4章 地域計画〜おおつ野ヒルズ
土浦市は現在、常磐線や常磐道、主要国道等交通などの軸が南北に走っている。現在のまちなみはそれらを中心にして形成され、人や物の等の流れが盛んな南北軸を構築してきた。しかし、それを東西方向で見てみると、鉄道、高速道路は無く、国道・一般道も南北方向に比べると交通量は少ない。また周辺の住宅地も南北軸近辺の住宅地に比べるとあまり発展しておらず、商業施設も大部分が南北軸に集積している。こうした理由から東西軸は南北軸に比べて貧弱であると判断できる。特に市北東部は中心市街地や主要国道沿い、市南部や西部に比べて人口も少なく大規模商業施設も無く、発展していない印象が強い。
そこで我々は市北東部にある「土浦ニュータウン おおつ野ヒルズ」に注目した。この地区は平成元年から土地区画整理事業が展開され、平成10年4月より分譲を開始している。まだ整備され始めてからあまり年月が経っておらず、周辺も含めまち全体が閑散として、寂しい印象を受ける。しかし、これは見方を変えると発展途上であり、周辺環境整備やネットワーク次第では大いに発展する可能性もある。
そこで我々は東西軸の交流を活発化するため、また市全体の発展を目的に「土浦ニュータウン おおつ野ヒルズ」をその一端を担う拠点と位置づけ、整備計画を考える。

図36.現在の土浦市の南北軸のイメージとおおつ野ヒルズ

図37.田村沖宿土地区画整理事業全体
2−1)土地区画整理事業の概要
○所在地/茨城県土浦市おおつ野1丁目から8丁目
○交通/JR常磐線「土浦」駅東口より約6.0km
常磐線自動車道「土浦北I.C.」より約8.5Km
○施行面積/99.56ha
○事業方式/土浦・阿見都市計画事業、田村・沖宿土地区画整理事業
○事業主体/田村・沖宿土地区画整理組合
○業務代行者/川鉄商事株式会社
○法令に基づく制限等
都市計画法/市街化区域
用途地域:建ぺい率・容積率
第1種住居地域:60%・200%
第2種住居地域:60%・200%
近隣商業地域:80%・200%
第1種低層住居専用地域:50%・100%
○その他の制限/土地区画整理法、地区整備計画
○設備(既設)/上水道(土浦市営)、電気、都市ガス、電話、下水道(雨水、汚水分流式)
○事業の特徴
南に霞ヶ浦、西に筑波山を臨む台地に位置し、周辺には豊かな緑、田園風景を備えている。その新しい都市構造は、商業施設、都市公園を中核とした職住近接を目指す複合市街地である。
2−2.主な経過
・平成元年5月 市街化区域へ編入
・平成元年8月 土地区画整理組合設立認可
・平成2年10月 土地区画整理事業起工式
・平成4年 8月 仮換地指定
・平成7年 7月 公共施設の供用開始
・平成10年3月 県道荒川沖木田余線(幅員18m)開通
・平成11年4月 市道田村沖宿線(幅員16m)
・平成11年9月 換地処分の公告
・平成12年3月 土地区画整理事業終了

図38.市道田村沖宿線
2−3.住宅分譲
平成10年4月より、第一期分譲開始。今後は、毎年約50戸の分譲を計画(総分譲予定区画数約600戸)。

図39.田村沖宿土地区画整理事業内の住宅
3−1.交通アクセス
土浦市北東部に位置し、土浦駅東口より路線距離約6.0km(車で約10分)、常磐自動車道(土浦北I.C)より路線距離約8.5km。

