4−3.つくばちびっ子博士
◎つくばちびっ子博士とは◎
web調査により「つくばちびっ子博士」について調べた。
「つくばちびっ子博士」は全国の小中学生を対象として、
パスポートに訪問した研究施設のスタンプを集めていくラリー形式で行われる。
スタンプを3つ以上集めてつくば市教育委員会に提出すると、
つくば市から「つくばちびっ子博士」に認定される。
パスポートはつくば市教育委員会が市内の全小中学校に配布する他、
関鉄バス待合室、エキスポセンター、インフォメーションセンターの3ヶ所に置かれ、
パスポートをもらえない市外の小中学生も
そこでパスポートを受け取ることにより参加することができる。
各施設は期間中の数日に体験教室、
パネル展示などにより研究内容を子供向けにやさしく説明している。(表)
昨年は7月17日から10月10日の期間に
39ヶ所の研究所等の施設が受け入れに協力して開催し、述べ14244人の参加があった。
◎つくばちびっ子博士への参加状況◎
平成16年度のパスポート提出者は、つくば市内から1023人、
つくば市外から91人、茨城県外からも23人となっている。
スタンプ件数はつくば市内が14424件、つくば市外が1841件、
茨城県外が565件となっており、
つくば市外や茨城県外からも数は少ないが参加者がみられる。
また、参加者の学年は、
小学校3年生と四年生が合わせて47%とおよそ半数を占めており、
中学生の参加者は4%と少ない。小学生が主な参加者となっている。(下図)

図4-3-1:パスポート提出者学年別割合
図4-3-2:研究施設別来訪者数
図4-3-3:市町村別パスポート提出者数
平成16年度の研究所等の施設への来訪者数については、
つくばエキスポセンターに1799人、国土地理院に1012人、
地質標本館に994人が来訪者数の多い上位3つの施設だが、
これらは大きい常設展を開いている科学館のような施設であり、
他の研究所等の施設にも来訪者数は分布している。(図4-3-2)
茨城県内の市ごとのパスポート提出者数は
つくば市が1023人の他、土浦市では53人、
取手市では7人、水海道市で4人の他、人数は少ないが、
つくば市を中心に周囲の市町村からも小中学生が参加している。(図4-3-3)
小学校別の参加者数は、小学生数が多く研究所も集積している
中心部の小学生はパスポート提出者も多い。
しかし、小学生が少なく研究所も少ない郊外部をみてみても、
小学生数に対するパスポート提出者数の割合はほとんど差が無く、
つくば市全域にちびっ子博士が存在しているといえる。(下図)

図4-3-4:小学校別パスポート提出割合
◎科学出前レクチャーにおける現状把握◎
つくば市教育委員会が主催する
科学教育3事業の一つである
つくば科学出前レクチャーの概要を述べる。
つくば科学出前レクチャーとは、
つくば市内の研究者が、市内の小・中学校、高校へ出張して講義を行い、
普段の学校生活では体験することのできない、
より専門的なことを学習する特別授業の制度である。
国立環境研究所「呼吸ってなんだろう」、
森林総合研究所「樹木と環境について」などがある。
研究者は出前レクチャーボランティアに登録することとなっており、
現在約150名が登録している状況である。
しかし実際活動しているメンバーは約10名ほどであり、
ボランティアを有効に利用できている状況とは言いがたい。
また出前レクチャーを導入している市内の学校も
小中学校合わせて5〜6校にとどまっている。
文部科学省のゆとり教育の見直しによる総合的な学習の時間の減少、
各学校が科学学習よりも英語などの国際的な学習に力を入れている
という状況から学校で、
科学出前レクチャーを導入するための負担が、
教育現場の先生等に大きいという理由が挙げられる。
(つくば市教育委員会へのヒアリング調査より)
上記で述べた理由などから「出前レクチャー」が減少し、
それに代わって子供の科学分野の学習として
「ちびっ子博士」の需要がのびてきている。(図4-3-5)
研究所側からちびっ子博士を見てみたとき、
(図4-3-5)からも研究所が一般公開において
小中学生を主なターゲットとしており、
「つくばちびっ子博士」が研究所のターゲットと合致していることがわかる。

図4-3-5:ちびっ子博士・出前レクチャー参加者数推移
◎つくばちびっ子博士の魅力◎
現在文部科学省が体験型科学学習を進めている。
科学技術政策研究所がそれを科学館学習に置き換えて調査した結果が
(図4-3-6)の「科学館学習の前後で、理科に関して肯定的な意識をもつ児童の割合」
である。ここで科学館学習とは科学館において
科学についての実験や体験をするものである。
図4の通り、「理科が好き」「実験や観察が好き」
「理科の勉強はおもしろい」などの項目で科学館学習の前に比べて
科学館学習の後では理科に関して肯定的な意識をもつ児童の割合が
大きく増加している。
(図4-3-6)の対象地である出雲市では
年に一回の科学館学習が行われている。
つくば市において「ちびっ子博士」がこれに当てはまる。
「ちびっ子博士」は、
子どもたちに100日間で
39ヶ所も訪れる場所を与えている。
出雲市における科学館学習とちびっ子博士の内容を比べてみても、
「流れる水のはたらきの実験」という実験を出雲科学館で行っているが、
つくばちびっ子博士では
土木研究所が河川の模型を実際に流し、
触らせる体験を行っている。
出雲科学館の
「植物の世界」という植物についての実験に対しては
農業生物資源研究所ではDNAをみせる実験を行っている。
ここからも、
ちびっ子博士は科学館学習と同様の効果を
期待できると考えられる。

図4-3-6:科学館学習(体験型科学学習)の効果