2.背景



つくば市は学園都市として計画的に建設された街であるため、学園都市内に限れば上下水道の普及率は当初から非常に高い。しかし一方、その外部の農村部、特につくば市西側にはほとんど普及しておらず、今なお井戸水で飲料水を含む生活用水をまかなっている。

また、現在のつくば市や土浦市、そしてその周辺の町一帯は農業と畜産業(特に養豚業)で成り立ってきた。1970年代になるとこれらの第1次産業は効率的に生産量を増やすことが求められるようになる。農業においては化学肥料普及の時期であり、やがて必要量以上の施肥が行われるようになる。一方畜産業においても生産コスト削減のため家畜の排泄物を処理するところまで手が回らなくなる。これはその頃から問題視されるようになった第2次産業による環境の有害物質汚染に比べれば、はるかに環境負荷は少ないだろうという生産者側の考え方も原因のひとつとして考えられる。

こうした産業上の背景から、つくば市近辺の地下水は、蓄積した肥料や家畜の排泄物などの有機物が分解されて生成した硝酸性窒素、亜硝酸性窒素による汚染が指摘されるようになった。加えて、この地域の住民は今なお井戸水に頼らざるを得ない状況のため、硝酸性窒素を多く含んだ水を体内に摂取している危険性が非常に高い。土壌の中にあるこれらの有機物は長い年月をかけて広範囲に渡り蓄積したため、取り除く技術はなく、また上水道が敷設されていない地域でのことなので、先に述べた千葉県の例のように早期に給水源を上水道に切り替えることも難しい。