストリアン沿いの緑地・公園を含んだエリアが対象となります。対象地域の中には、中央公園やエキスポセンターなどが含まれます。

A広場地区:つくば駅南東
つくばセンター広場を含んだペデストリアン沿いの地区です。つくばセンター広場は、有名建築家の磯崎新がデザインしたもので、ポストモダン建築と言われます。出来上がった当時はポストモダンの集大成といわれ世界的に注目されました。ちなみにこの広場のモチーフとなっているのはミケランジェロの「カンピドーリ広場」です。

B商業地区:つくば駅西
Q'tやクレオなどの商業施設が立地する地域で、つくばセンターの中心商業地区です。。平日休日に関わらず多くの人でにぎわっています。筑波大学生にとっても最も馴染み深い商業地区の一つとなっています。


□社会工学的アプローチについて


全12グループがそれぞれ以上の3つの地区のうち好きな地区を選択し、その地区の分析を行って、今後の都市整備需要を考慮した斬新な再生計画を提案してもらいます。
さて、私たちが所属するのは「社会工学類」という学類です。したがって、都市を社会工学的にアプローチし、分析・提案する必要があります。では、社会工学的アプローチとはどのようなものでしょうか?図で表すと以下のようになります。

左のような順序で進めていきますが、「社会工学的」なアプローチの際には、以下の3つの点を注意しなければなりません。

@定量的
人を説得するには、根拠が必要です。そのためには、どのくらい○○になるとどのくらい△△になる、というように具体的な数字として示す必要があります。このことを定量化するといい、社会工学的なアプローチでは必ず必要になります。

A論理的
論理的に説明しないと人は説得できません。「都市のどこに問題があるのか、その問題を解決するにはどうすればよいのか。その問題に対してある提案をする。その提案によって、この地区の問題は解決できる。だから、この方法を提案します。」というように、1本の筋道を通すことが必要です。

B具体的
具体的なイメージがつかめないような漠然とした提案では、聞き手はよく分かりません。分析や提案において、具体的な手法・具体的なデータ・具体的なイメージを用いる必要があります。


では、実際に実習生の実習している様子を見て見ましょう。

□実習内容

実際に実習生の実習している様子を見て見ましょう。

@1週目


実習の内容・社会工学について・実習の進め方について先生方からの説明を聞きます。そして、あらかじめ決められているグループに分かれ、@公園地区A広場地区B商業地区の3つの地区から、対象地区を選定します。
その後、各班具体的に実習に移っていきますが、配布された資料を見ながらまず実際に現地に赴きます。「百聞は一見にしかず」といわれるように、実際に現地に赴かない限り、本質的な問題は見えてきませんし、机上の空論で終わってしまいます。実際に現地に赴いて調査することをフィールドワークといい都市計画には必要な能力となってきます。

2007社会工学実習都市計画分野

                                                                         

A2週目


1週目でフィールドワークを行った結果を用いて、その地区の問題点を整理していきます。問題点を整理する際にKJ法という手法を用います。KJ法とは、川喜多二郎氏(文化人類学者、元筑波大学教授)が考案した手法です。名称はイニシャルに由来します。
KJ法は以下の手順で行います

○手順
STEP1:何について考えるか、というテーマを明確にする

STEP2:ラベルにフィールドワークで得た事実、知識、経験、意見、感想、疑問、アイディアなどの情報を記入する

STEP3:ラベルをシャッフル後、全員で1枚ずつ読んでいき、ラベルの内容を理解する

STEP4:互いに”親近感”のあるラベル同士を2-3枚ずつ集める

STEP5:一般ラベルで小グループを構成したのと同様に、小グループの表札から中グループを構成する

STEP6:STEP5同様に中グループの表札から大グループを構成する

STEP7:構造紙やホワイトボードの平面上で、各グループのラベル群を、相互の関係性を意識して配置する

STEP8:配置した各グループ間の関係性を枠取りや線で表す


KJ法の事例を下に記します。



KJ法によって地区の問題点や課題を整理し、3週目の発表に向けて独創的で壮大な提案を練っていきます。そして、各班のテーマ、地区の問題点、それを改善する提案をポスターにします。

2007社会工学実習都市計画分野

B3週目


2週間で準備したものを先生、TA、技官さん、そして他の班の人たちの前で発表してもらいます。大学に入ってはじめてのプレゼンテーションを経験します。各班の取り上げた問題、アイディアについて意見を言い合います。ときどき非常に専門的できつい質問が浴びせられますが、発表する班はそれにめげてはいけません。自分たちの案のアドバンテージを精一杯主張し、反論・アピールする必要があります。
12グループの発表後は、優秀作品を投票によって選びます。選ばれたグループは、先生方から豪華?な商品が授与されます。実習が終わると、発表準備の忙しさから開放され、非常にすがすがしい気持ちになり、達成感を味わうことができます。
下の図は過去の優秀作品です。

2003年優秀作品 2005年優秀作品 2006年優秀作品



実習を終えたころには、都市計画における社会工学的なアプローチというものがどういうものか少しわかるようになります。
社会工学とは、私たちの生活する中で見られる様々な問題に対して 定量的にデータを収集し、分析することで、 その実態を把握し、解決策を導き出すアプローチです。本実習によって、そのようなアプローチ手法の初歩的な考え方を学ぶことができます。