0.土浦市の概要と現状分析

1.概要

土浦市は、桜川低地と霞ヶ浦とが接する湖頭に発達した湖頭集落で、東京から60q圏に位置する茨城県南地域の中核都市です。
隣接するつくば市・牛久市とともに業務核都市に指定されています。

土浦市の歴史は古く、縄文から室町時代にわたる国指定の史跡や文化財も多く残されています。
江戸時代には城下町の骨格が形成されました。
この頃から土浦は水戸街道と桜川、霞ヶ浦の水運を保有し、交通の拠点、物資の集散地として水戸に次ぐ常陸国第二の都市として繁栄しました。

明治以降も発展を続け、県の出先機関や旧制中学も置かれました。
昭和初期には海軍航空隊予科練が設置されました。
そして、昭和49年には人口が10万人を超え、県南地域の中核都市としての地位を確固たるものにしました。

しかし、近年では中心市街地での相次ぐ大型店の撤退や郊外店の立地により、中心市街地の空洞化が進んでおり、加えて隣接する筑波研究学園都市の発展、つくばエクスプレスの開通などの影響から、その地位がゆらぎつつあります。

市内は、城下町・商都として栄えた中心地区、研究学園都市に近接し荒川沖駅を中心とした南部地区、神立工業団地を中心とした北部地区の3地区に分割されます。
また、平成18年2月20日には筑波山麓の新治郡新治村と合併し、新土浦市として新たなスタートを切りました。

2.現状分析

(1)人口


図0-2、土浦市将来人口予測

土浦市の人口は144,433人(平成17年11月1日、旧土浦市及び旧新治村調べ)で、両市村の総合計画を参照すると将来人口は20万人と想定されています。
しかし、平成14年の国立社会保障・人口問題研究所の試算では平成27年(2015年)の147,173人をピークに減少に転じ、現在から20年後に当たる平成37年(2025年)には143,475人と現在の水準を下回る予測が立てられています。(図0-2)

また、2005年の実測値は予測値を1600人程度下回っており、実際にはこの予測よりも早く人口減少が進む可能性があります。


図0-3と図0-4はJICASTRADAを用いて産業別人口割合を求めた結果です。
1988年から2010年の22年間において、産業別人口分布の目立った変化は確認されません。
zone20,zone21では、人口の約半数が第二次産業に従事していることがわかります。
このことからも、土浦市北部地域には工業団地が多いことがわかります。

一方で、zone15〜zone19に注目すると、ゾーン人口の半数以上が第三次産業に従事していることがわかります。
市内全体的に第一次産業に従事している人の割合は少なく、レンコン栽培が盛んなzone22に着目しても、意外に農業従事者は少ないことが確認されます。

(2)住環境
@ 住宅地
戦災の被害が少なかったため土浦市中心部は古くからの家々や街路が残っており、道路が狭く、非常に密集しています。このため、土浦駅前や荒川沖では市街地再開発事業が行われ、地域の再生と土地の高度利用が図られています。
高度成長期以降、人口増加と市内の土地の高騰に合わせて郊外の永国や中村西根、木田余などでは土地区画整理事業によりニュータウンが造成されました。(図0-5)また、北部神立地区では土浦千代田工業団地と合わせて大規模なニュータウンが作られました。

一方、田村沖宿や瀧田等の土地区画整理事業ではバブル崩壊等の影響で住宅や業務施設の立地が進まず、大きな負債となっています。


A 緑地・公園
筑波山麓から霞ヶ浦まで広がる土浦市は森林や桜川等の河川敷など緑地が豊富です。
また、川口運動公園や霞ヶ浦総合公園など大小43カ所の都市公園もあります。
しかし、人口一人当たりの公園面積値で見れば、現土浦市が5.74u、現新治村が8.28uと、国土交通省の「緑の政策大綱」(平成6 年)で目標水準とする住民一人当り面積20uの4分の1程度となっています。

(3)インフラ
 B 交通
土浦市の道路網は旧水戸街道を継承するように国道6号、JR常磐線、常磐自動車道が整備され、東京、水戸への広域交通を担っています。東西方向には国道125号、354号が走っており、稲敷、鹿嶋、つくば方面との交通を担っています。中心市街地は城下町時代の道路網がそのまま継承されているため、狭い道路が多く残っています。

最新の人口データを用いてJICA-STRADAとCUETで交通量の分析を行った結果、土浦市はつくば市との結びつきがもっとも強く、続いて阿見町、かすみがうら市千代田地区・霞ヶ浦地区の順になっていることがわかりました。(図0-6)

また、つくば市への道は、整備された道路が数多く存在するので混雑は目立たないのですが、南北に走る国道6号線は、土浦市内のほぼ全線に渡ってひどい混雑状況となっており、阿見へとつながる国道125号、かすみがうら市霞ヶ浦地区へとつながる国道354号、さらには土浦駅前も混雑が目立つ状況になっています。(図0-7)

市内の公共交通は関東鉄道の路線バスが中心ですが、同社の年間輸送量は1999年〜2003年の5年間で32%減少しています。現在、中心市街地の活性化問題とリンクし、バス利用不便地域の緩和、公共交通利用の促進を目的に、キララちゃんと呼ばれるコミニュティーバスが運行されています。

