学外での駐輪対策に関する調査
私たちは迷惑駐輪の実態を実際に自分たちの目で確かめてくるために、
都庁に迷惑駐輪の実態をヒアリングに行き、東京都の千川駅、大塚駅、池袋駅を訪れた。
東京都庁へのヒアリング調査
私達は東京都庁に行き、東京都青少年・治安対策本部総合対策部副参事(渋滞対策担当)の
池田匡隆氏に都の駐輪問題に対する取り組み状況等を詳しくお聞きした。
以下に池田氏に質問した問題と、その回答を記す。
■構造的方略、心理的方略に関係する質問
@ 迷惑駐輪に対する構造的方略の具体例を教えてください。
→(コスト、成果、問題点、一番効果があったのは何ですか?)
構造的方略の具体例
1)駐輪場の設置(当然の策。)
2)放置自転車区域を制定する。(都の条例として撤去が可能になった。)
迷惑駐輪対策は区・市区町村が対策をするものであり、
そこで「自転車法」(正式名称「自転車の安全利用の促進
及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」)が大切になってくる。
コストについては事業費一覧を用いて説明した。
・成果、一番効果があったものは?
葛西臨海公園を例に挙げる。この地域では放置自転車区域を定め、撤去を徹底した。
これを行うになあたって、その地域では民間業者に委託、出来高性の金銭的インセンティブを与えていた。
簡単に言うと、駐輪場利用状況、改善率などにおいて一定のレベルを決めて民間業者にムチ打つ形である。
しかし、この業者がいなくなってしまうとまた元のように迷惑駐輪が増えるのではないだろうかという懸念もある。
江戸川区はこのような方法で撤去を進めているため違法駐輪は激減したが、他区と比較しても費用が高くなっている。
他の地域で曜日制の撤去をすると、撤去を行う日、行わない日で迷惑駐輪の数の差が激しい現状がある。
理想は自発的にきちんと駐輪するのが望ましいのだが、撤去等の構造的方略を行うだけでは難しい問題である。
A 今まで手をかけた対象地域において構造的方略
(移動撤去、罰金、車両にシールを張る、タイヤの空気を抜くなど)について、
導入意図・導入の経緯、そして実際に実施することで分かったプラス面マイナス面等を教えてください。
都は直接関与していないのでよくわからないということであった。
そういった構造的方略等の実施は区・市区町村が進めることであり、
都はあくまでも「プロモーション活動」などしか行っていない。
B 実際に行った心理的方略(コミュニケーション)について、導入意図・導入の経緯などを教えてください。
→(その心理的方略を行うことはどのような意図があるのかも合わせて教えていただきたいです。)
業者に委託をして撤去を推進してもらえば迷惑駐輪はなくなるだろう。
しかしそのようなシステムのために、業者が改善率向上を狙い
少しの時間駐輪しただけですぐ撤去を行うようなことも起きてくる。
これはモラル的には正しいことなのか。
モラルの向上にはモビリティマネージメントが必要になるのではないだろうか。
それにやはり莫大なお金も費やされているので、出来るだけ費用を少なくすることが望ましい。
→そこでモラル・善意に働きかける実験的地域として千川駅で実験を行った。
C これからどういったアプローチをしていく予定がありますか?(特に心理面において。)
まず千川駅で行った調査の結果をまとめ、反省面を踏まえて来年の四月位にもう一度調査を行う。
やはり人の心に訴えかけていくのは時間が必要だと考えているので根気強く見ていくつもりである。
また、今回千川駅で行った調査、心理的方略についての取り組みなどは市区町村に伝達する。
D 構造的方略と心理的方略どちらが有効だと考えていますか?(どちらを重視していますか?)
どちらかのみを重視するなどはあり得ない。両方とも同じくらい大切なことである。
心理的方略だけでは、千川の場合一割から二割程度の減少に留まった。
どちらかだけをやっていても0には決してならない。
今まで行ってきたような撤去を行うだけだとしても限度がある。
かといってモラルに過度の期待を寄せすぎてもいけない。
これからは構造的方略をより厳しく行いつつ、それに心理的方略を加えていくことが必須である。
■違法駐輪に関係する質問
E 迷惑駐輪が起こる最大の原因は何だと思いますか?
また迷惑駐輪の最大の問題点は何だとお考えですか?
原因としては「駐輪場が目的地からどれ程近いか」というところにある。
駅から駐輪場が遠いと、徒歩で目的地まで行くことと
自転車で行くことに差がなくなってしまい、自転車のメリットが失われてしまう。
千川の駐輪場を例にとっても駅に近くて駐輪料金が高い駐輪場を使う人が多く混雑している。
対して、他の駐車場と比べてもそこまで離れていないにもかかわらず料金が低い駐輪場は
駅から少し離れているだけで空いているという事実がある。
F 東京都の違法駐輪の現状や,これまでのキャンペーン概要はどのようなものがありますか?