図40.おおつ野ヒルズ位置
3−2.事業概要
川鉄商事が開発、川商不動産が販売しているニュータウン「おおつ野ヒルズ」は、南は霞ヶ浦、西は筑波山を望む高台に位置し、周辺は豊かな緑に囲まれた「職住近接」のニュータウンである。敷地には主に業務商業系用地12万坪、住居系用地4万坪から成る。住居系用地は区画数600で、高齢者に配慮したバリアフリー設計の住宅となっている。
“職・住・商の融合”をコンセプトにプランニングされており、商業・流通、地域交流、生活利便、研究・研修ゾーン間の有機的な結びつきがスムーズになるよう工夫されたレイアウトとなっている。

図41.おおつ野ヒルズ土地利用図
表2.おおつ野ヒルズゾーン別データ
3−2−1.「商業・流通ゾーン」(2・3・4街区)
施設:大型スーパーマーケット、ホームセンター、ブックセンター、家具センター、ファーストフード店、物流センター等事業地の北部、玄関部分に位置する2街区・3街区・4街区は商業・流通ゾーンと位置づけ、ここには上に示した大型店舗を提案し、人で賑わう空間を創出する。
3−2−2.「地域・交流ゾーン」(7・28・29街区)
施設:病院、図書館、学校、社宅、複合商業施設、ガーデンセンター各種レストラン街、映画館などアミューズメント関連施設等事業地の中央部東側に位置する7街区・28街区・29街区は地域交流ゾーンと位置づける。ここには医療関係、教育文化施設、ショッピング・レストラン街、映画館・ゲームセンターなどの娯楽関連施設を提案し、地域交流の拠点となることを目指す。
3−2−3.「生活利便ゾーン」(26・31街区)
施設:店舗付住宅、コンビニエンスストア、生活利便施設、レストラン等事業地の中心部、メインロード(幅員16m)の西側、公園の隣に位置する26街区・31街区は生活利便ゾーンと位置づける。ここにはコンビニ店や各種生活利便施設(生鮮食料品店、薬局、飲食店、美容室、キャッシュコーナー等)を提案し、住民が日々の生活をより快適に過ごせる空間を目指す。
3−2−4.「研究所・研修所ゾーン」(30・76〜82街区)
施設:エレクトロニクス関連・医療関連・バイオ関連などの研究所、人材育成・指導者育成などの研修所、リフレッシュのための保養施設など事業地の南東部、閑静な立地にある30街区・76〜82街区は研究所・研修所ゾーンと位置づける。企業や事業体の研究施設、企業・団体の研修・保養施設などを提案し、産業分野での活発化を目指す。

図42.おおつ野ヒルズ完成イメージ
3.で紹介したとおり、「土浦ニュータウン おおつ野ヒルズ」は現在事業者が開発を進めている。しかし、宅地分譲され始めてまだあまり年月を経ていないためか、住宅はまばらで区画は整理されてはいるものの住居が建築されず、草が生え放題といった光景が広がっている。また、街区に人影が見当たらず住民のための商業施設も未だ建設されていない等、都市基盤の開発の遅れが目立つ。
現在この地区以外にもニュータウンが関東近辺に多数存在するが、計画人口をどの程度達成しているかで成功したかどうかを判断すると、必ずしも成功しているニュータウンは多くない。このニュータウンも交通環境等が他のニュータウンより特別よいわけでもなく、今後宅地分譲や公共施設・大型店舗等の誘致時には苦戦することが予想される。また先に述べたようにこの近辺には類似したニュータウンが多数存在するので、他のニュータウンより優れている点がなければ競争に勝つことはできないであろう。
そこで我々はこの地区を1.で述べたように東西軸交流活発化、市全体の総体的発展の市北東部の拠点と位置づけ、人口を増やすことを提案する。しかしこの地区の内部は業者が先に述べた様々な方策・工夫をしている。そこで我々は地区内を整備するのではなく、「おおつ野ヒルズ」のネットワーク等を含めた周辺環境の整備・方策を立てることにより環境を改善し人口を増やし、中心市街地だけでなく市全体での発展を狙う。そのためには前述したネットワークが不可欠と考え、それらに応じた計画を立てる。

