3−2 つくばに来訪実績のある高校へのアンケート調査

筑波研究学園都市へ来訪する高校生がどのような行程で来訪しているか,また,どのように感じているかといったことをより詳細に把握するために,筑波研究学園都市へ来訪実績のある高等学校にアンケート調査を行った.アンケートを実施した高等学校は以下のとおりである.

 

北海道札幌北高等学校  (11枚)

学校法人いわき秀英学園 いわき秀英高等学校   (270枚)   

福島県立相馬高等学校 (22枚)

学校法人ノートルダム清心学園 新潟清心女子高等学校 (80枚)

千葉県立東葛飾高等学校 (329枚)

東京都立戸山高等学校  (25枚)

学校法人文理佐藤学園 西武学園文理高等学校 (33枚)

学校法人山梨学院 山梨学院大学附属中学高等学校 (200枚)

富山県立富山南高等学校 (84枚)

鳥取県立鳥取東高等学校 (35枚)

岡山県立林野高等学校  (8枚)

島根県立出雲高等学校  (0枚)

長崎県立諫早高等学校  (20枚)

宮崎県立延岡高等学校  (240枚)

宮崎県立宮崎北高等学校  (14枚)

括弧内は生徒用アンケート配布枚数

2-5 調査対象高校分布図

 

 

<アンケート対象校の選定基準>

アンケート対象校の選定基準は,筑波大学への来訪高校は把握できたため,筑波大学に来訪実績のある高校で,過去数年にわたって来訪している高校であること.また,一校あたりの筑波研究学園都市への来訪人数は様々であるので,見学者数の大小も考慮し,ある特定の地方に偏らないように,全国的に分散するように選定した.また,筑波研究学園都市で多く研修を行っている,SSH認定高校も選定した.

<アンケート概要>

各高校に送付したアンケートの構成

研修・見学の行程表記入用紙:1

引率の先生用アンケート用紙:1

生徒用アンケート用紙:つくばに来訪した高校生に各1

送付日 200862日,3

送付数 先生用アンケート 19

    生徒用アンケート 1665

回収数 先生用アンケート 15枚(79%

    生徒用アンケート 118071%

<アンケート内容>

生徒用

⊡基本情報  学年・性別・文理・好きな科目

⊡つくばの街に関する印象

⊡つくばでの滞在時間

⊡滞在時間に対する満足度・適正だと思われる滞在時間

⊡筑波研究学園都市内での見学施設についての見学時間や事前学習.選んだ理由や満足度

⊡つくば市までの移動手段・つくば市内での移動手段

⊡全体的なつくばの印象

⊡筑波大学で見学した施設・見学したかった施設

⊡筑波大学は誰の案内で見学したか・誰に案内してほしかったか

先生用

⊡筑波研究学園都市に来訪した先生・生徒の人数

⊡筑波研究学園都市への見学・研修は誰が決めたか

⊡筑波研究学園都市への見学・研修を検討したきっかけ

⊡判別行動で筑波研究学園都市に来ている場合,他の班はどこに行っていたか.

⊡筑波研究学園都市への見学の主目的

⊡事前に筑波研究学園都市への計画の際に参考にした情報源や機関

⊡つくばでの宿泊について

⊡次回もつくばに来たいと思うか

<行程表からわかること>

各高校の見学・研修の行程表から筑波研究学園都市内での行動パターンを3つに分けられることがわかった.まず1つ目に,つくば市内に宿泊して大学・研究所など複数の施設の見学をしているパターン.ちなみに,このパターンにあたる高校は5校であった.ここでは,このパターンを「つくば宿泊型」と呼ぶ. 2つ目に,宿泊はしないが研究所・大学など複数の施設を見学しているパターンである.5校がこのパターンにあたり,ここでは「日帰りつくば周遊型」と呼ぶ.3つ目に筑波大学のみを見学をするパターンで,6校がこのパターンにあたる.ここでは「大学のみ見学型」と呼ぶ.

