4章 基本理念別構想

 

 第4章では,基本理念別構想として,構想を実現させるための具体的な計画を踏まえて,より詳細に述べる.

 

4.1 資源を活かして過去を大切にするまちづくり

 

 土浦市は,亀城公園,歴史の小路,まちかど蔵や旧制土浦中学校などといった歴史資源が多く残る歴史あるまちである.また,かつては水運の拠点として栄え,国内2番目の大きさを誇る霞ヶ浦など,自然資源も豊富に存在する.しかし,アンケートの結果から,そのような資源が市民に親しまれていないことが分かる.(図10参照)

 

(図10 H.18まちづくりアンケート調査 項目“土浦ならではのもので,まだ十分活かされていないもの”)

これらの歴史的資源は土浦にしかないものであり,土浦らしさにつながる.そこで,最初の提案としては,歴史資源を活かすことで土浦らしさを感じるまちを目指す.

 ここではある程度歴史的資源が集まっている中心市街地周辺に焦点を当て,特に亀城公園・まちかど蔵・霞ヶ浦をつなぐ通りを対象とする.

 では,先程述べた市民が歴史資源と親しめていない原因はなんだろうか.それは1つ1つの「個」の資源に,市民がわざわざ訪れるほどの魅力がないからではないだろうかと考える.「個」としての魅力を上げるというのはもちろんだが,より広域的な視野に立ってみると歴史資源が近接しているという点を活かしたら新たな解決策が見えてくるのではないか.つまり,これらをつなげて「地域」としての魅力を高めることで,市民がより歴史資源に触れ,土浦らしさを感じるのではないかというのがこの提案の主旨である.

・提案

まず,地域としての魅力を高めるために,どのようにつなげるか.対象とする通りには亀城公園・まちかど蔵に加え,木造や蔵造りの商店が点在する.そこでそれらの景観を利用し,沿道商店街を木造や蔵造りの外装にすることで連続性をもたせる.また,道路舗装も石畳に変えることにより沿道の空間により一体感をもたせる.

次に,市民がこの歴史的な空間に訪れるようにしなければならない.どのように市民が訪れる機会をつくるのか.ここで先程のアンケート調査結果を見てみる.“今後のまちづくりのために活用すべき地域資源は”という問い対して,約半数の人が「イベントやお祭り」を挙げている.この結果を利用すると,イベントを利用することで来訪機会の創出を目指すことが考えられる.

 ではどのようにイベントを催すのか.イベントを通して対象地域に来てもらうことを目的とするため,この地域内でイベントを行う必要がある.そこで道路に着目し,道路を交通の機能としてだけでなく,空間として活用できないかと考える.その際,参考とする概念はシェアドスペースである.シェアドスペースとは信号,標識,歩道などの道路の交通を規制するものを排し,歩行者と自動車とがモラルによって共存する空間である.

道路の目的を交通のみにとどめず空間として利用することで,イベントなどの活動が生まれやすくなるのではないだろうか.また,「ベロタクシー」という自転車タクシーを導入することで,高齢化の流れや障害者などの交通弱者も利用しやすい環境を整えるとともに,ゆっくり空間を楽しめる公共交通の整備にもつながる.

以上のように,地域としての魅力を高め,シェアドスペースによって活動の場を創出し,イベントによって歴史資源に触れ合うというプロセスをつくりだすことで人々に土浦らしさを感じてもらうことができるのではないかと考える.また,通りに人の流れができることで沿道商店街の活性化につながり,地域の活性化が周辺の歴史的景観にも波及してつながりが生まれていくのではないか.

4.2 交通による時の流れを止めないまちづくり

 

 土浦市では慢性的な交通渋滞が国道6号線や神立駅周辺など,各地で発生している.その中で,現在,西側区画整理や都市計画道路の整備案が出ている神立駅周辺に着目し,通勤・帰宅ラッシュ時の朝と夕方に発生する交通渋滞の緩和についての提案を行う.

それではなぜ現在,神立駅周辺で交通渋滞が発生するかというと,駅前の道路交通量と交通容量が見合ってないのではないかということが考えられる.需要が供給を上回っている原因を調べるべく,神立駅周辺の交通量調査を行った.

・通過交通量調査

日時:2011126

調査方法:西側ロータリーで駅を通過するだけの車と駅を利用する車を両車線ともで記録する

結果:霞ヶ浦方面から市街地方面へは89%が駅前を通過するのみで,市街地から霞ヶ浦方面へは81%が通過するのみであった.このことから,多くの車が駅を利用せず,駅前を通過するのみとなっていることから、通過交通量が増加し、需要が供給を上回ってしまっていると考えられる.

(表1 通過交通と駅利用の実態)

 

通過

利用

市街地へ

582

71

653

かすみがうらへ

294

71

365

876

142

1018

渋滞を緩和するべく考えられる方法としては以下の2つの方法が考えられる.

