4.導入場所の決定
<4-1-1 候補地の選定> |
涼空間の提案にあたって、候補地の選出を行った。 設置場所の条件として、実際に利用する夏季に人が集まる場所であること、涼空間の話題性によって集客効果が見込める場所であること、 利用者が限定されないことの3点を考慮し、大型ショッピングセンターや駅前が適しているのではないかと考えた。大学にも設置できないかと考えたが 、夏季休暇中は授業がないうえに帰省する学生が多いために利用者が少ないのではないかということで候補地とはしなかった。 そこで我々が候補地としてあげた場所がショッピングセンターではイーアスつくば、クレオスクエアつくば、LALAガーデンつくば、 そして駅前としてつくばセンターバスターミナル周辺である。 |
<4-1-2 現地調査-1> |
候補地をあげたところで実際に現地調査を行った。候補地のどこが暑いのか、また、暑さ対策はあるのかを調査した。詳細は以下のとおりである。 日時:5月20日(金) 13:30から16:00 場所:イーアスつくば、LALAガーデンつくば、つくばセンター周辺(クレオスクエアつくばを含む) 方法:気温計と放射温度計を用いて温度の測定、暑さ対策の有無の確認 ※放射温度計…体感温度は気温と地表などからの輻射熱によって計算されるために、放射温度計(株式会社タカギ)を用いて昼間の暑い時間帯の地表の温度を測定した。 |
<4-1-3 結果> |
イーアスつくば 外気温:30.5℃ 地表温度:51.6℃ かつらぎロードという開業時から打ち水・ミスト噴霧を行っている場所がある。設置目的は空間に動きを持たせるための演出効果。涼を得る目的ではないものの、 客によっては暑さを紛らわせるものと捉えている可能性もある。 今夏の電力不足対策としてはエアコンの設定温度の引き上げ以外にかつらぎロードでイベントを開催予定。大きな氷塊を専用台に乗せ清涼感を演出する。 昨年は3台で実施したが今年は10台を予定。また、水を絡めたイベントも企画中である。 LALAガーデンつくば 外気温:30℃ 地表温度:49.4℃ 1階のプラザ広場においてポップジェット噴水という噴水設備を設置。設置目的は人の集う市場というコンセプトのLALAガーデンの中心地として井戸のような役割を意図している。 夏場は日差しが強い場所なので純粋に水を利用した涼の目的もある。 今夏の電力不足対策としては、電力を必要としない風鈴などを使用したイベントが予定されている。 駅前・クレオスクエアつくば 外気温:30℃ 地表温度:51.1℃ 暑さ対策として、二年前から西部・Q’t間の広場で打ち水を実施している。昨年は雨水を利用できないかと市に提案をしたが許可が下りなかった。 今夏の対策としては特に計画はされていない状況である。 以上より、今夏の対策が何もなされていないクレオスクエアつくば・つくばセンターバスターミナル周辺に設置するのが望ましいという結論に至った。 |
<4-2-1現地調査-2 > |
対象地をクレオスクエアつくば・つくばセンターバスターミナル周辺としたが、実際どこに涼空間を創設すべきか、その再検討を行うため再度つくばセンター付近の調査を行った。
調査概要は以下のとおりである。 調査日時:6月3日(金) 13:00〜15:00 使用機器:ArcPad、放射温度計 検討方法:ArcPad上に計180点をプロット。 放射温度計で測定した気温をArcGISにて入力し、温度分布表を作成。温度分布表で暑い箇所を設置場所として提案する。 対象地域は以下の赤色で囲まれた部分 ![]() |
<4-2-2 結果 > | |
温度分布表は右図のようになった。 | ![]() |
温度分布表から分かる事は ・西武、キュート付近の温度は高くない。 ・つくばセンター、バスターミナル付近の温度が高い。 ・aiaiモール付近の温度が高い。 ということである。意外だったのが西武・キュート付近の温度があまり高くなかったことである。その原因としては、西武・キュート付近での計測温度数が少なく 、気温の高かった箇所が主になってしまい、低い様相を示してしまったと考えられる。しかし、実際西武・キュート付近は屋根があるため、 温度が高くなりすぎる事は少ないと考えられる。そしてaiaiモール付近だが、温度は確かに高かったのだが、人通りが少ない。したがって、温度も高く、 人通りも多いつくばセンター・バスターミナル付近に涼空間を設置する事が妥当かつ現実性が高いと考える。 次に、ドライミストと打ち水の設置場所の選定である。 まずドライミストだが、バスターミナルへの設置を提案したい。なぜなら、バスターミナルにはアーケードが既存している。これは六本木ヒルズのそれと良く似ている。 また人通りも多くバスを待つ人々が涼しさの受益者となることが考えられ、TXとの乗り継ぎの際に温度変化を少なくでき、不快感の減少に貢献できると考えられる。 よってバスターミナルにはドライミストの設置が良いと考えられる。 そして打ち水であるが、バスターミナルには隣接して20分無料駐車場がある。ここに採用できないだろうか。打ち水をする事でアスファルトからの照り返しが少なくなり、 上昇する熱気の減少も期待できるため、自動車からの排熱も少なくなると考えられる。 したがって、涼空間の設置として、 ・ドライミスト→つくばセンターバスターミナル ・打ち水→20分無料駐車場 という2つを提案したい。 |
