4.計画の提案
4.1.1. 廃食油の利用先
廃食油の再利用方法を生活安全環境班のテーマであるカスケード利用に適用する。 廃食油を再利用するときにかかる手間が多い順に並べると、
A.もう一度食用油にする。
B.食用以外の原料にする。例えば、家畜の飼料に加工
C.燃料として使う。
Aについて、廃食油を再び食用油として使えるならば廃棄物が出ないので好ましい。 だが、油の酸化を遅らせることはできるが 、いずれは劣化するという事実を考えると技術的に難しく、 社会的コストや衛生面に問題がある。
Bについては既に行われている。 これは事業用の廃食油を業者が引き取り精製して家畜の肥料などに混ぜている。 だが、家庭用から出た廃食油は質が一定ではなく、 家庭用廃食油を使った飼料は品質にも影響する。 畜産について詳しい田島教授によると、 畜産農家は質が一定ではない飼料を使いたがらない。
Cについて、廃食油をバイオディーゼル燃料に精製する取り組みは全国的に行われている。 これはディーゼル車の燃料である軽油の代替として使われる。 だが、前述のとおり精製コストが軽油の値段と大差なく、 持続可能性の観点から考えると適切ではない。
そこで生活安全環境班では、廃食油をバイオディーゼル燃料ではなく、 精製コストをかけず燃料として使えないだろうかと考えた。 そこで思いついたのは、一の矢共用棟のボイラー燃料としての利用である。 一般的なボイラーの燃料はA重油というものだが、 これは化学的に軽油に近いものなので廃食油を利用できると考えた。 また、あまり普及はしていないが廃食油を燃料としているボイラーが 市販されていることも提案を後押しした。
そこで、一の矢共用棟のボイラーの使用状況、 廃食油ボイラーの導入可能性を調べるため、 ボイラー管理者にヒアリングをした。
一の矢共用棟で使っているボイラーは、3基ある。 開学から一度だけボイラーを更新している。 給湯用2基は1994年製、暖房用1基は1997年製である。 一の矢共用棟のボイラーの重油使用量は留学生宿舎のものと合わせて年間130923Lである。 ボイラーには排ガス規制がある(県の条例)ので、廃食油で動くボイラーを使うにも、 これをクリアする必要がある。 また、シャワーなどが集中して使われると、 ボイラーに負荷がかかるので、出力が大きいものがよい。 廃食油で動くボイラーを使うには、燃料が継続的に集まることが必要だ。
4.1.2. 廃食油の回収方法
市内28箇所のスーパーに回収箱を設置して月1回、車で回収する。 図9のようにつくば市を8エリアに分けて回収する。 このとき総距離は161Kmである。車は「カーシェアつくば」のものを使う。 廃食油を回収するときの人件費を削減するため、学生有志を募る方法を考えた。 そこでT−ACT(筑波大学の学生支援プログラム)で回収する協力者を募集することにした。 その場合、十分な人数が得られるのか、 T-ACTのコンサルタントの樫村氏にヒアリングを行った。 廃油ボイラー設置などの計画が実現可能であれば、 宣伝をせずに初期段階で回収協力者を10人程度は募集できるという見解を得た。
4.2.1.草刈りの方法
緑地の放置は景観を損ねるだけでなく、 害虫の増加、不法投棄の場など、環境の悪化の一因となる。 緑地を維持・管理するためには、莫大なエネルギーが必要だということが分かった。 草刈りのついてもカスケード利用の観点から考える。質・手間の多寡の優位の順に並べると、
A.動物の食用に転化する。例.家畜を放牧・サイレージ(飼料)
B.農業関連に転化する。例。堆肥化
C.燃料に転化する。例.焼却時のエネルギーを利用
当班では、家畜を放牧より緑地を管理し、 景観の悪化を防ぐとともに、 市民に対する緑地整備の環境意識向上や よりよい都市空間の整備に寄与すると考えられるので、 放牧による緑地管理を考える。
放牧による先進事例として、 茨城県常総市大生郷地区の耕作放棄地管理が挙げられる。 ここでは、和牛(妊鑑牛)を耕作放棄地に放牧させ草を刈り取らせている。 この取り組みは中央農業総合研究センターが地主と協力して行っている。 このように、家畜の放牧による緑地管理が実際行われている。 だが、今回は、牛ではなくヤギによる放牧を考える。
ヤギのメリットを次のとおりである。
A.様々な草を好き嫌いなく食べる。
青草だけでも十分栄養が足り、体重40Kgのヤギの場合、1日に約6Kgの青草を食べる。
B.牛よりも小型で小回りが利く。
C.癒しのペットとして、親しみやすい。
ヤギの放牧方法として繋牧を用いる。 繋牧は、図10のように草地に支柱を打って、 そこからローブを支柱とヤギに結び、飼育する。 ヤギは支柱の周りに生えている草を食べるという仕組みだ。
ヤギは1日1頭当たり10a〜15aの面積が必要なので、
市内の緑地にヤギを放牧したとき、
必要な頭数
=(緑地面積)×(1平方メートルあたりの草量)÷(年間の草量)
=約4800頭となる。
いきなり市内にヤギを放牧させるのは難しいので、
以下、学内での放牧について考える。
学内の草地総面積は約84haであるから、
必要なヤギの頭数
=84ha×1.1kg(1平方メートルあたりの草量)÷2190(年間飼料量)
=約450頭となる。