<各パターンにおける全行程の例>

「つくば宿泊型」

1日目 つくば

2日目 つくば・東京

3日目 東京(日本科学未来館)

 

「日帰りつくば周遊型」

1日目 鎌倉・東京タワー

2日目 つくば・浅草

3日目 都内で班別研修

4日目 東京ディズニーランド

5日目 横浜中華街

 

「大学のみ見学型」

1日目 東京での班別行動(ここで1つの班がつくばに来訪)

2日目 京都・奈良へ移動

3日目 京都市内をクラス別・班別行動

4日目 神戸を散策

 

<各パターンの筑波市内での行程例>

「つくば宿泊型」の行程例

                         1日目 1145

                         つくば駅到着

                            

@     JAXA

全員で見学

                         

                          15

A     高エネルギー加速器研究機構

B     霊長類医科学研究センター

2班に分かれてそれぞれの研究所を見学

 

                          17

C     青木屋にて宿泊

 

2日目 

930

D     筑波大学

全員で見学

                        

13

E     防災科学研究センター

全員で見学

 

15

F 産業総合研究所

G 農業生物資源研究所

2-6 「つくば宿泊型」の行程例

 
2班に分かれてそれぞれの研究所を見学

 

つくば市内で宿泊し,1日以上かけて研究学園都市を回るパターンである.修学旅行や理数系学科の研修旅行という位置づけで遠方から訪れる学校が主である.このパターンの特徴として人数や生徒の希望に応じて貸切バスに分乗し大学や複数の研究所を回ること,宿泊した日に見学・研修内容に関するレポート作成や発表会を行うことが挙げられる.

 

「日帰りつくば周遊型」の行程例

午前中

9時 つくば着

@高エネルギー加速器研究機構

A産業技術総合研究所

Bエキスポセンター

 

それぞれ3つの班に分かれて見学

 

12

C筑波大学

全班筑波大学に集合して大学見学

 

 

午後

A産業技術総合研究所

C筑波大学

DJAXA

E物質・材料研究機構

F気象研究所

筑波大学に残って見学するグループと,それぞれの研究所を見学する5つの班に分かれて午後の研修を行う.

 

 

 

2-7 「日帰りつくば周遊型」の行程例

 
 

 


主に東京などに宿泊し,日帰りで研究学園都市内を回るパターンである.修学旅行の班別研修で一部の班が来るケースや,先述の「つくば宿泊型」よりも移動距離が短い東北地方や中部地方の学校が理数系学科の研修で大学と1,2か所の研究所をセットで回るというケースが主である.全行程の中では都内の大学や企業・博物館などとも組み合わせになっていることが多い.

 

「大学のみ見学型」の行程例                            

                    

 

 

 

 

                     1340

@     筑波大学見学

 

                     東京班別研修の全20班のうちの1班・15名がつくばへ来訪

                     

他の班の見学・研修先

 東大・東工大・慶応大・東京芸大・千葉大・早大・一橋大・中央大・東京外大・学芸大といった,東京の大学や,

JAL整備場・三菱化学生命科学研究所といった民間企業や民間の研究所にも見学に訪れている.

     

2-8 「大学のみ見学型」の行程例

 
 

 

 


上の例のように,東京が主目的地である修学旅行の班別行動の1班が筑波大学へ見学に来るケースが多い.また,他にも関東近県の高校が,進学意識の向上や,大学に関する具体的なイメージを生徒に持ってもらうために,1日かけて筑波大学に見学に来るケースも多い.

 

<つくばまでの交通手段>

他地域から筑波研究学園都市までの移動手段と筑波研究学園都市内での移動手段にわけてアンケートを行った. まず,他地域からつくばまでであるが,貸切バスで来ている場合と,つくばエクスプレスを利用している場合とがあった.内訳は以下のとおりである.

     貸切バス     10校 908

     つくばエクスプレス    4校 307

また,学園都市内の移動手段はほとんど貸切バスを利用しており,稀に「大学のみ見学型」のパターンの高校で,路線バスを利用したり,その増便を依頼した高校もあった.

 

〜アンケート結果から導かれたデータ各種〜

データでは,以下の通りに略称を用いている.

