第3部  重点整備計画

第1章    にぎわうまち

1.  歩行空間の整備

1.現状

     商業機能の低下による都市の郊外化・空洞化

     都市景観の低下による回遊性の低下→人通りが少ない

     活かしきれていない地域資源

2.方針

     土浦特有の資源を活かし,観光客数の増加を図る

     歩いて楽しい都市空間の形成

     人通りが多くすることによりにぎわいあるまち,活性化を図る

     土浦駅西口北開発地域から人の導線を確保

3.重点整備計画

 

 

フローチャート : 代替処理: 歩行空間の整備 


【概要】

 3つの整備計画『地域特性を活かした水辺空間の創出』『歴史を感じるストリート』『バリアフリーで安全なまち』を実現することにより,観光客・人通りの増加を図り,にぎわいある都市へと変貌を目指す.

【詳細】

『地域特性を活かした水辺空間の創出』

 土浦のシンボルである霞ヶ浦と亀城公園をつなぐ水路を整備させることを考える.水の郷百選に選ばれている土浦であるが,中心市街地内にも上記間に水路を通すことにより水の郷を更にアピールすると同時に,外部の人にもわかりやすい都市構造になり,都市景観の向上,せせらぎと共に観光客増加も期待される.そして歴史感・風情ある,歩いて楽しい,ひとのにぎわうまちを目指す.

『歴史を感じるストリート』

 にぎわうまちに欠かせない物のひとつとして「通り」がある.土浦のメインストリートである亀城通りの家屋景観に統一感を持たせることにより,歴史を感じ歩いて楽しい空間となる.

『バリアフリーで安全なまち』

 歩道の段差をなくすことにより,道路にゆとりができかつ歩行者や自転車にも優しい通りとなる.また,キララまつり等イベント時に広場として使いやすくなる.視覚障害者や安全性のために点字ブロック.ポールの設置が不可欠となる.

  

1 水路の図

テキスト ボックス: 例)埼玉県川越市
景観は市民が主体となって統一感を持たせている
2 川越市

 

 

 

 


 

2.  土浦ファーム事業 ―土浦で農業と触れ合う―

1.現状

 ・茨城県は農業が盛んだが農業離れの進行のため遊休農地が増加している

 ・それに対して都市住民の中で農業農村に対するニーズは高まっている

 ・土浦市では市民農園とオーナー制度を行っているがまだまだ体制が整っていない

2.方針

 ・土浦市に人を呼び込むことによってまちがにぎわうことを目指す

 ・そのために土浦の資源として遊休農地を利用する

 ・遊休農地活用と地域振興を目的とする

3.重点整備計画

フローチャート : 代替処理: 土浦ファーム事業 ―土浦で農業と触れ合う―

 

 

【概要】

 土浦市に人を呼び込むことによってまちのにぎわいの創出を目指す.土浦市の貴重な資源である肥沃な農地を利用して,クラインガルテン[1]の設立とオーナー制度[2]の整備を行う.土浦の魅力を最大限活用した農業体験の場を設けることで,多方面からの訪問者を呼び込み,人がにぎわうまちになることを目指す.

【事例】

笠間クラインガルテンの例

 茨城県笠間市にある笠間クラインガルテンは,「農芸と陶芸のハーモニー」をテーマに都市農村交流による地域の再活性化を目的として開設された.笠間市は基幹産業であった農業が就農者の高齢化,減少,兼業化の進行により農業租生産額が減少し,それに伴い農地の荒廃も進行している.しかしながら都市住民の中には定年帰農や自給自足の生活,グリーン・ツーリズムなど,農業農村に対するニーズが高まってきている.

 そこで笠間市は都市・農村交流を通じた遊休農地活用と地域振興を目的に笠間クラインガルテンをオープンさせた.関東地方では初の本格的なクラインガルテンであった.宿泊施設付き市民農園(クラインガルテン)と日帰り市民農園が整備されている.日帰り型の利用者は約半分が茨城県民であるのに対し,宿泊施設付きの方は利用者の9割が首都圏住民となっている.施設では有機無農薬栽培の専業農家が栽培講習と巡回指導を行い,農作業経験が無い人でも安心して有機無農薬栽培での野菜作りを楽しむことができる.また,そば打ち体験,味噌・ジャム加工,炭焼き体験,そして地域の文化である笠間焼作り体験のできる施設が設置されている.さらに,収穫祭,盆踊りをはじめとした行事を通じて地元住民と交流する機会も設けている.

 オープン以来利用状況は好調である.利用希望者の競争率も高く,常に23倍の状況だそうだ.好調な理由として東京から車で1時間半程度と比較的近い割に自然が豊かで,山村風景がよく残り気軽に田舎体験ができることが挙げられる.

