背景
かつて湖水浴などで市民に親しまれた霞ヶ浦は、高度経済成長期以降、水質が悪化し、街の裏側へと追いやられていった。水質改善を進めることで、再び土浦市の誇るべき財産として再生させ、美しい霞ヶ浦を中心に市民が集う、豊かなコミュニティの形成をめざす。
重点整備の目的
・霞ヶ浦を土浦市民が自らのまちの誇れるシンボルとして再生する
・現在求められている“環境に配慮した生活スタイル”を実現する契機とする
・流域自治体と協力することによって、新たな交流の場とする
具体的計画
現在実施または計画されている施策
@汚水処理システムの整備
・ 家庭排水、工場・事業場排水対策の強化
・ 農業集落排水事業
(農業集落におけるし尿、生活雑排水などの汚水、汚泥または雨水を処理する事業。農村の生活環境の改善および公共用水域の水質浄化を図るために整備される)
・ 高度処理型合併処理浄化槽事業の推進
・ 霞ヶ浦導水事業の促進
・ 公共下水道の計画的な整備
・ 流域下水道事業
(2つ以上の市町村からの下水を受け処理するための下水道事業で、終末処理場と幹線管きょからなる)の整備
A環境に配慮した農業・畜産業の推進
・ 施肥付き田植機や節水型レンコン掘り取り機などの普及促進
・ 土作りや輪作などを通じて化学肥料、農薬の使用などによる環境負荷の軽減に配慮した環境に優しい農業を推進
@ については大規模公共事業となり、その是非が問われているものもある。導水事業では、用水需要の増加を理由の一つとしてか掲げていることに反対運動が起きている。
Aについては、有機農法など、環境に優しい農業では、農作物の形が不揃いであったり、虫に夜食い跡が見られるなど、見劣りする点もあることは事実だ。それでも、色・味の濃い野菜、が人の体にも環境にも良いことは明らかだ。農家への普及と同時に、こうした農業への理解をすすめ、消費者の購買行動へと導くことが、必要である。
新たに提案する施策(@Aをより効果的に進めるために必要なこと)
Bグリーンツーリズム
【概要−霞ヶ浦流域市町村とのつながり】
霞ヶ浦が抱える環境問題は、科学技術を用いた水質改善だけでは解決できない。全流域における環境改善努力が必要である。流域に住む市民には、霞ヶ浦の環境に自らの生活がかかわっており、彼らの個々人の配慮こそが求められていると意識するのは容易ではない。そこで、流域自治体において、霞ヶ浦環境科学センターを中心とした学習計画を推し進め、市民の生活レベルからの環境改善を図る。
また、流域において農業・畜産業を営んでいる人々に、霞ヶ浦へ流れることになる産業排水をいかにして改善するかといった課題に取り組むよう誘導・援助する。また、努力が認められる農家・畜産かへの訪問を体験学習のカリキュラムに含めることも検討する。また、工場についても同様の仕組みを適用する。(参考:ネスレ工場)
これらの霞ヶ浦環境学習プログラムは、主に小中学校で実施し、そのほかの市民に対しても積極的に参加を呼びかけていく。
霞ヶ浦の水質汚染原因をみると、生活系が30〜45%を占めており、生活排水の改善が重要であることが分かる。公共下水道の整備も必要であるが、まずは市民の意識の向上が必要である。

霞ヶ浦の水質汚染原因
【その他の需要】
・余暇需要の増加
余暇時間の増加と共に、農作業や自然を体験し、親しもうという動きがでてきた。
・子どもたちの健康
近年、偏った食生活から、肥満や糖尿病などの生活習慣病にかかる子どもが増加している。また、朝食を摂らずに学校へ来る子どもや、夜更かしによる睡眠不足、貧血になる子どもが増加している。生きていく上で、健康管理ができることは重要な能力である。そこで、小学校からの食育を推進し、自ら食について考え、判断する能力を身につけられるようにすることが求められる。
・農業の衰退
農業従事者の高齢化、後継者不足による離農で、遊休農地が増加している。
【グリーンツーリズムに期待される効果】
・ 霞ヶ浦の水質改善への取組みへの理解を深める
・ 日常の活動が環境に及ぼす影響について認識を深める
・ 地域への愛着心を育む
・ 地域・都市間の交流、相互理解へとつながる
・ 地元特産品のアピール
・ 農業および食物への関心を高める
【グリーンツーリズム実施のための整備】
・ 農家の受け入れ態勢の整備
(体験学習の内容や実施方法の規定をつくり、受け入れ方法についての研修を受けてもらう)
・ 遊休農地の整備
・ 農業指導員の育成
・ 学校教育との連携
・ 周辺市町村への広報
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| 土浦市・新治村の農業地区域 |
【グリーンツーリズム実施案】(市内小中学生対象の場合)
事前(各学校で学習および受け入れ先農家との事前交流の実施)
@霞ヶ浦科学センターにおいて環境学習
A霞ヶ浦に親しむ(土浦ビオパークetc)
B少人数に分かれ、土浦市内の農家で農業体験(収穫・加工・調理etc)
事後(各学校で実習発表などの学習および受け入れ先農家との交流)
【先行事例】
・東京都武蔵野市立小中学校ーセカンドスクール
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