自治組織の提案



<春日4丁目の現状>

春日4丁目自治会
             |  発足:平成元年11月
             |構成員:狭い範囲に住む23世帯(一戸建て)
             ↓
環境クラブ

任意加入の自治組織の提案



<はじめに>
 現在の春日4丁目自治会の活動には上にも書いたように学生は一切参加していない。しかし、春日4丁目には、一般の方たちは少ししか住んでおらず、学生が非常に多く住んでいる。また自分の住む地域の環境が良くなってほしいというのは一般の方にも学生にも共通した意見であろう。そこで学生も一般の方たちと一緒に活動を行ったほうがいいのではないかと考えた。そこで学生に活動への参加の呼びかけを行ってみる。アンケートの結果から見てもわかるようにこういう活動に興味を持ち、その活動に参加しても良いと考えている学生は多くいることがわかっている。しかし現状ではそういった学生が活躍する場が存在するということがあまり知られていない。そこで、呼びかけを行うことによって学生を集め、ゴミ集積所の整備や路上駐車など(他にもいろいろ考えられる)の問題解決のために一般の方も学生も一緒になって活動をしていけばどうかと考える。
ここではその活動形態として、すぐに活動を始めることができるという利点のあるサークルのような「任意加入の自治組織」を提案する。具体的には下に示す。尚、この提案は筑波大学環境サークル:エコレンジャーと早稲田大学環境サークル:環境ロドリゲスへのヒアリングと自治会についてのアンケートを参考にしている。
 

<具体案>

◎中心となる構成員
生活環境班のメンバーが構成員となり、自分たちの周りで環境に興味がありこの活動に参加してくれる学生を集める。またエコレンジャーに活動内容を説明して協力してもらう。

◎自治組織の継続の問題
  《学生街であることによる問題》
学生のほとんどが3,4年しかその地域に住まないので、地元のように愛着を持つことがない。そのため自分の住む環境に不満を持つ人は多くいるが、自分で働いてまで環境を良くしようとする人はほとんどいない。活動に参加してくれる構成員を集めるのも非常に大変であるし、集まった構成員も何年か後には春日4丁目を出て行ってしまう。

学生が中心となって自治組織を継続していくのが難しい。(環境クラブのように何年か後には学生の構成員が一人もいなくなるということも考えられる。)
ゴミ拾いや地域でのイベントなどの活動に参加してくれた人に自治会に入るように勧誘したり、4月に春日4丁目に引っ越してきた人を対象に新歓のようなものを開いたりと、サークルの勧誘活動のような形をとって、毎年毎年構成員が減っていくことがないようにする。

◎ 活動内容
  構成員が中心となって春日4丁目の清掃活動やごみ集積所の整備、路上駐車の取り締まりなどを行う。他にも、地域住民へのアンケートを行いそこに多く書かれていた問題などに対しても積極的に解決へ向けた活動を行う。
学生同士または学生と一般の方たちとコミュニケーションをとるための場として、春       日4丁目の住民を集めてのゴミ拾い、廃品回収、地域でのイベントなどの企画を考えて実施する。

◎ 活動資金
  イベントを行うための資金に関しては廃品回収や、大学を卒業してつくばから出て行く人のいらないものをいただきリサイクルして新入生や引っ越してきた学生に安く売ることによってお金を集める。活動が活発になり企業や行政、大学から信頼が得られれば、そこからの資金援助も望める。
このように企業などとうまく連携が取れればさらに自分達のやりたい活動ができるようになる。

◎参加の呼びかけ
地域住民を集めての企画を多くの人に知ってもらえるように掲示板をもっと人目につくような場所に配置したり(現在も掲示板は存在するがほとんどの学生はその存在を知らない)、コンビニや学生の集まる弁当屋などにポスターを貼ってもらい多くの学生に参加を呼びかける。
ゴミ拾い、廃品回収の活動に参加してくれた人には、アンケートの結果で昼御飯が出ればこれらの活動に参加したいという意見が多くあった。そこで地域の弁当屋などの店に協力してもらい弁当などの割引券を渡す。協力してもらうために掲示板やポスターに弁当屋の広告を載せる。また活動に参加してくれた学生への割引券は、それを使って弁当を買っても弁当屋に利益が出るようなものにする(例えば、5枚つづりの100円引きの券)。また弁当屋としてはこれがきっかけで常連となる客が増えるということも期待できる。こうすることによって参加者と弁当屋の両者に利益がでることになり、両者の協力が得やすくなる。

