3.基本計画
3−1.交通計画
現在、土浦市内では、国道6号沿い及び中心市街地などで、沢山の交通渋滞が存在している。これらの交通渋滞も含め、土浦市内の交通について円滑になるような整備を行う。
Jica−Stradaによって、土浦市街地の交通分析を行った。
・土浦駅西口・市街地
国道125号・県道24号の混雑度が高い。また、通過交通も少なからず存在している。
・国道6号
国道6号については交通量が多くなっている。また、通過交通率が高いことがわかる。
・周辺部
荒川沖地区、国道125号線では、混雑度が高い。その他の地域では、大きな交通量はない。
以上より、土浦市街地に交通が集中しないような道路網の建設を検討する必要がある。
次に、将来、道路ネットワークが現状のままであると仮定した場合の交通量の変化を探るため、1988年と2010年のデータを用いて比較を行った。
自動車交通量の変化
国道6号線 約1.5倍
国道125号線 約1.6倍
国道354号線 約1.3倍
2010年自動車通過交通の割合
国道6号線 約73%
国道125号線 約35%
国道354号線 約26%
全体として、交通量は増加している。また、中心市街地の通過交通率も高い。早急に交通混雑を解消するような道路整備が必要である。
中心市街地では、交通渋滞が日常化してしまっている。特に、土浦駅西通り線、国道125号線で顕著である。これらの渋滞の発生要因として、通過交通の存在を無視することはできない。
この渋滞を解消するために、中心市街地を通らない迂回ルートを制定した。土浦駅東口を通る荒川沖木田余線、真鍋神林線の一部である。この道路について片側2車線とした場合の配分計算を行った。結果は以下の通りである。
施策前後での交通量の変化(台/日)
左から、名称 施策前 施策後 残差 の順
土浦駅西通り線 37,000 34,000 3,000
国道125号線 31,000 28,000 3,000
合計 68,000 62,000 6,000
また、この施策に対しての環境負荷削減効果、時間費用についても検討した。結果は以下の通りである。
環境負荷・時間費用の施策前後での変化量
数値は左から 土浦駅西通り線 国道125号線 荒川沖木田余・真鍋神林線 の順
大気汚染(万円/日) 0.97 0.41 −1.77
騒音(千円/年) −12,500 1,800 −97,000
地球温暖化(円/日) 2,700 500 −2,000
時間費用(万円/日) −78 −81 120
時間費用について、償還年数を40年、社会的割引率を4%、道路工事費用を14億円、1km当たりの道路拡幅費用を10億円とした場合の費用便益分析を行った。この条件の下で、B/Cの値は2.0となった。
3−2.構想拠点の選定
今回の計画で、施策が最も必要となるのは中心市街地である。中心市街地には慢性的な渋滞や商店街の衰退など様々な問題を抱えている。まちの顔でもある中心市街地が今のような状態であれば、土浦市全体のイメージも悪くなる。また、「人が集まる」ということからみても問題である。よって、中心市街地を再生しゆとりのあるまちにしていくことが緊急課題である。そのために、中心市街地を構想拠点としてこの計画を進めていく。
3−3.中心市街地の現状と対策
平成5年2月1日、土浦・つくば・牛久業務核都市基本構想の承認を受け、再開発事業が進められる予定だった。しかし、近年になって都内の再開発事業が急ピッチで進められている。この影響により、各業務核都市は規模を縮小せざるを得なくなっている。土浦市においても、市の玄関となるはずであった駅北地区の再開発事業が暗礁に乗り上げた。
また、モータリゼーションと商業構造の変化により中心市街地の衰退が進行している。郊外大型店鋪の進出により、中心部の商店街が衰退した。自動車によるアクセスが便利で品揃えが豊富な郊外大型店鋪に対して、中心市街地の商店街はアクセスがしにくいうえ、消費者のニーズにあった品揃えがなされていない。消費者は郊外大型店鋪に流れ、中心市街地ではシャッターを閉めたままの空き店鋪が目立ち、活気を失っている。
