3.既存調査の収集と分析

犯罪不安

 まず、犯罪不安と暗さには関係性があるのではないかと考え既存研究を調査した。犯罪不安とは、何らかの犯罪に関連づけられた環境的手がかりを認知することで喚起される、危害の恐れによる危険や心配といった情動的反応である。

 そこで、環境要因視点から見た犯罪不安についての既存研究を調査した。

樋村(2000)によると、昼間と夜の不安・安心の判断要素は図21のようになると示している。

図2 不安の判断材料

松井俊成(2003)によると、照度が高い方が、犯罪不安箇所は減少するということが示されている。


 次に、犯罪不安は地域によって変化があるのかということを既存研究から導き出そうと考えた。まず、地域の差を考える上で人口密度に着目し人口密度と犯罪不安の関連性の調査を行った。

しかし、人口密度と、犯罪不安の関係について直接言及した既存研究は認められなかった。そのため、人口密度と犯罪発生件数、犯罪発生件数と犯罪不安の関係についてのべた 既存研究を調査した。

小俣謙二(1998)によると、人口密度は犯罪総数や強盗・窃盗とは正の相関があると示されている。

齊藤裕美(1991)によると犯罪発生件数は犯罪不安感に影響を及ぼすと示している。

 以上の2点から人口密度と犯罪不安には関係があるのではないかと考えたが、この2つの相関関係は棄却される可能性があったため、調査の内容には採用しなかった。

 

犯罪不安と明るさの関係

次に、犯罪不安と明るさの関係について調査した。日本防犯設備協会によると、水平面照度が3ルクス,鉛直面照度が0.5ルクスの明るさがあれば不安感を与えないとされている。

 

以上の既存研究をもとに、夜間の犯罪不安を減らすためには、暗さを改善し最低限の平均照度を保つことが有効であると考えた。