図43.おおつ野ヒルズ現状
5−1.新公園建設
5−1−1.目的
土浦市には現在、霞ヶ浦総合公園をはじめとして公園が各地区に配置されているが、「おおつ野ヒルズ」がある市北東部において公園は未だ未整備である。そこで公園配置の不公平をなくすため、また市北東部の環境を改善し住宅環境の水準の上昇による「おおつ野ヒルズ」の購買意欲の上昇を目的に、この地区に公園を新設する。

図44.土浦市公園配置
5−1−2.他の公園の内容
・霞ヶ浦総合公園…テニスコート、水郷プール、体育館など数多くの施設を備えたスポーツレクリエーション公園。
・川口運動公園…霞ケ浦湖畔の広大な運動公園、憩いの場としても人気がある。敷地内には陸上競技場、野球場、テニスコート、運動広場などスポーツ競技には申し分のない設備が揃っている。
・乙戸沼公園…沼を囲む桜が有名で、花見時期には大勢の人で賑わう。冬はたくさんの渡り鳥を見ることができる。
・亀城公園…かつての土浦城址。現在は市民の憩いの場として親しまれている。園内には、広場や小動物園、プール、県指定天然記念物のシイの木などがある。

図45.新公園位置
5−1−3.新公園の概要
○場所/土浦市沖宿町(おおつ野ヒルズの南部、霞ヶ浦沿い)
○面積/20ha
○内容
土浦市は国内第2位の規模を誇る霞ヶ浦沿いに位置しているが、このことを十分にいかしきれていない。それは公園においても同様で、霞ヶ浦沿いにある霞ヶ浦総合公園、川口公園ともに霞ヶ浦と関係性の薄いコンセプトとなっている。
そこで今回提案する新公園は自然、特に霞ヶ浦に特化したコンセプトを目指す。平成16年度にはこの地区に霞ヶ浦環境センター(仮称)が整備される予定である。その目標の中で調査研究、技術開発などとともに環境学習も挙げているが、内容は
・市民や子供たちが水環境に関する知識を体系的に習得できることを目指す
・市民や子供たちが、体験を通して、人と水環境の望ましいあり方を考え、環境保全に結びつけるには、どのように行動すればよいかを学ぶことを目指す
等が挙げられており、目標に向けた方策として
・対象者の年齢や対象グループを考慮し、理解度に応じて区分した体系的な学習カリキュラムを準備し、親しみやすい環境学習を展開する
・水環境の現状に関する理解を深めるため、調査結果や研究成果を学習プログラムに反映させる
・環境問題への導入のための体験型展示施設や開放された野外フィールドなど学校等が環境学習を行うための場や機会を提供する
を掲げている。
そこで新公園建設の目的と霞ヶ浦環境センターの目標の一部が合致することから、うまく提携させ霞ヶ浦をいかした市民に好まれる公園づくりを目指す。

図46.新公園設置場所の現状

図47.新公園イメージ
5−2.サイクリングロード建設
5−2−1.目的
土浦市には筑波鉄道跡に筑波大規模自転車道(りんりんロード)が整備されており、すでに大部分が完成している。それに関連し中心市街地から市北東部にかけての霞ヶ浦沿いに新たに自転車道を建設する。ここではサイクリングロードを用いて中心市街地と市北東部を結び関係を密にすること、安全かつ快適にスポーツレクリエーション活動を行える空間を提供すること、周辺住民の日常生活における自転車交通の安全を確保することを目的とする。