しかし、平日に4万人が土浦駅を利用し、生涯学習センターは放課後を過ごす高校生で賑わっている。商店街はこの人の流れを惹き付ける魅力を持っていないといえる。商店街には滞留のためのゆとり空間がなく、人は商店街を通り抜けるだけになっており、お店に入にくくなっている。
物が豊富に存在する現代では付加価値の高い商品が求められている。付加価値とはその商品が持っている情報量である。機能の他にデザインや流行等の情報を汲み取った商品が求められているのである。東京やチェーン展開されている郊外大型店鋪は情報収集能力において土浦市中心市街地の商店街を上回る。よって、消費者は商店街ではなく、郊外大型店鋪や東京に行って付加価値の高い商品を買いに行っている。
一旦は業務核都市の一角を担うはずであった土浦市だが、国の経済事情により、業務核都市構想は暗礁に乗り上げている。貿易摩擦の打開策として郊外大型店鋪が普及した。中心市街地は国の政策に振り回されてきたといえる。その影響が明らかになった今、国の政策に影響されないまちづくりが必要である。
また、チェーン展開の郊外大型店鋪は東京から発信された流行に乗って品揃えがされている。商業においての、主に東京を頂点とした情報のトップダウン方式が行われており、消費者はそれを受け入れる以外選択肢がないのが実状である。
よって、東京から発せられる情報を追って商業をするのではなく、情報を発することにより、消費者のニーズを生み出し、流行を作り出すところまでしなければ、中心市街地の再生は実現しないと考えられる。
自動車社会において、中心市街地に人を呼ぶためには、自動車にはない生活の良さを提示し、自動車の便利さを上回る「歩く楽しさ」演出することが必要である。立ち止まるためのゆとりをつくり、まちなみや雰囲気を見てもらい、待ち合わせや休憩をしてもらう空間を作り出すことで、商店街を楽しむためのしかけを整備しなければならない。
郊外大型店舗が立地したことにより、中心市街地は商業、業務以外の用途に利用する余地が生まれた。商店街の固定客を獲得するためにも、住宅地への利用は有効である。
3−4.中心市街地における具体的な施策
3−4−1.歴史と未来をつなぐみち
歩いて楽しいまちをつくるために、亀城公園などの歴史的な施設を生かしたみちを整備する。駅から亀城公園に向かって歴史を薫らせることにより、時間の連続性を作り出す。この連続性によって歩く動機付けを行う。また、時間というテーマを一つの線に打ち出すことで、わかりやすさを増し、より歩きやすい空間を作り出すことができる。
・ゆとり空間の配置
歩いての買物では、待ち合わせ、ウィンドウショッピング、休憩などの行動が起こる。これらは買物をより楽しむのに欠かせない。これらの行動をしやすくするために滞留できるゆとり空間が必要となる。そこで、休憩施設を以下の通りに配置する。また、空き店鋪となっているところに喫茶店,カフェを誘致する。
・未来の創造
情報を発信する空間施設を配置する。現代の流行は雑誌やメーカーの企画からよりもスポーツや音楽等の文化から発信される。たとえば、若者は、ミュージシャンの着ている服やライフスタイルなどの影響を受け、それに基づいて消費活動を行う。もっとも顕著なものは髪型である。
この施設から文化を作り出し、流行を発信する。美術館では展示しないような大衆文化を提示し、その影響をまわりの店に伝播させることにより、東京とはひと味違った流行を生み出す。筑波大学芸術専門学群の学生も巻き込んで流行を発信する。
・駅西口の整備
案内板が少ないので、駅の西口に案内板を設ける。また、西口を出てすぐの景色はイトーヨーカ堂2階の出入口が見えるだけである。出入口の手前で右に曲がって商店街を歩かせるようなストリートファニチュアを設ける。
・大型空き店舗の処理
小網屋を解体し、公園を整備する。未来の想像空間とともに大きなたまり場空間を作り出し、歩きやすいみちのしかけとする。
図17:空き店舗
3−4−2.東武ホテル跡の住居転用
東武ホテルを住居に転用する。定住人口を増やすことによって、にぎわいを創出し、商店街の固定客増加を図る。
