《現状》
中心市街地は駅の周りの道をはじめ、慢性的な渋滞が起きている。これは、私たちの想定している 2020 年になっても変わらない。
《キララちゃんの現状》
市役所のヒアリングで、まちづくり活性化バス「キララちゃん」は市民の身近なものになっていることがわかった。市民の中には、路線がないところにも新規の路線を求める声多い。市では、対策としてデマンドバスを出すなどして対応しているが、それは根本的な解決には至ってない。中心地区の移動は、城下町特有の幅員の狭さ、曲がりくねっているがゆえに、車では不便であり、さらに駅前の駐車場の稼働率も極端に低いこともこの状況を反映している。つまり、自動車を利用する人は、不便な中心市街には向かわず、郊外に出て行ってしまうことが考えられる、現に、その影響で、 土浦市 の中心部は衰退の一途をたどっている。現在のキララちゃんはその問題を解決してくれることを願って導入されたが、まだまだ、解決には至ってない。また、現在土浦駅周辺には、高層のタワー型マンションが多数建設され、供給のほうは充分なのに対し、マンションの需要があるかは現状の中心地区の移動性を考えると、疑問である。
《キララちゃんの問題点》
・バスが狭い道を縫うように走っている。
歩行者にとって危険、安心して歩けない。
定時制を保つために運転が荒くなる。
《ヒアリング》
「生き生き館 たいこばし」へヒアリングを行った。
日時:2月 16 日 ( 金 )
○質問
会員の方はどのような地域から来るのか
どのようにして来るのか
○回答
土浦市 内でも主に中心地区からで、荒川沖や神立からは少ない。
キララちゃんを利用する人もいるが、主には自転車。
近年はお年寄りの事故が増えてきている。
《提案》
以上のような現状分析から解決手段となる交通形態を考えてみると。
@現在のキララちゃんの補完する形
A各個人の目的地にできるだけ近いところまでいくことが出来る
B 土浦市 の都市構造に合う機動性に長けたもの
C内外にアピール(観光にも好影響)できる公共交通
D中心市街地を安全に移動できる
が必要であると考える。
そこで私たちは、「ベロタクシーによる輸送システム」を提案する。
<ベロタクシーによる輸送システム>
ベロとはラテン語で自転車を意味する。
乗客が目的地を選択できるという点では、タクシーとほぼ同じ機能を有するが、動力が人であり、運転手が車輪を動かす。つまり、タクシーと自転車を併せた自転車タクシーである。
内部は、ドライバーの座席と2名掛の乗客用座席、軽荷物用スペースがある。
重量:144kg
平均速度:11 km/h
平均速度が11 km/h は、 土浦市 の中心市街地のサイズには、充分である。
図 3-6 ベロタクシー
自動車のタクシーより小さく、小回りが利く
話題性があるゆえに、観光資源としても活かせる。イベント等にも活かせる
運転手との心理的距離がかなり近い
普通の車と違い、遮断性がないので、 土浦市 を肌で感じることができる
排気ガスが出ない、車体はリサイクル可能なポリエチレンで出来ている
広告収入が期待できる(注目度が高いゆえにかなりの効果→運営の収入源になり得る)
電車、バスのように混まない
自動車のタクシーより安い
普通免許とやる気さえあれば、誰でも運転手になれる
<ベロタクシーの設定>
ベロタクシーの導入については以下のように設定する。
導入台数: 15 台
導入コスト: 1500 万円 (100 万円 / 台 )
価格設定: 300 円 / 台、2人だったら 400 円 / 台
営業キロ:1 km 以内(ベロタクシーの平均時速 11km 、往復 12 分弱)
営業形態:自動車のタクシーと同じ形態
運行時間帯:9: 00 〜 19 : 00 (キララちゃんの時間に合わせる)
月曜〜金曜(雨天時運行中止)
なぜ 15 台か?