筑波大=筑波大学

理化研=理化学研究所

地理院=国土地理院

KEK=高エネルギー加速器研究機構

JAXA=宇宙航空研究開発機構筑波宇宙センター

産総研=産業技術総合研究所つくば本部

植物園=筑波実験植物園

防災研=防災科学技術研究所

環境研=国立環境研究所

地標館=産業技術総合研究所地質標本館

 

<アンケートを行った対象者の基礎データ>

まず,回答者を学年別で見ると23年生が大部分を占めた.これは昨年度の大学見学の資料を参考にアンケート対象校を選定したため,12年生のうちにつくばに来訪し,4月の進級を挟んで本アンケートに回答してもらったためである.次に回答者の男女比は図2-10のとおり,ほぼ半々である.また,文理別では図2-11のとおり,理系が文系を100人ほど上回っているが極端な差ではない.好きな教科については図2-12を見ると,未回答が多いものの,回答があった中では理科や数学と答える生徒がやや多い傾向が読み取れる(なお,主要5教科以外の科目をあげた回答についても「未回答」に含めた).以上から,男女・文理ともバランスよくアンケートを実施することができたといえる.

 

<筑波研究学園都市全体について>

 筑波研究学園都市に対する印象について聞いた結果が図2-13である.「緑が多い」「先進的である」という印象は高い一方,「庶民的」「おしゃれである」「都会的である」「便利である」の4項目について印象が低いという結果が出た.

2-14は筑波研究学園都市の見学全体の印象について聞いた.

2-15は行程表から分かった3つの滞在パターン別筑波研究学園都市の印象である.

2-16は筑波研究学園都市における実際の滞在時間と,アンケート回答者の希望滞在時間を平均したものである.

 滞在パターン別に図2-16の結果をまとめ直したものが図2-17である.

これら2つのグラフから,どの行動パターンであっても差の大きさにはばらつきがあるものの,実際の滞在時間よりも希望する滞在時間の方が長いという傾向がわかる.

 

2-18は筑波研究学園都市にまた訪れたいかどうか聞いた質問の結果である.「やや思う」「どちらでもない」という回答が特に多かった.

 

 

行動パターン別にまた来たいかを集計した図2-19もあわせて見ると,「宿泊型」では「とても思う」が3パターン中で最も多いが,「どちらでもない」は他の2パターンが「宿泊型」を上回った.顕著ではないがやや「宿泊型」の方が再来訪の希望を持つ生徒が多いといえそうだ.

2-20は将来の進路の参考になったか聞いたものである.

また,同様のものを図2-21で滞在パターン別にまとめた.両者を見比べると,「大学のみ型」では「参考になった」という回答が半数を超えている.大学は自分の進路と直接結び付けて考えやすい分,このような結果につながったと考えられる.

<小括>

まず,筑波研究学園都市に見学に来た際のイメージのうち,特に「先進的」という印象がある一方で「都会的」「便利」とは葉感じられないという部分は,抽象的ではあるものの学園都市の長所・短所を明らかにしたという意味で示唆のあるデータと言える.

次に,滞在時間と見学の印象の良し悪しについて見ていきたい.見学全体の印象について「宿泊型」は回答数の分布が「とても楽しい」,「やや楽しい」にやや偏っている傾向があり,「やや楽しい」と「どちらでもない」に分布がやや偏っている他の2パターンとの対比が見えてくる.同時に,実際の滞在時間と希望する滞在時間を比較すると,差の大小はあるものの,どの行動パターンでも実際の時間よりも希望する時間のほうが長い.したがって,滞在時間の長さと見学全体の好印象には緩やかに相関があるということがわかる.

再び筑波研究学園都市に来訪したいかどうかという質問に関してはどの行動パターンでも「やや思う」「どちらでもない」という回答が多い.ただ,「日帰り周遊型」については「やや思わない」「まったく思わない」という回答が他の2パターンに比べてやや多いこともわかり,行動パターンによって再来訪の希望にもわずかながら差があることを示唆している.

最後に筑波研究学園都市見学が自分の将来の進路選択の参考になったかどうかという質問については,全体では「参考にならなかった」という回答が過半数だった.しかしこれだけでは分析が困難なため,行動パターン別の回答とともに検証すると,「大学のみ見学型」は「参考になった」が半数を超えている.参加した生徒にとって大学はもっとも身近な進路選択の岐路であり「大学を見に行く」という意識をはっきり持てることで,すぐに自分の進路の参考にできると考えられる.一方,研究所見学は知的好奇心の刺激という意味での興味深さはあるものの,自分の進路に直結して考えるのはやや難しい面があるかもしれない.