A 上下水道
土浦市の上水道普及率は平成16年3月末で現土浦市が94.40%、現新治村は88.68%でほぼ9割近くの世帯に供給されています。一方、下水道普及率はそれぞれ81.78%(普及率県内4位)、71.95%(同10位)で、いずれも水戸市よりも高い値です。

B 情報・通信
土浦ケーブルテレビ株式会社(J-COM Broadband茨城)が全域ではないものの現土浦市と牛久、かすみがうら両市、阿見町をカバーしています。

(4)商業
かつて土浦市は県南一の商都だったが、その年間商品販売額の対県シェアは年々減少しています。

@ 中心市街地
中心部には大小多くの商店が立地していましたが、モータリゼーションや人口の郊外進出により、かつての活気を失い、近年では大型店の相次ぐ撤退や増加する空き店舗が問題となっています。
平成9年、再開発事業のプロジェクトとして、URALAが建設されたが、依然として大型店の閉店、商店街の衰退は続いています。
また、歩行者動線も駅とURALAの間ばかりが太く、その他の地点の導線は弱い野が現状です。

A その他の地域
南部地区では国道6号と学園東大通の交差点を中心に郊外型の大型店が立地している他、荒川沖駅東口に「さんぱる」という駅直結のショッピングセンターがあります。
北部地区の神立駅周辺では目立った商業施設はないが、隣接するかすみがうら市に千代田ショッピングセンターがあります。
新治地域にはエコスを核テナントとする「さん・あぴお」がある他、隣接するつくば市には多くの商業施設があります。

(4)農業
霞ヶ浦に面する土浦市は低湿性水田地帯に位置しており、レンコンの生産が盛んです。
また、花卉栽培にも力を入れている他、新治地域では果樹栽培が盛んです。

 @ レンコン
土浦市のレンコン生産量は全国一で、特に霞ヶ浦湖岸の沖宿、田村、手野、木田余地区と桜川周辺の虫掛地区などに多く栽培されており、主に京浜方面に出荷されている。また、レンコン麺などレンコンの加工品の販売にも力を入れています。

表0-1、レンコン生産量
順位 市町村名 作付面積(ha) 収穫量(t)
1位 土浦市 496 7640
2位 霞ヶ浦町 340 5100
3位 徳島県鳴門市 331 4620
4位 愛知県立田村 240 3270
5位 山口県岩国市 195 3010
6位 玉里村 147 2070
7位 佐賀県福富町 132 2000

A 花卉
全国有数の生産量を誇るグラジオラスは、県の銘柄生産の指定を受けており、アルストロメリアについても県指定銘柄推進産地となっています。

B 果樹
新治地区においては果樹園が多く、「新治フルーツライン」と呼ばれているほどです。特に、みかんの栽培の北限、りんご栽培の南限であり、他にもナシ、ブドウ、クリ、カキが特産となっています。

(5)水産業
霞ヶ浦は220kuの湖面積を誇る日本第2位の湖であり、様々な魚が生息しています。
土浦市では沖宿漁港を拠点としてワカサギなどの漁業が盛んですが、近年、霞ヶ浦の水質悪化で漁獲高が減少しています。
そのため資源確保と漁獲高増加に向けて、稚魚放流や養殖などにも取り組んでいます。
佃煮などの水産加工業も盛んですが、霞ヶ浦の漁獲高減少が影響し、原料の確保が難しくなっています。

(6)工業
工業は北部地域が中心で、かすみがうら市との境界にある土浦千代田工業団地には日立グループの企業など41社が立地しています。
また、常磐道土浦北ICに近接するテクノパーク土浦北には7社、東筑波新治工業団地には1社が立地しており、これらの地域への企業誘致を促進しています。(図0-8)

(7)観光

土浦市は古くからの城下町であると同時に水郷筑波国定公園の一部を形成しており、霞ヶ浦や筑波山などの観光資源が豊富です。
また、周辺地域には石岡市の常陸野風土記の丘、フラワーパーク、つくば市の霊峰筑波山や筑波山温泉があり、広域観光のポテンシャルの高い地域となっています。

@ 歴史ある街並み
城跡、寺社をはじめ、道標、一里塚や家並み等が残されている他、歴史的都市景観整備事業として蔵や石畳などの保存・改修も行われています。

A 霞ヶ浦と桜
水郷筑波国定公園に指定されている霞ヶ浦は日本第2位の湖で、土浦市の観光資源の一つでもある。
霞ヶ浦ではヨットやフィッシングなどのウォータースポーツが盛んであり、遊覧船も運航しています。
筑波山南麓に位置する新治地区では、スカイスポーツが盛んであり、またフルーツラインと呼ばれる果樹園群があります。
その他、桜川沿岸や市内各所には桜の名所が多くあります。

B 日本一の花火競技大会
毎年10月の第1土曜日に桜川畔(学園大橋付近)で開催され、日本三大花火大会の一つとされています。
日本の代表的な花火師が各地で1年の花火大会を終わり、それまでに得た研究妙技で日本一を目指すと共に、花火師達の技術修練の場として最も権威ある大会と格付けされており、毎年約65万人の観客が訪れます。