そしてこの活動を通して学生同士、学生と一般の方たちでコミュニケーションをとることによって、決められた日以外にゴミを出すことや、路上駐車などの環境負荷行動をすることができないような雰囲気作りを地域全体で行う。
 

<長所>
長所としては行動が起こしやすいというところである。少ない人数でも上のような活動をやりたいという人が集まればすぐに実行に移すことができる。

<短所>
  短所としては活動の規模が小さくなってしまうということである。清掃活動や路上駐車の取り締まりなどの活動は構成員だけで春日4丁目の全域を見て回るということは難しい。現在、環境クラブも人数が少ないので自分たちの家の周りの清掃活動を行うのに精一杯の状態である。

<まとめ>
  このように自治組織の提案として任意加入の組織を考えてみた。学生街であるための継続の問題、活動が軌道に乗るまでのお金の問題など実現するには難しい問題が残っている。しかし小規模であってもとにかく行動を起こすことは出来る。そして構成員の努力、地域の方々の協力によりこの自治組織がしっかり機能し始めれば活動の規模も大きくなっていく。それによって現在のように学生同士、または学生と一般の方とが全く関わりなく暮らすような異常な地域ではなく、お互いにコミュニケーションを活発にとるような活気のある地域となる。それによってお互いに助け合い、また注意し合えるような環境ができて、路上駐車やゴミの問題などのような環境負荷の軽減につながっていくのではないかと考える。
 

 

             
図2‐3‐8 任意加入の自治組織
 
 
 
 
 

全員加入の自治組織の提案

<はじめに>

  私達は、環境家計簿をつけることにより環境負荷の軽減が実現されると予想していた。しかし、私達が行った調査においては予想した結果が表れなかった。そこで、自治組織の成立こそ環境負荷の軽減に結びつくのではないかと考えた。
この「自治組織」という概念が私達とリンクしたのは先に行ったヒアリング調査時である。不動産業者、ゴミ収集業者、警察署へのヒアリングのなかでそれぞれが、自治組織の成立を環境負荷の軽減に有効なものとして考えていることがわかった。そこで私達もこの「自治組織」を環境負荷の軽減にに有効なものとして提案したいと考えた。しかしここで、自治組織の成立が実際に環境負荷の軽減に結びつくのかどうか、さらにはどのような形態なら成立可能であるかといった問題が浮上してくる。前者は、実際の自治組織へのヒアリング調査によって解決された。後者は、アンケート調査により解決された。ここではそのことに関わり、「全員加入の自治組織」を提案する。
 
<具体案>
  先に行った学生150人を対象としたアンケートにおいて、全員加入の場合の活動参加形態を調査したところ無償と答えた人が35%であるのに対し、有償と答えた人が40%であった。残りの25%は無参加と答えた人である。(図  参照)つまり、有償の形態をとった場合4分の3の人を集めることができるということなのだ。ここで有償の形態をとるためには必然的に、自治組織へ入ってくるお金が存在しなければならない。しかし自治組織以外からお金が入ってくることは、実現可能性がきわめて低い。そこで必然的に自治組織加入者からの集金が必要となる。よって全自治組織加入者からの集金し、そこから諸費用をひいたものを活動参加者に分配という形になる。アンケートにおいて月の活動回数について尋ねたところ過半数が月一回と答えている。これは、過半数の人が月一回しか活動に参加しないことを表している。よってこれからは一人が最高月一回活動に参加するものとして話を進める。ここで、自治組織の活動が月X(回)、月の活動参加者数がY(人)、諸費用がf(Y)(円)、集金額の合計をZ(円)とすると、一人あたりの報酬S(円)は次の式で表される。

