~歩けばわかる好きになる~

都市計画マスタープラン策定実習6班のページへようこそ! ここでは筑波大学理工学群社会工学類開設講義 「都市計画マスタープラン策定実習」 の成果物を掲載しています。
みんなも一緒にLet'sお散歩!

■概要

土浦市は、茨城県南部の中核都市であり、市の東は国内第二位の広さを誇る霞ヶ浦に、西は筑波山に臨んでいるのが特徴である。城下町であった江戸時代に道路や水路といった交通網が発展し、それに伴い産業も発展したことで、水戸に次ぐ第二の都市として繁栄してきた。現在でも、農業や工業といった産業が盛んである他、市内には城下町であった痕跡も残っている。明治維新後もその立ち位置が変わることはなかった。近年は、筑波研究学園都市の存在やつくばエクスプレスの開業により、つくば市にその地位を譲りつつある。

メンバー

TA:柳沢 直哉
班長:渡辺 雄太
副班長:藤原 真梨子
班員:堀口 健吾
班員:本江 遼亮
班員:野口 紗英子

■全体構想

土浦市全体の構想としては、まず市をいくつかの地区に分け、各地区に人の集まる複合的なにぎわい拠点を設けることで、市民の能動的な外出を促そうと考えている。  にぎわい拠点を中心とした市街地には快適な歩行者空間を整備し、「歩きたくなるまち」づくりを実施していく。  これと併せて、各市街地及び住宅地をバスなどの公共交通機関で結ぶことで、市民の自家用車による移動も減らしていく狙いがある。つまり、公共交通機関と徒歩のみで移動できるようなまちを目指す。

■健康ポイント「うらら」導入

ハード面からだけでなく、ソフト面からも市民の能動的な歩行を促していく。 歩いたり、スポーツ施設を利用したりすることによって貯まり、公共交通や公共施設で利用できる「うららポイント」を導入する。  類似した事例として、複数の市で採用されている健幸ポイントなどがあり、これらを参考に図にあるような仕組みで健康増進や公共交通・公共施設の利用促進を試みる。  100歩毎に1ポイント貯まり、1ポイントはそのまま1円分とするレートでの導入を検討している。 これらの運営は、公共交通・施設の事業者及びNPOと協力して行う。

■目標都市像

土浦市は超高齢社会に対応、且つ狭さく道路や渋滞といった交通諸問題の解決、そして市街地の活性化をする必要がある。これらを達成するためには、自家用車に頼らずに歩いて暮らせるまち、そして歩きたくなる魅力のあるまちをつくりだすことが適当であると考えた我々は、目標都市像として「歩いて外に出かけたくなるまちへ」をコンセプトに設定し、歩きやすい生活道路の整備と市内各地の魅力向上を主軸とした都市計画マスタープランを策定する方針を立てた。

■地区別構想

既存のマスタープランにおける地区区分を元に、土浦市を新治地区、北部地区、中央地区、南部地区の4つに区分けした。我々は、市民が歩くこと、つまり「散歩」を軸とし、それと各地区に合った分野とを結びつけることで、各にぎわい拠点を含む地区別の構想を提案する。  各地区に対応する分野は、新治地区については自然資源が豊富に存在することから、「自然」である。北部地区は、土浦協同病院の移転やおおつ野地区をはじめとした住宅地の存在から、「医療」及び「住環境」である。また、中央地区は、土浦市の中心であり、駅前の商店街や亀城公園のような歴史資源の存在から「商業」及び「歴史」である。最後に、南部地区は北部地区同様に住宅地の存在から「住環境」、そして通り魔事件が何度か発生したり、駅前の施設の窓ガラスが割られていたりするといった問題から「防犯」である。

■地区別現状 -新治地区-

新治地区は元々新治村であった地域であり、土浦市全体の約6%と、面積の割に人口はあまり多くはない。しかし、高齢化率は市内で最も高い28%となっており、顕著に高齢化していると言える。  新治地区の特徴として自然資源が豊富にあることが挙げられ、地区の約4分の3が自然的土地利用である。また、朝日峠展望公園のように、豊かな自然を生かした観光地もある。  しかし、新治地区には大きな問題点がある。それは国道125号沿いを除いて公共交通機関が通っていないことである。  かつて試験的に地区内を巡回するバスが運行されたものの、需要が予想を大きく下回ったために打ち切られてしまったのだ。  その後は、主に自家用車を持たない高齢者を対象としたのりあいタクシー土浦と呼ばれる会員制のタクシーにその役割を譲ったが、依然として観光客の利用する交通機関はない。

