実態調査
  文献調査にて、女性の社会進出、ライフスタイルの変化によりこれまで以上に保育需要が高まっていることが分かった。この背景を踏まえ、つくば市における保育ニーズの調査を行った。

  つくば市の統計データよりつくば市における待機児童の数は下図のようになる。

つくば市の待機児童数の推移
図3−1:つくば市の待機児童数の推移

  H15年〜16年において待機児童がかなり減少しているが、これは原因としてこの年付近で待機児童の定義が新しくなったこと、また保育所が新たに2園新設されたことが影響していると思われる。それを除いて考えればつくば市における待機児童の数は一貫して増加していることが分かる。特に、地区別の待機児童数をみると桜地区、谷田部地区という学園地区に待機児童が集中している。(図3−2)

つくば市の地区ごとの待機児童数
図3−2:つくば市の地区ごとの待機児童数


0〜5歳の人口分布
図3−3:0〜5歳の人口分布

  次に、学園地区と郊外地区に分けて保育所利用の状況を比較した。代表的なものとして、学園地区の吾妻保育所と周辺地区の沼田保育所を取り上げヒアリングを行った。まとめると表3−1のようになる。
表3−1:吾妻保育所と沼田保育所の比較
吾妻保育所と沼田保育所の比較


  調査の結果、桜地区・谷田部地区に待機児童が集中していることが分かった。また、勤務者や教職員、学生を支援するため大学内保育所ができること、保育需要の多い地区が大学周辺であることから、調査の対象を大学周辺地区とした。
  そして、筑波大学の学内保育所について、学内と学外の両方の保育需要を調べるため、ヒアリング調査とアンケート調査を行った。


  ヒアリング調査
5月8日 つくば市桜庁舎こども課
    保育所全般に関して
  • 現在、つくば市には23の公立保育所と11の私立保育園があり、約290人の保育士がいる
  • 希望者の審査については核家族で共働きのフルパートを最優先に入所させている. あとは、家族の状況に合わせて市が保育に欠ける子供かどうかを判断している
    待機児童に関して
  • 市のHPでも公開している通り約50人近くの待機児童がいる。この約50という数字は保育所利用希望者から実際に保育所に入所できた人の数を差し引いた数字で見かけ上の待機児童の数しか示すことができず、潜在的待機児童に関しては市でも把握できないらしい
    民営化に関して
  • HP上でも公開されている通りつくば市としては民営化を進める動きがあり、目標は公立と私立を1:1の割合にすること
  • 民営化する主な理由としては、コスト面、特に人件費の削減とサービス面を充実させることによる
  • 民営化の一環として認可保育所3園を近々開設予定(大穂に2つ、谷田部に1つ)
    その他
  • 保育をサポートするサービスとしてファミリーサポートセンターというサービスを社会福祉協議会に委託して行っている。内容としては、保育の支援の他に家族を支える色々なサービスを行っている


5月10日 吾妻保育所
    吾妻保育所に関して
  • 共働きの割合は現在112の家庭が利用しているのに対して104家庭が共働きであり定員の93%を占めている
  • 利用者からの特別保育への需要は年々高まっている
  • 一時保育に関しては現在行っておらず、今のところ利用者からの要望もない
    民営化に関して
  • 職員が全て替わってしまうということで、現場では民営化に関して保育所側からも利用者側からも懸念がある
    幼保一元化に関して
  • 市から出された調査検討報告書にかかれている程度を把握している程度で詳しいことに関しては知らないとのこと. つくばでの現場での認識は薄い模様


5月12日 沼田保育所
    沼田保育所に関して
  • ここ5年間利用者は減少傾向にある。学園周辺地区で特にその傾向が強い
  • 利用者から特別保育に関する要望は特になく、現在のサービスで満足している
    民営化に関して
  • 待機児童が多いところや、定員の充足率が高いところが民営化の対象となっているようである
    バスルートに関して
  • バスルートは現在1本で沼田保育所のエリア内でその年々の利用者に合わせてルートを決定している
    その他
  • 沼田保育所独自で行っていることとしては、保育所や幼稚園に入っていない園児がいる
  • 家庭を対象に7月から月1回の予定で交流保育を行っている
  • 桜庁舎1階にある『ケヤキ広場』と同じような施設をつくば駅の付近に建設する計画があるとのこと