 上の式からもわかるように報酬は月の活動回数によらない。よって全員加入の自治組において月の活動回数は無視してもよいといえる。

ここで実際に春日四丁目住民約1800人のうち50%にあたる900人が月一回の活動に参加した場合を考えてみる。ここでアンケートでは75%が有償ならば参加すると答えているが、日程に都合がつかないなどの諸事情を考慮して妥当と思われる50%という数字を選択した。アンケートにおいて環境改善のためにいくらなら出費可能か尋ねたところ、一人平均月に328円であった。そこで、月会費が仮に328円であるとすると月運営資金が590400円になる(328*1800=590400)。ここで月にかかる諸費用がごみ袋代のみであると仮定すると諸費用は約1300円となる。ただしこれは40リットル50枚入りのつくば市指定ごみ袋約360円を使用し、5人で一つのごみ袋を共有した場合である()。ここで実際は、ごみ袋が180枚必要となるので実際は360円のものを4つ購入しなければならない。しかし余りは次回へ繰り越せるという考えのもと360円のものを3.6個購入するとした。残りを参加者に分配すると一人約654円となる( )。この数字はアンケートで調査した個人が望む報酬の平均563円を上回っている。ここで重要なのは月会費と報酬と参加者数との間に密接な関連があることである。このような形で自治組織を作る場合、参加者数がもっとも多くなるように月会費を定めなければならない。またこの分配形式をとることが環境負荷の改善に有効であるといえる。月会費を固定すると報酬は参加者の数によって決定さるが、参加者の数が少なければ少ないほど報酬が高くなる。この要因のために報酬を定額にする場合より住民の参加意欲が増大し、より多くの人が活動に参加すると予想されるからである。
ここで、どのようにして春日四丁目の全住民から月会費を集めるかを考えてみる。私達は、このことに先立ち不動産業者へのヒアリング調査を行っている。もし春日四丁目の環境負荷が軽減するのなら集金に協力してくれるという不動産業者が多数あった。このことにより不動産業者を介しての間接的集金が可能となる。つまり、家賃に自治組織の月会費を上乗せすることで、春日四丁目に住む全住民からの集金が可能となる。それと同時に全住民の自治組織への加入が実現する。ここで注意しなければならないのは強制的に家賃とともに集金することは法律上不可能であるということである。つまりアパート契約時に自治組織へ加入することの承諾を得ることが必要となる。

 
 
 

<長所>

長所は大きく三つあげられる。一つは先に述べたように、報酬が参加者の数に反比例することで参加者の活動への参加意欲が増大することである。二つ目は、自分達で清掃をすることでモラルが向上し、普段から環境負荷が少なくなるよう心がけて行動するようになることである。それにより地区レベルで環境負荷が軽減する。三つ目として、地区住民全体が加入することで大規模な活動を行なうことが可能となる。小人数では小規模な活動しか行なうことができずなかなか対処できない問題もある。例えば、小人数では地区全体を清掃するのに何回もの活動が必要となる。しかし、この問題は全員加入の自治組織が成立することで解決されると予想される。
 
<短所>
  ここであげる短所は全員加入の自治組織の成立に関わる最も大きな問題となる。それは、地区住民全員の加入を実現することが難しいという根本的問題である。先に述べたようにアパート契約時に加入の同意が必要となるが、そこでいかに加入しようとさせるインセンティブが働くかが重要である。
 
<まとめ>
全員加入の自治組織は次のような形式のものが環境負荷の軽減に有効であると考えられる。
・ 月会費は一定でありそれは不動産業者を介して家賃とともに集金される。
  但し、月会費は活動参加者数が最も多くなるように設定しなければならない。
・ 月の活動回数は何回でも良い。
・ 活動参加者には報酬があり、それは参加者数に反比例したものである。(月会費の合計額から諸費用を引いたものを参加者数で割ったものである。)
 
 先ほど述べたように全員加入の自治組織はいかに加入しようとさせるインセンティブが働くかが重要である。地区レベルで環境を考えるようにならなければ全員加入は実現しないであろう。たとえば何らかの組織が活動することで地区の環境が向上したという事実があったとしよう。その事実を知った住民の環境に対する考えは、向上すると予想される。そのようなことの積み重ねで住民の環境に対する考えが向上していけば全員加入の自治組織は実現する。そうなればその地区の環境負荷の軽減が大規模に実現するようになることは間違いないと考えられる。
 


 

図2‐3‐9 全員加入の自治組織