図18:東武ホテル跡
3−4−3.土浦駅北公園
芝生のオープンスペースを設ける。中心市街地住民の憩いの場として、また、土浦駅を利用する人の安らぎの場として機能させる。
3−4−4.土浦まちづくり会社(TMO構想)
駅前商店街の活性化を目的とした土浦まちづくり会社を設立する。商店街のコンセプトでもある「過去と未来をつなぐみち」にのっとり商店街を統一したイメージで整備を行っていくためにこの会社がイニシアティブをとっていく。
コンセプトに基づいた適切なゾーニングの策定からファサードの統一を行う。それらを決めるために行政、店主、市民が幅広く参加できるワークショップを開催し、目指すまちの姿を共に考え情報の発信を行う。
TMO・・・Town Management Organizationの略称で、その名の通りまちづくりをマネージメントする機関であり、中心市街地の商業全体を一つのショッピングモールとしてとらえ、一体的に運営するための組織である。
3−5.その他の地域における施策
3−5−1.荒川沖駅周辺
現状
荒川沖駅は土浦市南部の交通の拠点である。駅の西口はつくば研究学園都市へ向かうバスの乗り換え地点である。上野からJR常磐線で約1時間と通勤可能なエリアであり、首都圏へ通勤通学する人も多く、荒川沖駅西口の利用者は年々増えている。周辺は筑波山、牛久沼、乙戸沼など自然環境に恵まれ、ゆとりある充実した暮らしを求めて来る新しい住民も増え、ベットタウンとして大きく発展しつつある。近隣の国道6号線、東大通沿いにはロードサイドショップが多く見られ連日賑わいをみせている。
しかし駅西口には古い町並みが残っており、市街地の衰退や道路基盤の未整備等の問題が発生している。また周辺の幹線道路も慢性的に渋滞している状況がある。
以上のことから、つくば研究学園都市や東京へのアクセスの良さを活かし、町の活性化、ゆとりある環境を整備することによって土浦南部の拠点にするために次の施策を行う。
施策
・西口駅前の整備
現在進行中の駅西口の再開発事業を引き続き推進する。地域の人々になじみの深い既存の商店街との共存共栄をはかる。そして駅利用者と周辺地域に住む人々の暮らしのニーズを満たし、まちとくらしの核となる、魅力ある商業ゾーンを形成する。
また駅西口に点在する駐車場を立体駐車場に集約させ、空いたスペースに公園を整備しゆとりのある空間を確保する。
・幹線道路の立体交差化
国道6号線と東大通が交差する交差点を立体化する。渋滞が緩和され土浦駅方面、つくば研究学園都市方面とのアクセスがよくなり地域間の移動がスムーズになる。
3−5−2.神立駅周辺
現状
土浦市内最大の工業地帯を抱えている神立駅は土浦市の北の拠点である。土浦市に限らず茨城県南地域の雇用の場としても重要な地区である。従ってこの地区には市内をはじめ県外からも多くの人々が働きに来ている。しかしこの地区はそれに見あうだけの道路などのインフラ整備が追いついておらず慢性的な交通渋滞の発生、神立駅と工場地帯とのアクセスの不便さ等の問題を抱えている。これらの問題を解決し、快適な地区にするべく次の施策を行う。
施策
・駅舎の橋上化
現在神立駅の1日の乗降客数は1万人を超えている。朝のラッシュ時には、西側にある工業地帯への通勤客に加え、東側にある高校への通学客も多く乗降する。また東側には住宅地が広がり発展しつつある。しかし、駅には改札口が西側にしかなく、東口利用者にとっては乗り降りが不便である。
駅舎を橋上化することによって東口利用者の利便性が向上されラッシュ時の混雑も緩和される。また東西方向の行き来がスムーズになりまちの活性化に寄与する。
・駅周辺の道路の拡幅
駅周辺の道路は幅が非常に狭く、渋滞の大きな原因の1つである。また歩行者にとっても安全性が確保されておらず危険である。そこで道路を拡幅することによってこれらの問題を解消する。具体的には駅前を通る県道牛渡・馬場山・土浦線、神立停車場線での拡幅を行う。
駅の橋上化と共に行うことによって駅前にゆとりある空間が生まれ良好な住環境が整備される。
3−5−3.霞ヶ浦周辺
(1)霞ヶ浦の親水空間の有効利用