<4-2-3 アンケート調査 > | |
つくば市民の暑さ対策への認識と、新たな涼空間の必要性の調査、及びドライミスト実施場所の選定のため、アンケート調査を行った。
アンケート調査を行うに当たり、2点の仮説を設定し、その検証を行うことでつくば市民の涼空間に対するニーズを確認、
及びニーズがある場合の実施場所の検討を行うことにした。想定した仮説は以下の2点。 @現在つくばで行われている暑さ対策に対するつくば市民の関心・満足度は低い Aつくばセンター付近を暑いと感じる人は多く、ドライミストを用いた涼空間のニーズはある 実施日:6月4日 時間:14時〜16時 天候:晴れ 場所:つくばセンターバスターミナル周辺 有効回答数:69 なお、調査対象はバスターミナル周辺の通行者からランダムで選出し、アンケートの記入は班員の面前で行ってもらった。 | |
<4-2-4 アンケート結果 > | |
質問1は暑さ対策に対しどの程度の関心があるかについてであり、その回答をグラフにしたものが図1である。仮説とは異なり、暑さ対策への関心は高いことが分かる。 | ![]() |
質問2では現在のつくば市にある涼空間に対する満足度を聞いた。その結果が図2である。満足度は低いとは言い切れないが、決して高くもない。 「どちらともいえない」に相当する人をいかに満足させるかが重要であるといえる。 | ![]() |
質問3では今夏の電力不足に対する個人の対策について自由記述で質問した。多くの人が「エアコンを使わない」「涼しい場所に行く」などの回答をしており、 新たな涼を得るための空間を設計することは十分に意義のあることだと言える。 |
質問4及び6ではそれぞれQ’t付近の暑さ、バスターミナル付近の暑さに対する意識に関して質問した。それぞれの結果を図3、図4で示す。 どちらの質問でも過半数以上の人が暑いと感じていることから、センター周辺は利用者の視点からも暑いと思われていることが分かった。 |
![]() ![]() |
質問5及び8ではセンターにおけるドライミストのニーズに関しての質問を行った。結果は図5、図6のようになった。 質問5(図5)では6割の人がドライミストがあればドライミストを利用すると回答し、質問8(図6)では約7割の人が新たな涼空間が必要であると回答している。 このことからセンター周辺でのドライミストを利用した新たな涼空間へのニーズは十分にあると言える。 |
![]() ![]() |
質問7及び9はセンターの利用度とドライミストを設置するならどこがよいかという質問で、図7、8はその結果である。利用頻度は低いもののアンケート終了後に 「涼しくなるならセンターに来る」という人もいるなど、センター利用者の増加も期待できる可能性が分かった。図8ではバスターミナルやQ’t付近などが多い一方で、 小中学校という回答も多かった。 |
![]() ![]() |
・まとめ 結果から仮説@の「関心は薄い」という部分は間違っていたものの、つくば市民の現状に対する満足度は決して高いとは言えず、またセンター付近が暑いと感じていることが分かった。 このことから新たな涼空間をセンターにつくることは意義があり、またニーズもあるということがいえる。実際にドライミストを設置する場所について小中学校という回答が少なくなかったが、 今回場所の選定の際に夏休みにも人が集まるところという条件を設定したため、もっとも多かったセンターバスターミナルを実施場所の候補にすることにした。 |
<4-3-1 ドライミストの提案> | |
つくばセンターバスターミナルにドライミストを設置すると、総延長は約172mとなる。1mおきにノズルを設置するとして、必要なノズルは合計172個となる。
新潟県の新潟駅南口広場を参考に初期費用などのコスト計算をしたところ、初期費用は3245万円、維持管理費用は約20万円となる。1か月の間に150時間稼働させると仮定して、
水道代は77400?の消費により約5147円、電気代は372.5kWの消費によって9130円と計算できる。これらはいずれもつくば市で利用することを考慮して、
