湧水利用



<経緯>

第二回サンプリングの結果から、上郷地区の住民が行っていたものを参考にした。上郷地区では、栃木県塩谷町にある尚仁沢湧水へ、1.5カ月に一回の割合で4〜5家族が協力し、水を汲みに行っていた。尚仁沢湧水は一日の湧出量日本一であり、様々なガイドブックにも掲載されている。また、湧水を汲むため水汲み場も整備されており、水汲み環境としては高水準であるといえる。しかしながら、上郷・小白硲の両地区から片道約120Kmもの距離があり、多くの住民が気軽に水を汲みにいけるとは言いがたい。そこで、つくば市周辺においても、湧水を汲むことができる場所はないかと考えた。


<定義>

この提案では、3〜4軒の家庭が協力して水を汲みに行く。輸送手段としては、上郷・小白硲両地区で一般的に見られる軽トラックを用いる。給水をしに行く要員は各家庭の持ち回りの当番とし、1回の給水で2名ほどが必要になると考えられる。水は20Lのポリタンクに詰めて持ち帰るものとする。


<長所>
・水自体にコストがかからない。
・上水道よりも井戸水に近い水を得られる。

<短所>
・水質が一定でない。
・上水道よりも井戸水に近い水を得られる。


<考察>

つくば市周辺にある湧水を探したところ、紫賓水・金命水・銀命水の三つがあることが分かった。これらの湧水について説明する。

○紫賓水 場所…茨城県新治郡八郷町十三塚

石で放水口が作られていた。車一台分の駐車スペースがある。細い山道の途中にあり、あまりアクセスは良くない。水量はほどほどにあった。

○金命水・銀命水 場所…茨城県新治郡千代田町上佐谷

銀命水の方が1Km程、山頂側にある。金命水はホースで水を引き、汲みやすいようにしてあった。銀命水もパイプで水を引いていた。金命水は3人が汲みにきていた。話を聞いたところ、「銀命水は一部地表を流れるのであまりきれいではない。」「金命水はあまり水量がなく、一時時期はほとんど水が出なかった。」ということだった。

次に、この提案がどの程度実現できるかを考えるためにコストを計算する。このときに以下を仮定する。


1、4週間に一度、給水することとする。
2、給水に使う軽トラックには、20Lポリタンクが24個載るものとする。
3、人は一日に2Lの水を飲む。

この仮定を元にコストを計算した。計算式及びそれに関わる数値などは付録を参照していただきたい。

計算結果はこのようになった。

1回の給水における1家族あたりのコスト(円)
上郷地区 小白硲地区
紫賓水 3800 4300
金命水 4500 5100
銀命水 3300 3800
尚仁沢 11600 13300


最も安価に水を手に入れられる場所は銀命水となった。これは距離が近いこと、水量が豊富で、給水にかかる時間が短く時間的コストがかからなかったことが要因と考えられる。しかし、実際に水を汲みに着ていた人の話から、銀命水はあまり水質が良くないのではとの疑問が残こった。上郷地区で実際に汲みに行っている人たちがいた尚仁沢のコストは、やはり距離的に大きな差があるので、他の場所の2〜4倍のコストがかかる計算になった。

コストの計算では銀命水が最も安くなったが、その水質に保証はない。そこで銀命水を含め、金命水・紫賓水の三つの湧水について水質検査を行った。尚仁沢については水サンプルを手に入れることが出来なかったため検査できなかったが、公設の公園も整備されており、ある程度の水質の保証はできると考えた。詳細については付録の水質検査成績書を参照してほしい。まず、すべての湧水で“一般細菌”と“大腸菌群”が基準値を上回っていた。加えて、銀命水では“色度”・“濁度”が基準値を上回り、紫賓水においては“色度”・“濁度”、さらには“有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)”の項目が基準値を上回っていた。

この結果から、湧水の水質にはいくつかの問題があることが分かった。しかし、金命水に関しては、煮沸処理を行えば飲めることも分かった。今回のコストの試算では煮沸処理をした場合を想定していないので、考慮が必要であると考えられる。