@交通容量を増やす

A交通量を減らす

現在、神立駅周辺には3つの事業が進められている。1つ目は西側区画整理であり,駅前広場の整備や駅前道路の歩車分離を図るものである.これにより,輔車の安全が確保されると共に,駅前ロータリーの利便性が向上する.2つ目は都市計画道路の整備であり,駅西側のロータリーに直結した道路が整備され,その道路がそのまま国号6号線につながっている.これにより,神立から中心市街地への移動がスムーズになると考えられる.3つ目は神立駅橋上化である.現在,改札が西側のみとなっているために人が西側に集中していたが、駅を橋上化することによって,駅東側からのアクセスも向上する.しかし,これらの現在計画されている事業は駅前空間の環境を向上するものであり,交通渋滞の緩和に直接的に関わるものではないように感じる.また車の目的は通過することであるので,需要を減少させるために,交通を分散させることが最も効果的であると思われるが、この点については現在整備が行われていない.このことから,交通量の分散を図る提案を行っていく.

 

ヒアリング調査:土浦市役所 都市計画課 三浦様

日時:2011126

ヒアリング内容:西側区画整理について〕

・提案

交通の分散を行うために駅の東側に道路を整備する.この道路を整備することによって,かすみがうら市から土浦市の中心市街地に行く際に,2通りのルートが考えられるようになるために、交通量の減少が行えるようになる.また道路を増やすことによって,交通容量も増えるので、需要と供給のバランスを均衡にすることができ、渋滞を緩和させることができると考える.

 

 

JICA STRADAによる検証

 都市計画道路のみでは,駅前の混雑が解消されなかったが,西側に新たに提案した道路を整備することによって,駅前の渋滞を解消することができる.このことから駅の利便性の向上につながると考えられる.また提案と現在計画されているにより,駅前空間やその周辺の魅力が向上されると考えられる.

 

4.3 施設利用で未来をつなぐまちづくり

 

 図17H42年土浦市の地区別高齢化率を現したものである.土浦市では今後高い高齢者率になることが予想される.しかし,高い高齢者率の地域に医療施設が十分に分布されておらず,今後の医療福祉の需要に対応していないことがわかる.また図17では寝たきりや認知症の高齢者が増えてきており,原因として高齢者が孤立することによって,コミュニケーションをとる機会が少なくなってきているということが考えられる.これらのことから,今後起こりうる土浦市の問題を未来という時間軸で見たところ,医療福祉の需要増加と孤立する人々が増加することが予想される.

 

・提案

ニーズに合わせた新しい医療施設を建設するにしても,建設維持コストがかかり実現が不可能である.そこで,図19で現すように既存施設で地域に満遍なく分布している施設を探したところ公民館があげられた.市役所に問い合わせたところ公民館の利用用途に医療福祉関係が含まれていなかったので,私たちは公民館を活かした将来の需要に合わせた提案を行う.解決策として既存施設の有効活用を提案する.

(図19 地区別高齢者と施設分布)

・市境なき医師団の設立

将来の需要対策として公民館の施設に医療福祉サービスを提供できる「市境なき医師団」というNPO法人を設立する.システムは図20のようになり,土浦市と近隣都市が協力し設立する.医者は医師団に登録し,指定した日にちに公民館に派遣される.住民は会員になり気軽に公民館にいき医療サービスを受けることが可能になる.

運営資金

NPO法人化することにより,補助金や減税の対象

・各市町村の助成金

・企業による寄付金

・住民の年会費,寄付金

これにより,より身近に医療サービスを受けられるようになり将来の需要を満たせる.また公民館に集まることにより,地域の交流の場にもなり孤立する人を減らせることができる.

 

 

・乗り合いタクシー

提案1により,交流の場の提供による孤立する人の解決になったが,そこまで行けない孤立した人に乗り合いタクシーを提案する.

対象:市境なき医師団会員,65歳以上の高齢者

範囲:各地区の公民館

料金:医師団会員(無料),その他(500)

利用:予約制

乗り合いタクシーは電話,インターネットで予約した家に直接送迎するシステムを採用する.NPO法人と連携した施策で,運営資金はNPO法人からとその他の利用料金で賄う.乗り合いタクシーにより孤立した交通弱者に気軽に公民館を利用してもらうことが可能になる.将来需要を考えた既存施設利用とのつながりを果たす重要な役割として期待される.

 

・整備による効果

21が施設利用をまとめたものである.将来起こりうる問題点を経済の縮小に合わせて,新規施設を建設するのでなく,公民館などの既存施設の有効活用,施設と個人をつなぎ孤立をなくす乗り合いタクシーを提案することによって需要を満たし解決できると考えられる.

 

(図11 シェアドスペース イメージ図)

(図12 シェアドスペース予定地)

(図13 シェアドスペースによる効果)

(図14 現在の神立駅付近の渋滞の様子)

(図15 新たに整備される道路)

(図 16 神立駅周辺の道路状況)

(図17 H42年度の地区別高齢者率)

(図18 一人暮らし・寝たきり高齢者数)

(図20 市境なき医師団のシステム)

(図21 整備による効果)