■地区別提案 -新治地区への提案-

新治地区を、その自然を生かした観光地としてより発展させるため、自然豊かなハイキングコースまで至る公共交通機関の整備と、ハイキングコースの終点となっている朝日峠展望公園の魅力向上計画を行う。  まず、公共交通機関については、新治バスの失敗や、のりあいタクシーの制限、既存のタクシー事業者との兼ね合いを踏まえ、デマンドバスの形での導入を検討している。こちらは完全予約制とし、乗車1時間前までに電話予約の必要があるものとする。また、乗降ポイントを土浦駅や小町の館などの決まった位置のみに設定する。  次に、朝日峠展望公園については、キャンプ場を整備する。既存のハイキング客の増加に加え、キャンプを行う青少年団体のような新たな客層を得る狙いがある。宿泊用のロッジやテント広場、管理棟を兼ねたレストハウスといったもので構成され、レストハウスでは、キャンプ用の大荷物を持たなくともキャンプができるように各種用品の貸出や軽食販売も行う。キャンプ場の整備は市で行い、管理はNPOを指定管理者として委託する。  これら事業により、新治地区を気軽にハイキングやピクニック、キャンプを楽しめる観光拠点としていく。

■地区別現状 -北部地区-

北部地区は、霞ヶ浦の存在から水資源が豊かにあり、主にレンコンの生産が盛んである一方で、コカコーラや日立建機といった企業の工場が立地し、主に工業団地として発展してきた。他方で、2016年3月に土浦協同病院が移転し開院する予定であり、これを機に市は医療・福祉や研究に関する企業を誘致し、当地区をそういった分野の拠点とする考えも持っている。なお、病院の移転先であるおおつ野には新興住宅地があり、他地区よりも若年層の人口割合が多少高くなっている。今後重視されていくと考えられているこのおおつ野地区を中心に、既存の医療及び住環境の分野に「散歩」の要素を盛り込み、住まいと医療の健康まちづくりを目指す。  さて、おおつ野地区へと移転する土浦協同病院は、地域の再生・活性化と地域医療の拠点として病院が地域・コミュニティーの中心として機能するために、医療と地域社会が融合した「メディカル・エコタウン」(医療環境経済都市)の創世を目標としている。医療と街と自然環境との融合を図り、住民の健康と生命を守り、地域の再生、経済・産業の振興を目指すものである。アクセスはJR土浦駅と神立駅の両駅が便利である。土浦からは直通バスでは15分程度と予想されている。また神立駅に向けては新しい道路の建設が予定されている。 また、土浦ニュータウンおおつ野ヒルズは南に霞ヶ浦、西に筑波山を望む高台に位置し、周辺には豊かな緑が存在する。周辺には商業・業務施設を中核とした職住近接を目指す複合市街地である。この開発は、業務代行方式による組合区画整理事業として試行されている。さらに将来的には地域社会形成に寄付する施設の誘致も進めていて、環境と職・商・住が調和した21世紀型の街づくりに取り組んでいる。2015年8月1日現在637世帯・1948人の方々が住んでいる。

■地区別提案 -北部地区への提案-

ここで、おおつ野地区について二つの提案をする。  一つは、土浦協同病院と住宅地との間に設ける緑道公園 「おおつ野メディカルパーク」である。  これは、おおつ野ヒルズに住む子供連れの住民が気軽に遊べる空間であり、且つ土浦協同病院へ通院している人々のリフレッシュの場やリハビリの場となるような公園である。  更に、現在住んでいる若い世代が数十年後の将来まで住み続けたくなる、そして将来的なオールドタウン化を防ぐ持続的な空間をつくり出す一助とする。  緑道公園と表現したが、これは既におおつ野ヒルズ内にある公園とは異なり、人の通り道と公園が融合したものをイメージしている。足の不自由な人など、病院へやってくるあらゆる人が散歩しやすいような歩道の整備と、住宅地に住む子供たちが楽しめる遊具の設置も同時に行う。  図らずも住民はこの公園内を通るようになり、憩いの場としての公園の魅力を徐々に感じるようになり、最終的にはこの公園を目的地としても散歩するようになっていくことを狙いとしている。

■地区別現状 -中央地区-

中央地区では、主に土浦駅の西口側に中心市街地が形成され、都市の中枢として商店街や公共施設が立地しているが、駅前にある複合商業施設の核テナントであったイトーヨーカドーの閉店を筆頭に商業分野の衰退が著しい。中心市街地における商店数や販売額の合計は年々減少しており、所謂シャッター商店街化が進行している。この原因としては、やはり自動車の普及による郊外化が最も大きいと考えられ、イオンモール土浦やあみプレミアムアウトレットといった郊外型ショッピングモールの開業が追い討ちをかけているといった様相である。また、住民に聞き取りを行ったところ、やはり買い物には車を用いるという意見や、駅前の渋滞がひどいという意見が得られた他、古くから住む高齢者の方の中には、かつての水や木々が豊かであった街並みを懐かしむ声があった。