特に重要な点を整理すると,滞在時間は長めに設定した方が見学全体の印象の良さや再来訪の希望が緩やかに高まる.一方で,大学・研究所を単に見学するだけでは,各自の進路に結びつけることは難しいことも確かである.

 

 

<各見学施設別のアンケート結果>

2-22は筑波研究学園都市の各施設別見学者数の集計である.アンケート対象高校は筑波大学を行程に含む高校から選定したため,筑波大学見学者数が多いという結果になっている.そこで,筑波大学以外を見ると,筑波宇宙センター,高エネルギー加速器研究機構などが見学者数が多かった.

 2-23は各滞在パターン別に分けた施設別見学者数の集計である.「宿泊型」ではJAXAが特に多いことと「日帰り周遊型」では高エネルギー加速器研究機構もJAXAに匹敵する人数が訪れている点が特徴的である.

2-24は筑波研究学園都市における各研究施設別の平均見学時間である.今回例示した施設のほとんどで1時間半前後という回答が多く,相対的に筑波大学,理化学研究所の見学時間が長いことがわかる.

また,見学者数が比較的多い筑波大学,JAXA,高エネルギー加速器研究機構において,見学時間と見学満足度がどのような相関を示すか調べたところ,それぞれ筑波大学は図2-25JAXAは図2-26,高エネルギー加速器研究機構は図2-27のようになった.筑波大学では,全体的に見れば各見学時間別の満足度の差はそこまで見られなかった.JAXAについては見学時間が長くなるにつれて満足度も上昇する相関が見られた.高エネルギー加速器研究機構についても見学時間が長くなるにつれて満足度が上昇する相関が見られた.

 

2-28は,見学者の事前学習実施状況である.多くの研究機関で見学者のおよそ半数が事前学習を行っていないという結果が出た.

関連して,図2-29では,事前学習実施状況と見学満足度について調べた.グラフからわかるように,見学に満足している人は事前学習をしている場合が多く,一方で見学に満足していない人は事前学習を行っていない場合が多い.

2-30は事前学習の実施別に見たつくば見学の満足度の割合である.「事前学習あり」の回答者のうち,70%は「とても満足」または「やや満足」と回答しており,「事前学習なし」の回答者よりも見学に満足していることがわかる.以上のことから,自分で興味を持ち事前に調べてから見学に来た生徒のほうが,筑波研究学園都市での見学をより充実して行えているという傾向がある.

2-30 事前学習実施別見学満足度

 

 

2-31は見学先に選んだ施設の選択理由を集計したものであるが,「既定コースである」という回答の割合がほとんどの施設で最も高く,また筑波大学も,「進路先として興味があるから」という割合は10%に満たない.

また見学の期待度について各施設ごとに得たデータが図2-32である.環境研究所や国土地理院の期待度の高さは顕著だが,人数が少ないため参考程度として見る必要がある.その点,JAXAは人数が多い上に期待度も相対的に高い.筑波大学についても「やや」と「とても」あわせて6割弱の人が期待していることがわかる.

2-33は,見学前の期待度と凡例の三項目に関してどのような関係にあるのかを示したグラフである. 進路決定に役立ったかどうかは,見学前から期待していたかどうかにはあまり関係ないようだが,見学が全体的に楽しかったかどうか,また来たいと思うかどうかに関しては,見学前から期待していた人ほど,そう思う傾向にあるということがわかる.つまり,見学前から期待している人のほうが,実際に満足している傾向があるのではないだろうか.

2-33 見学前期待度による感想の違い

 

2-33 期待度別満足度

 
2-34は各施設の見学時間に対する満足度をまとめたグラフである.平均見学時間が長めだった理化学研究所は「やや長い」と「とても長い」と感じた人あわせて4割程度の人が長いと感じている一方,短いと感じる人も2割弱いるのが特徴的である.同じく見学時間が長めだった筑波大学についても,長いと感じた人は2割強,短いと感じた人は15%ほどいるため,見学時間の設定には改善の余地がありそうである.防災科学技術研究所や高エネルギー加速器研究機構はちょうどよいと答えた人が特に多い.