5月20日 かるがもネット
  • つくば市における子育てネットワークの提供をおこなっている
  • こども課との連携もおこなっており、ケヤキ広場にも紙の媒体として地域の保育関連の団体などの紹介をおこなっている
  • 認可外保育所というのは個人でおこなうものまであるので線引きが難しい
  • 学内保育所の設立に関してはあまり関わっていない


5月24日 筑波大学女性懇話会

ゆりのき保育所概要
    現状と経緯
  • 開園日程…秋頃、学長に要望を提出. 今年の11月頃に開設. まずは、実行してから改善を行う予定である
  • 設置地区…病院に近い、遊び場が確保できるなどの理由から追越共用棟の旧食堂あとに入る予定である. まだ許可を得てはない. 面積、予算の問題から新設の可能性はなし
  • 利用者…大学教職員及び大学病院関係者. 現状では大学生の利用はできない. 働きながら通う大学院生の場合は利用可能である
      いつかは筑波大学という付加価値を利用して一般公開する可能性もある
  • 委託団体…大学病院側でいくつかの案が選択されている
  • 補助金…大学の福利厚生、市と県の補助金が必要、「21世紀職業財団助成金」と教職員からの寄付金
  • ニーズの把握の調査…病院内でのニーズは高かった
      大学内教職員には行っていない
      →労力に見合うアンケート回収率が得られないのではと考え調査を断念
  • これまでの遍歴…東京教育大学から、筑波に大学が移転するころから、話は持ち上がっていた.しかし、予算の関係上、不可能だった.1999年から、女性懇話会の人たちが保育所設立を訴えても設立されなかったが、今回、保育所を立ち上げることができたのは、「次世代育成の法案」ができたのと、世の中の動きがそういう流れになっているからである
  • 学生との交流…サークルのふれあいなど.しかし、安全性を考えることが必要である


5月26日 東京大学駒場地区保育所

東京大学駒場地区保育所概要
    現状と経緯
  • 元々大学教職員向け託児所として開設されたのだが、経済的負担の軽減などの問題から、2004年9月に東京都認証保育所となり一般向けにも解放されるようになった
  • 現在、利用者の比率は大学関係者と一般利用者が約1対1である
  • 学生が保育所内でアルバイトをしたり、心理学の研究に園児が協力したりと大学内保育所ならではの習慣がみられた


6月9日 筑波大学附属病院看護部長
    設立経緯
  • 現看護部長鈴木君江さんが病院内保育所の設立を目指す
     →出産後も働ける環境作りを(優秀な人材の確保のため)
  • 財政面で設置が厳しかったものの大学法人化に伴い財政面での自由が増える
  • 平成15年7月の次世代育成支援対策推進法(301人以上の法人は行動計画を作らないといけない)の公布
  • 上の二つを追い風に再度設立の願書を院長に提出
  • 院内に作る場所がないため大学の施設部に学内保育所の話を持ちかけ学内に作る事にした
  • 医学地区の病院関係者を中心にニーズ調査をおこなった
  • 大学側に要望書提出
    今後
  • 保育時間の延長は視野に入れている
  • 教職員のニーズ次第では第二保育所の設立もありえるのではないか
  • 現在は地域との兼ね合いから、当分は学内・病院内のみの受け入れ
  • 現段階では定員は、病院関係者:大学関係者=7:3程度になる予定


  つくば市役所、吾妻保育所、沼田保育所へのヒアリングから、つくば市全体の待機児童は増えているが、学園地区では子供が増加している一方で、周辺地区では減少していることが分かった。
  かるがもネットへのヒアリングでは、つくば市における子育てネットワークの提供について知ることができたが、筑波大学内保育所には関わっていないとのことだった。
  そのため、筑波大学内保育所に直接関わっている女性懇話会、鈴木君枝看護部長にヒアリングをし、大学附属病院が病院内保育所を造ろうとしたことから始まったという大学内保育所の経緯や、秋に向けた開設予定概要が分かった。また、過去に筑波大学附属病院内でのアンケート調査が行われ、その結果、大学内保育所の必要性があることが分かった。

  しかし、学内保育所についてのアンケート調査は地域住民、大学内の教職員には行っていないことと、大学内保育所の先進事例である東京駒場の認証保育所のヒアリングで地域住民と教職員にも需要があるのではないかという予想から、私たちはそれらを対象にアンケート調査を行うことにした。そして、そのアンケート調査の結果を元に大学内保育所に関する評価を行うことにした。