つくば市の上水道料金と東京電力の料金表から割り出した数値である。初期費用は高額なものの、先にも述べたようにランニングコストは低く抑えられるので
、毎年夏に活躍することを考え長い目でみれば、非常に経済的かつエコであると考えらえる。また、このドライミストの導入により駅の利用者が増えるということも考えらえる。
まちとしてまだ新しいつくば市の、先進的な面を表現するというイメージアップができるのではないだろうか。また、バスの待ち時間が暑くて外出するのが億劫になっている人もいると考え
、このドライミストの設置により集客効果も見込められ、それにともなってつくば市がさらに活気づくという期待もできる。![]() |
<4-3-2 20分駐車場での打ち水> | |
20分駐車場で打ち水を行う際、打ち水は朝夕の2回、期間は7・8月の2ヶ月行うとする。 具体的には、雨水タンクを図で示してあるバスの発券所も裏に設置し、そこから人がホースを使って打ち水を行うことを考えている。 これに使用する雨水は駐車場の雨水を集水するとして、岡山の事例より、20分駐車場の大きさ(約1500u)から使用する水量は1日あたり1tとなる。 ここで集水できる雨水量についてだが、つくば市の降水量(最低降水量95mm)と、駐車場の面積より、1ヶ月で0.095×1500=142.5t集めることができる。 今回想定している打ち水では、1ヶ月で1t/日×30日=30tの水量が必要なので、雨水を集めて打ち水に利用することは雨水量的に可能である。 またこの雨水収集に必要なタンクの大きさについて、打ち水の1か月使用量である30tと、使用する間に降る雨の量を考慮に入れて、20tタンクを設置するとういことが最適であると考えた。 | ![]() |
以上の方法から、この20分駐車場で打ち水を実施するにあたってのコスト計算を行う。 雨水タンク20t設置とその他使用するホースなどに80万かかると考えている。 それに加えて、今回の場合、人の手によって打ち水を行うと考えているため、それに伴う人件費という点も考慮が必要であるが、その点に関しては、 役所の方や周辺地域住民の方々に、ボランティアで行ってもらうことを想定している。そうすることで、一時的なイベント要素が強い打ち水が習慣化され、 打ち水が広く知られることでつくば市の夏の暑さ対策についてさらに関心がもたれ、また打ち水を住民の方々が行うことで住民同士のつながりが強くなり、 地域コミュニケーション活性化につがることも考えられる。 また人件費の問題などで人の手による打ち水が行えない場合について、自動打ち水システムを導入することも想定した。 これには図のようなハイドロ自動打ち水システムというものを使用する。このシステムは保水ブロックを敷き、そこから浸透した雨水を貯留槽に貯め、 その貯めた雨水をポンプによって保水ブロックから染み出させ、打ち水効果を生み出すというもので、駐車場の大きさなどを考慮した結果、 設置費用として約3000万円かかると考えている。 | ![]() |
<4-3-3 Q`t屋上のエアコン室外機冷却> | ||||||||||
Q`t屋上のエアコン室外機を冷却する際の、1日に8時間室外機に打ち水を使用するとした場合、ウェブサイトからのデータより使用水量は30Lとなる。
このことからコスト計算をすると、室外機への打ち水は自動で行うため、ポンプ付き雨水タンクを設置(200L)し、これに27万円かかる。またポンプを動かすため、
その電気代が1日当たり約26円かかると考えられる。 ここで、室外機を冷却することによってどれだけの効果が得られるかについて考えた。特に室外機の冷却により、どのくらい電気代が節約できるかに着目した。 まず通常のQ`tのエアコン使用における消費電力を計算する。今回はQ`tで実際に使用しているエアコンの数や電力が調べられなかったため、Q`tの店舗面積と店舗数から、 その部分を冷やすのに必要なエアコンの消費電力を計算し、1日8時間使用するとした時の1日あたりに電気代を算出した。またその結果から、室外機を冷却したときについて、 家庭用エアコンで行った実験結果(表)を用いて、消費電力を出し、電気代を算出する。 具体的にはQ`tの店舗面積13500u(店舗数105店舗)より、1店舗約128u。エアコンで128uの場所を冷やすことに、必要な消費電力は約5kw。以上よりQtを1日8時間冷やすとすると、 消費電力は5kw×105台×8時間=4200kw。 これより電気代を計算すると、1日74万円かかる。 一方、打ち水を室外機にかけた場合、右表の家庭用 エアコンの参考例より4200×52.3/70≒3140kw。 電気代は1日55万。 よって1日あたり、74万−55万=19万、つまり電気代が約26%節約されるという試算になる。
|