2-35は施設別の見学全体の満足度である.JAXA,環境研究所,筑波実験植物園は「とても満足」と「やや満足」と感じた人をあわせて7割近くの人が満足しているのをはじめ,多くの施設の満足度は6割前後である.ただ,時間満足度では「ちょうどよい」という回答が多かった防災科学技術研究所は,満足した人が5割を切りながらも「とても満足」という割合がその半分に達している.内容に強く興味を持つ生徒とそうではない生徒の差が大きいことが推測できる.

2-36は,滞在パターン別の平均見学時間である.「宿泊型」のほうが「日帰り型」に比べて各施設での見学時間が短くなる傾向にあるように見える.

筑波大学に関しては,「宿泊型」「大学のみ見学型」の2パターンが「日帰り型」よりも長い見学時間であったようだ.

2-3738は,「宿泊型」「日帰り型」それぞれの各施設での満足度についての集計結果である.KEK,植物園など多くの施設で「宿泊型」の「とても満足」と「やや満足」の割合を足し合わせたものが,「日帰り型」のそれよりも上回っていることがわかる.また,不満に感じた見学者も宿泊型のほうが少なくなっている.

<小括>

グラフから見えてきたことについて,大まかに二点述べる.

まず,見学時間についてである.図2-212223の各施設ごとの見学時間と満足度についての関係からもわかるように,3〜4時間や,4〜5時間など,ある程度1つの施設でまとまった時間がとれるほうが,満足度については高くなることがわかる.各施設でまとまった見学時間が取れそうな「宿泊型」の満足度のほうが,全体の満足度が高い傾向にあるということは,「筑波研究学園都市全体について」の小括からもわかったことである.図2-3233からも,わずかではあるが,「宿泊型」のほうが,「日帰り型」よりも,多くの施設で「とても満足」「やや満足」と答えた人が上回っていた.

しかし,図2-31から,「宿泊型」のほうが「日帰り型」に比べて各施設での見学時間が短くなる傾向にあるように見えるが,これは,今回のアンケートを実施したのが,筑波研究学園都市を見学してから,時間が経っていて,各生徒へのアンケートに記述された見学時間を参考にしているため,各生徒が「見学時間」のような細かい時間についてははっきりと覚えていない場合が多いことが原因なのかもしれない. 実際に,アンケート最後の自由記述欄には,かなり時間が経っているので細かいことはあまり覚えていないといったような内容の記述がいくつか見られた.

次に,事前学習についてである.図2-24からもわかるように,各研究所見学にあたって事前学習をしているケースというのは,おおよそ50%程しかない事がわかった.また,図2-25より,満足度の高い高校生は,事前学習をしている場合のほうが多かったということもわかった.ここから,見学内容のみの充実だけではなく,事前学習をしやすいコンテンツなどを充実させることも重要なのかもしれない.図2-28からは,各施設別に期待度を調べてみたが,施設ごとでの期待度に大きな差はなかったが,図2-29から見学に対してもともと期待していた人のほうが,見学に対する満足度も高いという結果が得られた.事前学習についての結果とあわせて,事前学習でどのような見学内容なのか,見学する研究所の研究内容がどういったものなのかということを予め学習してもらい,筑波研究学園都市の見学に期待を持って来訪してもらうことが重要なのかもしれない.

 

2-39は筑波大学内での見学先について,実際の見学先と,回答者の希望した見学先の差をグラフにまとめたものである.実際に見学している施設では,食堂・図書館・研究施設などが多く,回答者の希望としてはサークルや授業を見学したいという声が多かった.

2-40は見学して進学先として筑波大学に興味を持ったかを聞いた集計結果である.どちらでもないが一番多く,多くの高校生が一般的な大学のイメージを持つための参考に見学をしているのかもしれない.

2-41は滞在パターン別にまとめた図である.「宿泊型」「大学のみ見学型」の「とても思った」「やや思った」を足し合わせた割合が「日帰り型」に比べてやや多いということがわかる.

