クラインガルテンの提案

 まずグリーンツーリズムとは、「緑豊かな農山漁村地域で、その自然、 文化、人々との交流を楽しむ余暇活動」のことです。 年々、グリーンツーリズムに対する関心は高まっており、 都心に住む団塊の世代のうち、「週末は農山漁村で過ごしたい」と答えた人の割合が45.5%、 農山漁村地域に住む人のうち、「都市住民が週に3日程度訪れて滞在することは良いこと」と 答えた人の割合が69.6%となっています。(*1) またヒアリング調査によると、退職した団塊の世代が求めることとして、 健康、知的鑑賞、自然・癒し、ボランティアへの参加が挙げられています。

 そこで都心部の人と農山漁村地域に住む人の一致したニーズを満たすために 私たちは土浦市へのグリーンツーリズムの導入、クラインガルテン(*2)の設置を提案します。


設置場所

 設置場所としては新治を提案します。提案する理由としては

・都心部から近く、アクセス性に優れている(図)
・筑波山の麓に位置し、ロケーションが良い
・一年を通して作物が何でも作れる気候である
・休耕・遊休農地の増大する中で農村の基盤である農地の荒廃化を防ぐことができる
などが挙げられます。

茨城県内のクラインガルテン位置関係

東京からの各クラインガルテンへの車によるアクセス時間

前提条件・経済への直接効果

(1)構成:クラインガルテン、日帰り市民農園

(2)年間訪問者数:約15万人(延べ人数)
【算出方法】
 @ クラインガルテン客

  1区画当たり2人程度の人が年144日(=月4回×3日×12ヶ月)訪れるものとする。 また、クラインガルテンの稼働率は100%とした。(*3)
  年間の客数は、50(区画)×2(人/区画)×144(日/年)=144100(人/年)

 A 日帰り農園利用客
  1区画当たり2人程度の人が年60日(=月5回×1日×12ヶ月)訪れるものとする。 また、日帰り農園の稼働率は90%とした。
  年間の客数は、25(区画)×2(人/区画)×60(日/年)×0.9(稼働率)=2700(人/年)

⇒合計144100+2700=14万6800(人/年)

(3)年間収入
 ・年間クラインガルテン利用費:40万(笠間クラインガルテン参照)×50ヶ所=2000万
 ・年間市民農園利用費:2万×25ヶ所=100万

 ⇒合計2000万+100万=2100万(円/年)

(4)従業員数:15人(従業員10人、栽培指導員2人、行政職員3人)とする

(5)クラインガルテンの規模
 ・クラインガルテン×50
 ・日帰り農園×25

(6)面積
 ・クラインガルテン:1区画300u×50ヶ所=15000u
 ・日帰り市民農園:1区画75u×25ヶ所=1875u
 よって面積の合計は、15000+1875=16875(u)

(7)建設費用
 ・クラインガルテン:1区画当たりの開設経費1000万(建物設置含)×50=5億
 ・日帰り農園:1区画当たりの開発費用130万(*4)×25=3250万
 よって建設費用の合計は5億3250万円。


新治クラインガルテンイメージ図

 CUETより新治村の地価を30000(円/u)とする。
 土地は借りるもの考えると一年ごとの借り賃は、16875(u)×30000(円/u)×0.01=506万2500(円/年)
 以上から経済への直接効果を求めると

 ・クラインガルテン建設費用:施設建設費・造成費:5億3250万(円)
 ・維持費用:毎期合計1956万2500円(内訳;土地借り賃:506万2500円(円/年)、設備費:1450万(円/年)(*5))

プロジェクトの評価

「費用対効果分析」を用いて算出する。
効果額/費用が1.0以上ならばこの事業を行う価値があるということになる。
算出する前提条件として社会的割引率r=0.04とする。
プロジェクト費用5億3250万円、毎期1956万2500円の費用、2100万円の便益を計上し、 20年間サービスを供給するものとした。
また、プロジェクト費用については国から補助金が半分出るものとした。(*6)
その結果、次のようになった。

