全国的な見学・研修旅行の実態,見学・研修旅行におけるつくばの立ち位置について把握するために,以下の2協会にヒアリング調査を行った.
<財団法人 全国修学旅行研究協会>
日時;5月2日(金) 14時〜 場所;本部事務所(千代田区九段)
協力;理事長 中西朗様 事務局長 山本精五様
1)修学旅行を取り巻く現状
・コミュニケーション機会の減少,いじめ問題など,子供たちを取り巻く環境が変化してきている.
・修学旅行は,感動する体験を子供たちに与える1つの機会として考えられている.
・中学2年生は,5日間インターンシップを行うように文科省から指示があり,修学旅行と絡めて行う所も増えている.
・修学旅行先を決定する上で重視されるのは,「行きやすさ」,「回りやすさ」,「受け入れ」の3つに大きく集約される.
2)進路指導を主な目的とする見学・研修旅行について
・ 旅行中のほぼ1日は進路指導に割かれる.
・ 班別行動では観光スポットを合間に入れつつ大学や企業を回る.メディア関係会社,省庁,大使館,NPO見学などを行う.
・ 進路指導目的の旅行の目的地は,東京およびその周辺に集中している.東京に行けば,コンパクトな範囲で何でも見学できるというのが人気の理由である.早稲田大では,高田馬場の商店街と協力して,就業体験と大学見学をセットにしている.
・ 筑波研究学園都市の様に多数の研究施設が集中していて,それらを見学できる環境は他にはない.理系重視の見学・研修旅行にとって,魅力的な場所である.
キャリア教育と研究施設の組み合わせが修学旅行先としての筑波研究学園都市の特徴である.学園都市には興味を持てそうな研究施設が多いのにも関わらず,PR不足などにより集客力がいまいちであると考えられる.また,修学旅行に対応した交通網が整備されていない面,受け入れ体制などにも改善の余地があると思われる.
3)見学・研修旅行での交通手段について
小学校は貸切バスが多数.中学校は8割が列車,2割弱が飛行機,わずかに貸切バス.高校は8割が飛行機,2割が新幹線を移動に使っている.海外における現地の交通手段は,主に貸切バスである.つくばへの交通手段は,団体は貸切バス,班別行動ではTXが使われる.ただし市内交通が未発達であるので,研究施設間のアクセスが悪い.
<財団法人 日本修学旅行協会>
日時:5月2日(金) 16時15分〜 場所:本部事務所(中央区日本橋馬喰町)
協力:理事長 河上一雄様 事務局長 村岡輝久様
1)修学旅行の概要
・ 高校生は10〜11月,中学生は5〜6月が修学旅行のトップシーズンである.
・ 行き先としては,複合的な素材(教育施設,社会見学施設,歴史的施設,アミューズメント施設など)がある地域の人気が高い.
2)進路指導を主な目的とする見学・研修旅行について
進路指導を主目的とした見学先としての事例として,以下が挙げられる.
・ 天神橋筋商店街(大阪)では修学旅行生が商人体験を行うプログラムが行われている.商店街の方に商売のノウハウを学び,実際に地元の物産を販売してみる.
・ 北九州エコタウン(福岡)では,各工場が修学旅行生に施設を公開している.環境先進事例の学びの場となっている.修学旅行生の受け入れも積極的に行っている.
・ スーパーサイエンスハイスクール(SSH)[1]認定校は,筑波研究学園都市や原子力施設が多い下北半島のほうに積極的に行く傾向がある.
・ 立命館アジア太平洋大学(大分)では,留学生と修学旅行生が交流するプログラムが用意されていて人気がある.
・ 早稲田大では近隣のホテルに宿泊する高校生が,大学生気分を味わうため,夕食で学食を使うことがある.
・ 海外の修学旅行を行う場合は,「国際交流」を主目的としなければならない条件がある.そのため,修学旅行生と現地の高校生との交流は必ず行われる.ホノルル,ロンドン,シドニーなどでは,現地の大学生がグループに一人ずつ付いて市内や大学案内などを行う例もある.
これらの旅行の問題点として,行く側の生徒の意識の低さや,受け入れ施設側の公開の限界によるミスマッチの発生が挙げられる.事前学習が行われていないために,学習効果が薄くなってしまう事例が多い.
筑波研究学園都市の旅行先としての魅力を向上させるには,足りない部分(アミューズメント性など)の広域連携を検討すると良いのではないか.
3)見学・研修旅行での交通手段について
国内旅行では,空港が利用しやすい環境ならば飛行機を使う傾向が高い.海外旅行でも国の移動は飛行機だが,国の中での移動は貸切バスを使う傾向が高い.
以下の3データは,全国修学旅行研究協会調査のデータを参考とした.どの場所にどのくらいの生徒・児童が修学旅行に来ているのかについて,都道府県単位別に調べた.結果が以下の図である.行き先として人気が高いのは沖縄や北海道である.関東圏のみで考えると,茨城の来訪者は3位である.
<修学旅行目的地別生徒数>
図2-1 修学旅行目的地別生徒数
図2-1 目的地別生徒分布図
<関東地方入込率>
関東圏に絞って修学旅行生の動向について分析した.関東地方を修学旅行先にする学校は近年増加傾向にあることが,このデータから読み取れる.前述のヒアリング結果より,この背景には,進路指導目的で修学旅行を行う学校が近年増加しているためということが挙げられる.
<つくば・関東への修学旅行来訪者の分布>
つくばと関東の来訪者分布を比較した.つくば,もしくは関東に来ている修学旅行生が,どこから多く来ているのか分析することができる.関東に多く来ている旅行生と,つくばに多く来ている旅行生は,似たような分布をしており,東京などとセットでつくばに来訪しているのではないかと推察される.
表2-1 目的地別生徒数 図2-3 修学旅行来訪者の分布
<筑波山周辺地域観光客数の推移>
つくば市周辺では観光客の増加傾向が見られる.右図は,筑波山周辺(つくば,石岡,筑西,つくばみらい,桜川)観光客数の増加の傾向を示している.筑波山周辺の観光目的は,グリーンツーリズム,学会,修学旅行,歴史探訪,研究施設見学などが考えられる.平成11年度と18年度を比較すると,ここ数年で観光客数が約2倍になっていることが読み取れる.(17年度の上昇については,TX開業による一時的伸びである.)このデータは,茨城県観光物産課の統計データを参考とした.
図2-4 筑波山周辺地域観光客数の推移
[1] SSH(スーパーサイエンスハイスクール);将来の国際的な科学技術系人材を育成することを目指し,理数教育に重点を置いた研究開発を行う事業。19年度予算額は1,444,433千円。(1校当たり配分額 約1420万円)平成19年度認定校は101校。