迷惑駐輪・放置駐輪自転車の現状はデータ資料を参照してください。
まず行ったキャンペーンとしては「放置自転車クリーンキャンペーン」というものがある。
これは唯一JRや東京メトロなどの鉄道会社も参加しているキャンペーンで非常に大きなものである。
キャンペーンの概要としては、電車内、駅構内などにポスターなどを貼ってもらい、啓発を図っている。
G 市民(お店、会社etc)からの違法駐輪に関する意見、苦情等はありますか?
意見、苦情は多く存在する。
例としては放置自転車の撤去、駐輪場を設置してほしいといった意見をはじめ、
「対策費として、自転車購入時に加算するべきではないか」、
「ゴミ同然の放置自転車を撤去していない現実があり、まずそちらを撤去するなど公平な撤去をするべきではないか」、
「今後の対策、方針についてきちんと納得出来るように説明してほしい」など様々である。
H 財源との兼ね合いはどのように折り合いをつけていますか?
違法駐輪にかけることのできる費用が元から少ないので、
都は広報活動やキャンペーン等しか行うことが出来ない。
構造的方略等の具体策は市区町村に任せている。
I 交通事業者、鉄道事業者から税金を徴収して行う
「放置自転車等対策推進税条例」についてどう思われますか?
「放置自転車等対策推進税条例」は平成16年に案が通過し、
平成17年の実績から税率を決定し、平成18年から実施予定の筈であった。
これらの条例は総務省の許可が必要なもので今回の場合はその許可が下りたのだが、
他にも市区町村長の許可を得て、鉄道業者とも話し合わなければならない。
これは鉄道事業者からお金をもらうためにはやむ終えない措置であるが、
この話し合いによって自転車と電車の関係や、
鉄道事業者が駐輪問題に手を差し伸べる必要があるかなどの声が上がったため廃案に持ち込まれた。
千川駅周辺の駐輪状況把握調査
まず千川駅を訪れた。千川駅周辺は心理的方略によって駐輪状況が改善されてきている地域である。
千川駅周辺においての現状は「駐輪場が駅の周りに四箇所もあり、なおかつ空きも十分ある。また
駅から近いにもかかわらず、利用状況が低い。」ということである。
そこで千川駅周辺において、「駐輪料金が安い」、「駐輪場が駅から近い」ということに焦点を当て、
駐輪場所を示したマップを載せた動機付けリーフレットを配布した。
その結果、放置駐輪台数は動機付けリーフレット配布終了後には21%減少(557→438台)し、
動機付けリーフレット配布終了四週間後にも18%減少し、違法駐輪台数減少の傾向は持続した(557→454台)。
特に駅から一番遠い駐輪場に関しては利用状況が34.5%から49.3%に上昇するなど目立った効果が得られた。
これによって心理的方略を行うことによって改善傾向が見られることがわかる。
私たちが千川を訪れた際には迷惑駐輪が少ないという実感は湧かず、迷惑駐輪の現象さえも景色の一部分となっている。
上の写真のように本来放置駐輪指定区域明確化のために線が引いてある線の内側に、
その線の内側がまるで駐輪場を現しているかのように思えてしまうほど自然と迷惑駐輪がされていた。
加えて、4枚目の写真を見ても分かるように、その場所に駐輪をすると迷惑駐輪と見なされ撤去されると警告し、
撤去日であるにも関わらず平然と迷惑駐輪がなされていた。
池袋駅・大塚駅周辺の駐輪状況把握調査
続いて東京で迷惑駐輪が最も深刻である池袋駅と大塚駅周辺を訪れた。
(1) 池袋駅
池袋駅周辺では、自転車放置禁止の看板があるにもかかわらず、歩道の端に多くの自転車が停められていた。
駅の出入り口付近で特に違法駐輪が多くみられた。
道路の看板によると、区の政策として自転車の撤去が行われているようである。
しかし、この自転車放置状況から分かるとおり、実際には成果はあがっておらず、状況の改善はできていない。
(2) 大塚駅
大塚駅では右の写真のように駅前に広いスペースが存在している。
そこに三角ポール等で迷惑駐輪をさせないように構造的方略を講じていることが見て取れたが、
そこをあたかも駐輪スペースのように整然と駐輪されているのが見て取れる。
駅近くの歩道至る所にも迷惑駐輪がなされていて町行く人々が歩き辛そうだった。
自転車の停車のさせ方によっては人一人がやっと通ることの出来るスペースしか空いてないところもあり、
町の景観も非常に悪くなっていた。