土浦市 総合交通体系調査 (P.70) によれば、 土浦市 民の外出手段において利用している手段を考慮すれば、潜在的にベロタクシーを利用すると思われるのは全体の 14.6%( タクシー、バス、バイク、自転車、徒歩、その他 ) であることがわかる。また、 土浦市 の中心市街築 (CUET 初期設定 : エリア 15) が 11560 人である。したがって、潜在的なベロタクシー利用者数は、 11560 × 0.146=1678.83 人 ( @ ) となる。
ベロタクシー導入エリア ( 後述 ) の最大距離は2 km 、ベロタクシーの平均速度は 11km/h から最大移動時間は 0.18 時間 ( 約 11 分 ) 、運行時間 600 分 (9 : 00 〜 19 : 00) から最大の運行回数は1台あたり 55 回である。ベロタクシーは 1 回当たり最大2人運べるので 55 × 2=110 人 ( A ) が 1 台当たりの 1 日沿う運行人員数である。
@、Aから 1678.83 ÷ 110=15.34
以上より、導入台数は 15 台が妥当だと判断できる。
<ベロタクシー導入について>
図 3-7 のように太線の道路の内側を『 VELO ゾーン』とし、その区域内の道路はベロタクシー優先とする。
また、キララちゃんの「狭い道を通っている」、「危険である」という問題点から、現在の運行ルートを図 3-9 のように改善し、キララちゃんに狭い道を通らないようにする。キララちゃんの通らなくなった道路はベロタクシーによって補う。
図 3-7 VELOゾーン
図 3-8 現状のキララちゃん路線図 図 3-9 新しいキララちゃん路線図
また、ベロタクシーによる移動は自動車のように壁がないので、新たな 土浦市 を発見できるかもしれない。
<キララちゃんの路線変更による影響>
現在の運行距離と新路線の運行距離と新路線導入による短縮距離を下図に示す。
表 3-4 新旧の運行距離
JICA-STRADA で旅行時間を計算したところ、( VC_DW における旅行時間)表 3-4 のような結果が得られた。
新 A コースの一周時間は 10.86 分( 10 分 51.6 秒)になり、現行の A コースでは一周にかかる時間が 30 分であることを考慮すると、 19.13 分( 19 分 7.8 秒)の短縮になる。
表 3-5 新旧の運行時間
新Bコースの一周時間は 25.38 分( 25 分 22.8 秒)になり、現行のBコースでは一周にかかる時間が 30 分であることを考慮すると、 4.62 分( 4 分 37.2 秒)の短縮になる。
このように一周の時間短縮が実現した要因として、既存の道路を拡張した道路に通しことが大きい。これまで、拡張の狭い、曲がりくねった道を運行しているため、必然的に通行時間がかかり、定時性を保つために運転手は慌てて運行するため、かなり運転が荒くなる。しかし、新路線は拡張した直線の道路に通すことにより、一周時間を短縮することができ、必然と運転が荒くなることを防ぐことができる。そして、拡張のせまい、曲がりくねった道の公共交通は、機動性の高い( 305 × 110 M)(普通乗用車( 470 × 170 M))ベロタクシーが担うことになる。
<道路拡張の必要性と影響>
『 VELO ゾーン』内の道路をベロタクシー優先にすると、どうしてもゾーン内の交通機関に支障をきたしてしまう。そこで『 VELO ゾーン』の外周 ( 図 3-7 の太線 ) の道路を 1 車線から 2 車線に拡張する必要がある。
図 3-10 道路拡張前の混雑度 図 3-11 道路拡張後の混雑度
道路を拡張すると図 3-11 のように混雑度が下がる結果となった。
図 3-13 道路拡張後の旅行時間 図 3-12 道路拡張前の旅行時間
それに伴って、旅行時間も上がっている ( 図 3-13)
<利用者の観点からの分析>
分析方法
ゾーン間の最大距離における時間と仮定
Tw: 歩行者一人当たりの移動時間
Tv:ベロタクシーを利用したときの 一人当たりの移動時間
C:単位時間当たりの移動コスト
( = 2264 円 / 時間 )
上記の方法で計算すると、一人当たり約 720 円の移動コストが削減されたことになった。
<業者の観点からの分析>
広告収入 (45 万円 / 台 ) ×投入台数 (15 台 ) = 675 万円
最大でひと月に 675 万円の収入が得られる。
メールで質問したところ、実際に、他の公共交通よりも企業からの広告掲載のオファーが多いという。
以上より、私たちの提案で、キララちゃんではカバーしきれなかった部分を補完し、より安全で快適な移動をすることが可能になる。