第5章 調査結果
○仮説1
・大学景観に対する検証
図8の3つの景観写真に対する形容詞印象評価をアンケートで行い、人物の写らない景観印象とジャージ・私服の人が写った景観印象との平均値の差を比較した。
【分析結果】
図9よりジャージの人物が写った景観のほうが、私服の人物が写った景観と比べ、より嫌いと答える人が多く、私服の景観がジャージの景観より人の写らない景観写真と離れた印象を与えているものは、「華やか」「楽しい」「派手な」などの項目であり、一方ジャージの景観は「低偏差値」「ださい」などの印象を与えていることがわかる。また全体的傾向として、私服の人物が写った景観写真とジャージの景観写真を人物の写っていない景観写真と比べた場合、前者のほうが人物の写っていない景観写真と近い印象を人々が抱くことがわかる。
【考察】
私服が「華やか」「楽しい」「派手な」などポジティブな印象を与えているのに対し、ジャージは「低偏差値」「ださい」などの印象を与えており、またジャージ・スウェットは私服に比べ景観印象を崩すことがわかる。このことからジャージ登校は大学の景観に悪影響を及ぼすと考えられる。
・大学イメージに対する検証
図8の私服・ジャージの人物が写った景観写真の景観印象と、アンケート項目(学内アンケート63番,学外アンケート1番)の筑波大学イメージとの平均値の差を比較した。
【分析結果】
図10,11より、筑波大学・他大学ともにアンケート結果はジャージの人物が写った景観写真の景観印象の方が私服のものより大学イメージに近い。しかし私服の景観写真のほうがジャージの景観写真、大学イメージよりも「おしゃれ」「都会」「派手な」「高級な」という印象を与えている。
【考察】
ジャージ登校は「筑波らしい」と言える。しかし私服の人物が写った景観写真が、「おしゃれ」などの印象を調査対象者に与えているように、私服を着ることにより大学イメージにポジティブな影響を与え、筑波の田舎で地味であるといったイメージは払拭することができる可能性がある。
・学業態度に関する検証
全学群また体育専門学群を除いた学生を対象とし、ジャージ登校の有無をグループ化変数とし、両者での学業態度の差をt検定により分析した。
【分析結果】
図12よりジャージ登校と学業態度は関係し、また図13より体育専門学群生を除く一般学生のジャージ登校がより学業態度と関係していることがわかる。
しかし図14の結果から体育専門学群の学生を除いた場合でも、体育の授業日のジャージ登校に関しては学業態度とあまり関係していないことがわかる。
【考察】
図12から体育専門学群生のジャージ登校を除くと、図13でより有意な結果が得られていることから、体育学群の学生のジャージ登校は学業態度とあまり関係ないことが推測できる。
体育専門学群生や、体育の受講者などが運動目的でジャージ登校を行うことは学業態度とあまり関係しないと考えられるが、体育専門学群生以外の学生が運動目的以外でジャージ登校することは学業態度と関係がある。
○仮説2
・ジャージ登校の原因
運動目的以外でのジャージ登校と、同調圧力・学生のだらけ・交通手段との関係を相関分析により分析した。図8の3つの景観写真に対する形容詞印象評価をアンケートで行い、人物の写らない景観印象とジャージ・私服の人が写った景観印象との平均値の差を比較した。
【分析結果】
図15,16より運動目的以外でジャージ登校する人は、「朝寝坊などで私服に着替える時間がない」「朝寝坊などで私服のコーディネートを考える時間がない」「私服で来るのが面倒くさい」などのだらけ、「私服で来ると周りから浮く」「私服で来るのが恥ずかしい」「周りの友達がジャージ・スウェット登校をしている」などの同調圧力の項目でジャージ登校しない人より当てはまると答える人が多いことがわかる。
また図17より筑波大学、他大学ともに公共交通不使用率とジャージ登校率は近い値を取っており関係があることがわかる。
【考察】
ジャージ登校の原因として学生のだらけ・同調圧力が挙げられることがわかる。
また交通手段とジャージ登校は関係があり、公共交通を使わない人ほどジャージ登校している実態が明らかになったため、自転車通学の多い筑波大学のジャージ登校の原因と考えられる。また同調圧力と交通手段がジャージ登校と関係していることから、ジャージ登校は筑波大学の環境が要因であると考えられる。
・体育・部活動の活動日にジャージ登校する原因
体育の授業日にジャージ登校する(しない)原因を度数分布により分析した。
【分析結果】
図18より体育の授業日にジャージ登校する人は86%であり体育の授業とジャージ登校は関係していることがわかる。
図19よりジャージ登校する理由としては「面倒くさい」が特に高い数値を取っており、また「着替える場所がない」と答える人よりも「着替える時間がない」と答える人が多い。
図20よりジャージ登校しない理由としては「だらしない」が挙げられる。
【考察】
体育の授業日にジャージ登校する理由として「面倒くさい」が挙げられ、体育の授業日のジャージ登校に関しても学生のだらけが原因であると考えられる。またジャージ登校しない理由に「だらしがない」が挙げられていることから、だらけを認識している学生もいることがわかる。また着替える場所よりも着替える時間を問題としている学生が多く、授業カリキュラムに時間的余裕が必要なのではないかと考えられる。
○仮説3
調査対象者を実験群と統制群にわけ、実験群とコミュニケーションを行うことにより両者に事前事後でジャージへの意識変化が起こったかをt検定により比較した。
【分析結果】
図21より実験群の体育専門学群以外の学生において、「ジャージ・スウェット登校はだらしないと思う」・「ジャージ・スウェットによって風紀が乱れると思う」の項目について事前事後比較で有意な結果が得られた。
また図22より体育専門学群の学生において、「ジャージ・スウェット登校に賛成である」・「ジャージ・スウェット登校はだらしないと思う」・「ジャージ・スウェットによって風紀が乱れると思う」の項目に関して事前事後比較で有意な結果が得られたが、体育専門学群以外の学生とは逆の意識変化が起こっていた。
図23より統制群の体育専門学群以外の学生において、「ジャージ・スウェット登校はだらしないと思う」の項目について有意な結果が得られた。
また図24より体育専門学群の学生において、「ジャージ・スウェット登校に賛成である」の項目について有意な結果が得られた。
【考察】
実験群では、体育専門学類以外の学生について、コミュニケーションツールによってジャージ登校のデメリットを理解させることができた。一方、体育専門学類の学生については、私たちのコミュニケーションツールに対するリアクタンスがあったと考えられ、体育専門学群生とジャージの密接な関係の表れであると考えられる。
統制群についても体育専門学群についてリアクタンスが見受けられる。