既往研究
社会的ジレンマ研究の中では構造的方略のみでは社会的ジレンマを解消できないことが知られており
(藤井(2002))、人々の道徳意識に働きかけ、自発的な協力活動を誘発する方略(心理的方略)も
迷惑駐輪対策として有効なものとなり得る。
しかし迷惑駐輪対策として心理的方略に着目した研究は多くはない。
藤井他(2002)は、京都大学の学生99名を対象に心理的方略の有効性に関する実験を行った。
これは、迷惑駐輪に関するチラシを熟読してもらい、その前後のアンケート結果を比較する、
というものだった。その結果、コミュニケーションによって自転車放置行為を13〜26%減少できることを確認した。
また、山下他(2004)は、違法駐輪問題に対する意識調査を行い、違法駐輪行為抑制のためにはマナー意識と
ルールの遵守の心を持たせることが重要であるとした。
椿(2002)では、心理的要因の効果を構造的方略と比較することで心理的方略の有効性を示した。
続いて東京都の千川駅の事例を挙げる。東京都地下鉄千川駅周辺の駐輪事情としては
「駐輪場が駅の周りに四箇所もあり、なおかつ空きも十分ある。また駅から近いにもかかわらず、利用状況が低い。」ということであった。
そこで「駐輪料金が安い」、「駐輪場が駅から近い」ということに焦点を当て、
駐輪場所を示したマップを載せた動機付けリーフレットを配布した。
その結果、放置駐輪台数は動機付けリーフレット配布終了後には21%減少(557→438台)し、
動機付けリーフレット配布終了四週間後にも18%減少し、違法駐輪台数減少の傾向は持続した(557→454台)。
特に駅から一番遠い駐輪場に関しては利用状況が34.5%から49.3%に上昇するなど目立った効果が得られた。
これによって心理的方略を行うことによって改善傾向が見られることがわかる。