2-42は大学を案内した実際のガイドおよび,回答者が希望したガイドの比較結果である.大学生に案内してほしい人が非常に多いことがわかる.なお,実際の案内で「大学生」という回答が多いのは,一部の高校で,筑波大学に在学するその高校の卒業生と面会する機会を自主的に設けたためであり,校数ベースでは職員が案内するケースが大半である.

 

 

2-43は筑波大学時間別見学先,見学時間と見学先の相関である.食堂,図書館といった見学が容易な施設に関しては,見学時間が短くても見学している割合が多いが,宿舎やサークルといった施設に関しては,見学時間が5時間を越えるような長い見学時間の見学者の割合が多いように見える.

 

<小括>

見学時間と見学場所の関係として,時間が相対的に短い学校は手軽に見学できる食堂や図書館を回るケースが多く,時間が長くなると模擬講義や宿舎・ギャラリー見学とも組み合わせて回ることが多いという傾向がわかった.ただ,希望する希望する見学先として「サークル」や「講義」を挙げる生徒が多く,見学施設について現状と希望の間にギャップがあることがわかる.

進路先として筑波大学に興味を持ったかという質問に対しては「どちらでもない」と「思った」という回答が多かったが,行動パターン別に見ると「宿泊型」と「大学のみ型」の興味の高さが「日帰り周遊型」のそれを10%ほど上回っている.これは大学見学にかける時間の長さと興味を持ってもらえるかに相関があることを示唆している.

見学時のガイドについては実際の案内は「大学職員」にしてもらった学校が多い.一方,生徒の希望は「大学生」という意見が特に多く,次いで「大学教員」が続く.誰がガイドするかという点でも現状と希望ではギャップが存在することを示している.

 

<自由記述>

生徒用アンケートQ10において,

□今回の見学は,将来の進路を考える参考になりましたか.当てはまる番号を一つ選んで○をつけてください.「1.はい」と答えられた方は何がどのように参考になったかもお答えください.

という内容の自由記述の欄を設けた.また,生徒用アンケートの最後の質問Yにおいて

     何かつくば見学に関して要望や意見などございましたらお書きください.

それらの自由記述欄に書かれていた内容で特徴的なもの,また意見が多かったものについて紹介する.

Q10について

まず,Q10についての自由記述であるが,最も多く見られたのは,「大学の雰囲気がわかったから」「大学について具体的なイメージがもてたから」といった内容の記述が非常に多かった.多くの場合,高校1・2年生の時に筑波大学に来訪した高校生にアンケートを依頼しているので,大学見学自体が初めてという場合も多く,大学とはどういったところなのかということを,キャンパスを見学する中で感じてもらえているということなのではないだろうか.

一方では,「筑波大のプラズマ研究センターの見学で,エネルギーの将来性を学ぶことができ,将来エネルギー関係の研究がしたいと思った.」という意見や,「大学で行われている研究施設を見ることが出来,大学入学後の研究に対するイメージを持つことが出来た」という大学での専門的な施設での見学が,参考になったと答えている高校生もいた.また,大学だけではなく,研究所見学も進路参考になったという声もあり,「JAXAでの宇宙工学の研究が参考になった.」などの記述も見られた.

質問Yについてはあまり回答者がいなかったが,その中でいくつか紹介する.

まず,筑波研究学園都市見学に満足したと思われる高校生の意見として,「つくば見学が修学旅行の中で一番楽しかったです.防災にはとても興味がありますが,こんなに防災の技術が進んでいるとは知りませんでした.人々を救いたいという研究者の方々の熱意にとても感動しました」 といった意見を始め,特に見学内容に満足している高校生の回答がいくつかあった. 一方では,「案内する人によって楽しいかどうかは変わると思います」といった意見や,「見学の際,どの施設の人も紙に書いていることをただ読んでいるだけのようだった」という案内に関する不満を感じた高校生の意見もあった.他にも,「もっとたくさん施設を見たかった.もう少し時間がほしかった」という時間に関する意見や,「体育館とかほかにも施設を見せてもらえる話だったのに,実際に行ったら講義を聞いた後すぐご飯で見せてもらえなくてショックだった」という施設が見切れなかったことに関する不満の声も見られた.