@川口運動公園の親水公園化
現状
常名地区に新たな運動公園が出来る予定がある。
今の運動公園では霞ヶ浦の親水性が生かされていない。
施策
川口運動公園を市民に開かれた親水公園にする。誰もが自由に行き来でき、気軽にスポーツ、レクリエーション、散歩などができる場にする。
効果
市民が気軽に霞ヶ浦のそばで余暇を楽しむことができ、市民がゆとりを持って生活できる場所を提供できる。
A駅を横断するぺデストリアンデッキ新設
現状
霞ヶ浦の景観を活かすに当り、土浦駅が市街地を東西に分断しているのが問題であると考えた。中心市街地と霞ヶ浦の間に心理的な距離が出来てしまっている。
施策
土浦駅西口と現川口運動公園を線路の上を通るぺデストリアンデッキで結ぶ。西口側は駅の2階レベルからとし、軌道上を横断し立体駐車場の北側を通って湖岸に達する。
効果
駅の東西を自由に行き来できるようになり市街から霞ヶ浦へのアクセスが容易になる。
B霞ヶ浦周辺の景観の公園・ぺデと一体的な整備
現状
公園を整備し、アクセスを容易にしても現状の霞ヶ浦対岸等の景観は魅力的とは言えず、利用価値が低い。
施策
湖岸の景観を改善し親水公園の利用価値を高める。
効果
公園からの眺望が改善され、魅力的な親水空間が出来上がる。
(2)水陸両用バスの運行
「水の都・土浦」の再生を目指して、霞ヶ浦で日本初の水陸両用バスを運行する。通勤通学、観光、余暇、学習など幅広く使われるもので、水辺空間の再発見と霞ヶ浦の水質浄化の啓発を目的とする。市が車両を2台購入し、運行業務は民間バス会社に委託する。陸から水中に入るためのスロープ設置や運転士の技術習得にかかる費用も市が負担する。愛称は霞ヶ浦にちなんで「カスミ号」とする。
性格の異なる3つのコースを合わせて採算を目指すが、当面は赤字が予想されるので、運行に関する損失は市の補助金で補填していく。また将来的には、桜川での運行、運河の復活、他の自治体と連携して霞ヶ浦流域全体での運行などの発展の可能性も有する。
・バスの概要
愛称:カスミ号
定員:40人
全長:12m
幅:2.5m
車両購入費:約7000万円(検査費等含む)
最高速度:(陸上)時速約110km
(水上)時速約20km
概要は、大阪のNPO法人「大阪・水かいどう808」が2002年に購入した水陸両用バス「カッパ1号」より。
おおつ野コース
土浦駅・おおつ野間の片道7km(陸3km、水4km)を約1時間で往復し、約30分に1本の間隔で、1日20本程度を運行する。料金は既存のバス路線の運賃と同程度の400円に設定する。定員が40人と少ないので、既存のバス路線と組み合わせて輸送力を確保する。主に通勤通学に利用してもらう。
水を見ながらの通勤通学には付加価値があるので、行き詰まった田村・沖宿土地区画整理事業の現状打開の起爆剤となることが期待される。また水陸両用バスの運行と合わせて、おおつ野地区の未利用地に高齢者をターゲットとした本格的なゲートボール施設『おおつ野ゲートボールパーク』を仮設することや、各種イベント(イベント的な住宅展示会等)を企画することによって、昼間の需要の確保も図る。
土浦駅東口→(水路)→沖宿→おおつ野→沖宿→(水路)→土浦駅東口
観光・レジャーコース
休日には土浦駅から霞ヶ浦総合公園を回る約9km(陸4km、水5km)、1周約40分のコース。1日20本程度運行する。観光客・市民に利用してもらい、地域資源の有効活用とゆとり空間としての水辺の提供を目的とする。運賃は500円とする。国民宿舎『水郷』とも連携し相乗効果を狙う。
土浦駅東口→国民宿舎水郷→霞ヶ浦総合公園→(水路)→土浦駅東口
体験学習コース
沖宿地区に設立される環境保全・環境学習の拠点となる『霞ヶ浦環境センター(仮)』や親水公園であり水質浄化施設でもある『土浦ビオパーク』などを巡る約14km(陸7km、水7km)のコース。水と親しみながら水環境について学ぶ。平日に不定期に貸切で運行し、霞ヶ浦流域の小中学校の校外学習等で利用してもらう。
土浦駅東口→土浦ビオパーク→(水路)→霞ヶ浦環境センター→
→(水路)→霞ヶ浦総合公園→土浦駅東口