■地区別提案 -中央地区への提案-

市民の昔を懐かしむ声やかつての桜橋の風景画を足掛かりに、渋滞や事故といった交通問題のない、歩行者を中心とした活気ある商店街づくりを提案する。これを実現するために、以下の二つの施策を講じる。  一つ目は、「桜橋てくてくストリート」と題し、風景画に描かれていた頃のように、桜橋商店街から土浦駅西口までを、歩行者を中心とした空間「トランジットモール」とする計画である。  公共交通機関を除いた車両の通行を規制することで、駅西口前の交通渋滞を抑制しつつ、住民が各店舗を徒歩で巡りやすくする。また、亀城公園やアンテナショップとして利用されている蔵といった、歴史資源のあるエリアを観光客が見物しやすくなる。路面は石畳風に舗装し直し、歴史あるまちとしての雰囲気を増幅する。  トランジットモール化する具体的な箇所は、国道125号の亀城公園北交差点から県道24号との交差点まで、及び土浦駅西口周辺を考えている。しかし、駅前通りで車両の通行を規制することにより、周辺の道路に影響が出ることは必至である。そのため、トランジットモール化と並行して、千束町と富士崎町とを結ぶ新たなバイパス道路の建設も進める。  JICASTRADAによる分析を行ったところ、このバイパス道路を建設することで、モール化により増加する交通量を最大68%軽減でき、特にもう一つの駅前通りである県道24号の混雑増加を避けることができるという結果となった。なお、分析には現在建設中である川口田中線のデータも取り入れた。

■地区別現状 -南部地区-

南部地区は荒川沖駅や国道6号を中心として発展しており、各所に点在する住宅地やロードサイド型の商店がその特徴である。  問題点としては、駅周辺であっても生活道路が狭く、安全に歩行できるとは言い難い道があることが挙げられる。これに加え、街灯の配置も不完全である。  また、駅に直結した商業施設であるさんぱるが2015年1月をもって閉店した。現在のところさんぱるの建物はそのまま残っているが、窓ガラスが割られていたり自転車が放置されていたりするなど、見た目から治安があまり良くなさそうだという印象を受ける人もいる。  実際のところ、放置自転車数の増加と呼応するように、自転車窃盗の件数も年々増加傾向にあり、犯罪の温床になる可能性を孕んでいる。   以上の事実を踏まえ、「人の目による防犯まちづくり」と題し、劣悪な歩行者環境の改善や治安の向上、駅前の活性化を目標とした提案を行う。

■地区別提案 -南部地区への提案-

提案は大きく二つある。  一つ目は、荒川沖駅周辺地区における歩道整備「のびのび歩道計画」である。  これは歩道の舗装や壁面後退事業、電線の地中化、街頭の設置を行う計画である。対象道路は、駅西側の旧水戸街道や東側の県道203号を考えており、駅利用者の徒歩による通勤・通学ができる環境を整える計画だ。東西合計で舗装面積は約3000平方メートルとなる見込みである。  二つ目の計画はさんぱるのリノベーションによる、駅前交流センターの提案である。  国土交通省は「防犯まちづくりの推進」上で、「人の目の確保」「犯罪企図者の接近防止」「地域の協同意義の向上」を必要だとしている。  荒川沖駅周辺では、先述のようにさんぱる閉店による買い物客等の減少や、地域の協働意義の低下による治安悪化といった事態が起きており、これに対してさんぱるに新たな施設機能を誘致することで、駅前に人の目を確保し、加えて地域内交流が盛んになるような機能を付加することで、防犯まちづくりを推進する。  リノベーションしたさんぱるには、三中地区公民館や土浦市役所南支所といった南部地区の行政施設を集約した「荒川沖駅前交流センター」を誘致する。  これにより、市役所機能へのアクセス性向上や人通りの確保、周辺住民の地域内協働意義の向上を図る。  また、放置自転車への対策として、1階フロアに駐輪スペースを設ける。2階には、荒川沖駅から通路で直結していることを活かして、市役所南支所の役所機能を、3階には会議室や学習室、図書館といった公民館としての機能を持たせる。  駅前の歩行者交通の良好化および、駅前の機能集積が実現することによる交通や治安に関する問題に対応した、歩行者中心の歩きやすいまちづくりができるのではないかと考える。

■まとめ

各地区別まちづくり構想と「うららポイント」事業を実現することによって、歩きやすい道の整備やまちの魅力向上といった目標を達成し、将来的に土浦市を、我々が設定した目標都市像「歩いて外に出かけたくなるまち」へと作り替えていく。