効果額/費用≒0.536 < 1.0
1.0を超えなかったため、効果額が費用を下回っているということが分かった。
しかし、この分析は間接効果を考慮していないため、不完全なものである。 具体的に考えられる間接効果としては

 ・地域産業の雇用創出による経済効果
 ・地域内消費の増加による経済効果
 ・クラインガルテンを借りた人の消費者余剰(借りた人々は支払った以上の便益を得ているものと考えられる)

などが挙げられる。 事業実施期間中、これらの効果によってどれだけ効果額が増えれば効果額/費用が1.0を超えるかを計算すると

(285396853.2 + X) / 532110759.1 > 1.0より

X=246713905.9≒2億4600万円

となった。

 また、クラインガルテンによる波及効果としては以下のようなことが考えられる。

 ・クラインガルテンの主な客層となっている知的階級の流入・定住によって新治に刺激が与えられる。
 ・地元民との交流によって活性化をはかることができる。
 ・クラインガルテンに人が来ることによって他地域に観光へ行く人が増え、賑わいが創出される。
 ・新治へ訪れた人からの口コミによって土浦市の認知度が上昇し、土浦を訪れる人が増えることが期待される。
 ・都心の人々が求めているということを認識することによって農業の良さを再認識し、 農業離れに歯止めをかけることができる
・高齢者の生きがいを創出することができる
・休耕・遊休農地の増大する中で農村の基盤である農地の荒廃化を防ぐことができる

これらのことは新治村のひいては土浦市の活性化の一助になると考えられる。
*1:「都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査」内閣府(H.18.2)

*2:クラインガルテンとははドイツに起源をもつ滞在型の市民農園のことである。
  現在日本では20道府県56箇所のクラインガルテンがある。
  茨城県内では笠間と八千代の2カ所にあるが、 特に笠間のクラインガルテンは規模が大きくクラインガルテンのモデル的存在である。
  滞在者はラウベと呼ばれるログハウスに宿泊をして、契約をしている区画で農業を営む。

*3:笠間クラインガルテンは50区画は毎年すべて埋まり、今年3月に空く予定の10区画には、 昨年11月の締め切りまでに46件の応募があった。
  クラインガルテン八千代も20区画が満杯で、14組がキャンセル待ちの状態という盛況ぶりである。
  よってクラインガルテンの需要はかなり高いものと考えた。
  ちなみに笠間の日帰り市民農園には若干空きがあるということだったので 日帰り市民農園の稼働率は90%と設定した。

*4:八千代にあるラウベの1棟当たりの建設費用が約870万であったため、それを元に計算した。

*5:八千代のクラインガルテンの支出が800万であることを用いて面積の比を元に算出した。

*6:八千代のクラインガルテンを設置する際に「やすらぎ空間整備事業」から補助金が出ている。

□その他の提案

 クラインガルテン、日帰り市民農園と併設するものとして以下のようなものを提案する。

・農家レストラン:新治で採れた農作物を使った料理を出す

・直売所:新治で採れた野菜を売る


農家レストランで出す料理の一例


直売所の様子

筑波山−新治−中心市街地をつなぐ

 つくばエクスプレスが開業してから、筑波山を訪れる観光客は増加傾向にある。 2005年から2006年の1年間では23万人増加した(図)。 そこで、筑波山への観光客を取り込んだ施策が提案できると考えられる。

 新治と筑波山はどちらも自然を売りとする共通点があり、ルートも比較的近い。 筑波山から新治へ、さらには中心市街地へ観光客を誘導することで、「つくば〜筑波山〜新治〜中心市街地」の 新観光ルートが形成される(図)。

 筑波山からクラインガルテンへ農業を通しての交流、クラインガルテンから中心市街地へ商店街での交流 という2パターンの交流が得られることとなる。


筑波山への観光客の推移


新観光ルート