5.提案
インタビュー結果から得られたように
木々の伐採を負担と感じている住民が多かった。
これから先も自治会が維持管理を継続していく上で
木々の伐採を含め住民の負担を軽減していく必要がある。
では、どのように伐採をしていけばいいのだろうか。
まず住民が維持管理していく為に人の背の高さ以上の高木を
減らすことを挙げる。
本調査の塚本園芸へのヒアリングから得られた回答を考慮に入れると、
住民が手入れできる背の高さ(およそ1m50cm)以上の木は
減らしていくのが妥当だと考えられる。
背の高さ以下の木は国有財産の木もあるので、
容易に減らしていくことはできない。
維持管理の困難さを考慮すれば、
関東財務局がその高木を自治会が剪定・伐採することを
認めさせやすいだろう。
高木を伐採することで得られるメリットとして、
維持管理が容易になり住民の管理しやすい状態になること、
業者に残った高木の剪定を依頼する際にかかる
コストの削減が挙げられる。
維持管理に関しては高木を含め、
住民・自治会が手入れを行っていくわけではない。
これまで通り、高木や住民が切ってしまっては
枯れてしまうような維持管理の困難な樹木に関しては
業者への委託で剪定する。
委託業務に関しては年二回の剪定が財政的には妥当である。
竹園第3自治区の場合では約160万円の予算で
約100万円が植栽の維持管理に当てられており、
3分の2近い自治費を支払っていることになる。
このことから剪定の回数を今以上に増やすのは困難であるが、
芝刈等、比較的住民でも容易な作業については住民自身で行う。
この効果は従来業者に委託していた芝刈の費用を
軽減できることにある。
また、高木を剪定することによって
見通しがよくなることも考えられる。
木々が繁茂しすぎているおかげで
日光が当たりにくい場所が数カ所見受けられ、
住民アンケートでも不満が寄せられた。
公務員宿舎全体が薄暗く、見通しが利きにくかったのは
このような要因が影響しているものと思われる。
不審者にとっては見通しの悪い場所は
隠れやすい絶好の場所になる。
こうした問題も、木々を適正量に減少させることで
解決すると考えられる。
5-2-2.定期的な手入れの見直し(自治会)
『植栽整備の行き届いていないところを無くす』を目標に
自治会が中心となって主体的に植栽管理を行うことを提案する。
竹園地区の剪定を担当している園芸業者からのヒアリングの結果から、
高木の手入れは住民では難しいということがわかった。
そのため、草刈り(宿舎共用部分、空き家)、落ち葉等を月に1回の頻度で行う。
そうすることによって、今まで年2回という作業頻度を月1回に増やすことになるが、
1回あたりの作業負担を軽くすることによって、
住民の活動を持続的に続けることができると考える。
また、何らかの理由で参加できない人や、幼児のいる家庭、単身者など、
自治会に参加していない人に関しては1回あたり千円を支払ってもらう。
千円は公務員宿舎に住む住民を対象にしたアンケートから。
現在、自治会の植栽管理においては各世帯、毎月1,200〜3,500円程度の共益費で
年3回程度の伐採・剪定を行っています。自治会によって異なりますが、
自治会費の約7〜8割は植栽の管理費に投じられています。
今後、業者による剪定の回数を増やすとしたら月にどれくらいの金額を上乗せして
共益費を支払ってもよいとお考えですか。
以下の選択肢の中から妥当だと考えるものに○をつけてください。
このように頻度を増やすことにより、
業者には今まで草刈りまで委託していた作業が
高木のみの手入れとなり、費用が削減できる。
また住民が主体となり草刈・落葉清掃の作業を実施することで、
宿舎についての関心や問題意識が高まる。
更に、住民のコミュニケーションの場が増え、
宿舎でのよりよい居住環境を提供できるのではないだろうか。
B管理主体の明確化
管理の確認として治会の責任で行うものと明確に定めた上で
各自治会で整備計画を立てて実施する。
例えば、落ち葉が市との管理境界になっているブロックを隠しており
管理の主体が曖昧になっている部分がある。
境界ブロックを色づけしてわかりやすくする等によって管理主体を明確化させる。
空き家の管理についてはその地区の自治会の共有地として管理する。
宿舎敷地内の樹木の伐採については、削減について
財政・環境・安全の面から条件を設定し、
自治会の要求がそれに沿うようであれば、所有者の承認の元に実施する。
5-2.住民による植栽管理
植栽管理の手入れに差があることで、宿舎の景観に
まとまりが欠いていることを抑えるために、戸建て住宅の庭についての提案。
C個人敷地の植栽整備の強化
個人の敷地にも最低限の手入れの基準を設けていく。
手入れの最低限の基準として、草が繁茂しすぎている状態は
安全・防犯の面からも基準以下とする。
このように草刈りを主に行っていくが、各自治会で草刈り機を共同で
導入し、入居者が使えるよう貸し出しを行うなどの補助をしていく。
更に、基準を下回るような敷地があった場合、注意・勧告など呼びかけを行っていく。
各戸の花壇については自治会単位でコンクールなどを行い、
入賞した人(グループなど)は「宿舎だより」に掲載して
個人の宿舎の景観についての意識を高めたり、
自治会のコミュニケーションの活性化の一翼となっていく。
5-3.植栽管理の管理分担の見直し
本調査のヒアリングからわかったように
関東財務局や住宅管理協会は植栽管理に関しては
一切手を出していない。
住民はそれを理解しておらず、
植栽管理もすべてやってもらえるものだと思っている。
しかし、実状として財政や生命維持の観点から言えば
財務局・住宅管理協会は建物の修繕や水道管の整備など
居住生活を営む上で必要な整備を整えていくことを優先する必要があり
予算的にも限界があって植栽に手を出すのは困難である。
こういった事実を踏まえて、植栽管理が今後すべて住民に任せられることを
自治会の回覧板などを通して住民に広く知ってもらうことが必要である。
要望をいくら出しても直してくれないという不満も、本来は住民が
やってもいいものなのだという認識が生まれれば解消されると考えられる。
さて、公務員宿舎内の植栽管理すべて住民にまかされているが
市の管理する公園通り(ペデストリアン・デッキ)はこれからも市が管理していく。
市の所有するところと住民の管理するところで景観が変わると、
一元的な管理を目指し植栽の管理体制や
分担を見直してきたことが無駄になってしまう。
そこで、市役所の道路課(公園通りの管理)や
市民活動課(住民によるまちづくりなどの支援)と
月に一回のミーティングをすることを提案する。
このミーティングに参加するのは市役所の職員と
各自治会の緑地担当の委員である。公務員宿舎を貫く公園通りと
これまで連携を取り合っていなかった自治会同士の景観を
こうしたミーティングを通して統一していくことができる。
また、住民が植栽管理をするといっても全く専門的な知識がなく
困ることも市役所からのアドバイスで解決できることが増えるかもしれない。
また、自治会同士の連携の効果として害虫駆除など一斉に行うことが必要になる作業の
連絡を取ることが容易になることが挙げられる。
発生するその時期に全部の箇所で行わないと意味がなく、
駆除剤によって追い出された害虫はまだ薬のまかれていない
ほかの自治区に移動していくのでは根本から解決することはできないからだ。