 利用期限を満了した人の中には農業と笠間の地が気に入り,クラインガルテンの近くに土地や家を求めて移り住むケースも現れた.これは住民増につながる笠間市にとって嬉しいことで,市では土地や空き家の紹介などコーディネート,支援に着手している.

栃木県茂木町のオーナー制度の例

 栃木県茂木町は独自の政策展開のひとつとして各種農産物のオーナー制度を行っていることで全国的に有名である.茂木町のオーナー制度は「ゆずの里」のむらづくり活動が発端となっている.かつて盛んだった葉タバコ栽培の荒廃が進んだため,以前から生息していたゆずを用いて地域おこしを開始することになった.ゆずの木のオーナー制度は平成5年に開始された.年会費1万円でオーナーになれるというもので,ゆずの木1本を自由にもぎ取ることができる.開村式や収穫祭などのイベントもある.日帰り圏内の顧客が中心で,平成19年度にはオーナー数は450組となり,開始から15年で約5倍に増加した.

 茂木町の特色として,まず気候や土地形状などを勘案し,手間のかからない作物を選択していることがある.これは農家の高齢化が進行しているためであり,お金をかけず毎日手入れをしなくてもいい素朴なものが良いとされている.また,地元農家がホスト役となって現地に訪れたオーナーをもてなすことを重視している.これにより地区内での協力体制が強くなりよりまとまりのあるコミュニティ形成に役立っている.

 茂木町の取り組みは農家所得の向上だけではなく,耕作放棄地の発生防止など農地・自然環境の保全管理に加え,地域社会の絆の維持にも一役買っている.

【詳細】

現在,土浦市では農林水産課が都市と農村の交流事業として市民農園とオーナー制度を行っている.市民農園は市内に高津・摩利山・神立の3か所にある.オーナー制度として栽培農家が播種から収穫までの管理を行う農作物のオーナーとなり,その圃場から取れる作物はすべてオーナーが受け取ることができる農産物オーナー制度が行われている.現在設置済みのオーナー制度としては土浦「常陸秋そば」オーナーがある.他にもJA土浦が貸農園を提供していたり,NPO法人が米などのオーナー制度を行ったりしている.しかしながら,市民農園について応募資格があるのは市内に居住している農業世帯でない人に限られており,オーナー制度もまだ少ないのが現状である.そこで土浦市にクラインガルテンとオーナー制度を設けることを考える.

まずはクラインガルテンの設立である.例に挙げた笠間市は東京からおよそ100km圏内,車で1時間半というアクセスの良さが人気の理由のひとつである.土浦市は東京から60km圏内であり,またJR常磐線の3駅や常磐自動車道の土浦北インターチェンジが立地するなど交通幹線網が整っているため,アクセスはよりよいと思われる.そのため笠間クラインガルテン以上の集客が見込まれると考えられる.土浦クラインガルテンのテーマは「伝統・小町」.小野小町で有名で農業が盛んな新治地区に設立する.笠間同様,東京をはじめとした首都圏住民向けの滞在型と近場の住民向けの日帰り型の2種類を設ける.現地農家の人々から技術支援などをしてもらう.イベントとして,土浦の名産品であるレンコンの収穫体験ツアーなどを行う.さらに小町の里ということで小町うどんや小町みそなどを作ることができる施設も併設させる.

次にオーナー制度を設ける.まず考えられるのは果物のオーナー制度である.茨城県は各種果物の南限・北限が交差しているため,いちご・ぶどう・かき・なし・くり・みかん・りんご・キウイ・ブルーベリーなど,豊富な果物に恵まれている.また,春はメロン,夏はスイカ,秋はなし・くり・柿・メロン・りんご・ぶどう,冬はいちごと1年を通じて様々な果物を収穫することができる.次に米のオーナー制度である.茨城県はコシヒカリの作付面積・生産量ともに新潟県についで第2位である.田植えや稲刈りなど,普段の生活では味わうことのできない経験ができる.そして特徴的なのが桜の木のオーナー制度である.桜は土浦の市の花に指定されており,桜川や亀城公園など桜の名所も多い.桜の木のオーナーになると,春にはその木の下で花見をすることができ,花びらを用いて桜のジャムを作ることも可能である.

 



[1] クラインガルテン

ドイツ語で「小さな庭」という意味であり,本来的には市民農園を表している.日本では,市民農園にログハウスを附設した滞在型市民農園をさす場合が多くなってきている.クラインガルテンは,ログハウスの欧州的景観とその活用による欧州型ライフスタイルを提供するものとして,グリーン・ツーリズムの新たな形態として注目されているところである.

[2] オーナー制度

 お米や野菜,果物,海産物,お酒などのオーナー(権利所有者)になる制度のことである.農家の方のサポートを受けて農産物を楽しみながら育てることのできる農業体験型が人気である.農家と都市に住む人々の交流,またオーナー同士の交流が図ることができる.