図48.サイクリングロード位置
5−2−2.概要
@霞ヶ浦総合公園と上で述べた新公園とを結ぶ
公園同士を結ぶことで公園に遊びに来た人が、気軽にサイクリングが楽しめるようにする。また公園同士の提携、交流を深める意味でもその果たす役割は大きい。
A霞ヶ浦沿いに建設
霞ヶ浦沿いに設置することで、霞ヶ浦からの爽やかな風を受けて自然を感じるとともに、市民にとって霞ヶ浦をより身近なものにする。
Bりんりんロードと連結する
新たに設置するこのサイクリングロードは距離的にはさほど長くなく、本格的にサイクリングロードを楽しむ人にとっては必ずしも満足がいくものではない。そこで、土浦駅付近にまでコースがのびているりんりんロードと連結することによってコースの充実化を図り、更に他の地域との交流が深まることも期待する。
C多目的に利用
現在のサイクリングロードの利用はサイクリングだけにとどまらない。ジョギングやウォーキング、インラインスケートなど実に多目的に利用されている。そこでここではあらゆる目的に対して対応できるようにする。
Dスポーツイベントに活用
サイクリング大会・マラソン大会などのコースとして提供し、スポーツの活性化を図ると共に市民交流の場を提供する。
E自転車交通の確保
このサイクリングロードは周辺住民の日常生活における生活道としての役割も果たす。自動車と分離することによって安全かつ迅速な行動が可能となり、自転車の利便上性の向上を図る。
Fレンタサイクルの導入
レンタサイクルを導入して、遠方からの来訪者も気軽にサイクリングが楽しめるようにする。その基地は霞ヶ浦総合公園と新公園に設置して、片方の公園からスタートし、もう一方の公園に到着したら自転車を返却できることによって、わざわざ往復する必要性を解消する。

図49.りんりんロード

図50.レンタサイクルイメージ

図51.サイクリングロード改善イメージ
5−3.アクセス強化
5−3−1.目的
この地区は何度も述べているように、アクセスが悪いために市内の中でも特に発展が遅れてきた。そこでここではアクセスを強化して、交通環境を挙げ地区の重要度を増すとともに、他の地区や施設との交流を深め、新たなネットワークを構築する事を目的とする。

図52.土浦市道路現況
5−3−2.計画
@神立駅方向
神立駅周辺は県道戸崎・上稲吉線が走っており、この道は拡幅もありよく整備されている。しかし、「おおつ野ヒルズ」からこの県道戸崎・上稲吉線に出るまでには、林道のような狭く、路面状態の悪い道を通らざるを得ない状況にある。人口が少ない現状ならまだよいが、将来人口が増えたときには、中心市街地の道路と同様かなりの交通渋滞が予想される。また我々は「おおつ野ヒルズ」に人口が増えることを想定しているが、他の地区へのアクセス状態が悪いため購買意欲が薄れる可能性もあり、それらを防止する目的でも計画を立てる。
○具体的計画
・幅員/20m
・ルート/「おおつ野ヒルズ」から県道戸崎・上稲吉線につなぐ

図53.計画路線その1
A中心市街地方向
この地区から中心市街地へのアクセスには国道354線から荒川沖木田余線を利用するが、国道354線は交通量が多いにも関わらず片側1車線で非常に混雑し、歩行者や自転車などにとっても危険性が高い。そこで市街地へのアクセスを改善し地区の交通不利を解消するとともに、ネットワークを構築することも踏まえ計画を立てる。
○具体的計画
・幅員/25m
・ルート/「おおつ野ヒルズ」から新規道路を建設し、荒川沖木田余線と連結する。

図54.計画路線その2
B土浦北I.C方向
この地区は、先に述べたとおり東西軸の市北東部の拠点を目指すが、交通ネットワークにおいて現時点では残念ながらあまり東西軸が強いとはいえない。そこで現在土浦新治線が土浦北I.Cから伸びているが、それを延長しおおつ野ヒルズと結び東西軸を構築するとともに、この地区の交通面での利便性を高める。
○具体的計画
・幅員/25m
・ルート/土浦北I.Cから延びている土浦新治線を「おおつ野ヒルズ」のある市北東部まで延長させる

図55.計画路線その3

図56.アクセス強化イメージ
5−4.福祉循環バスの導入
5−4−1.目的
この地区は交通の便が悪いため、高齢者等にとっては他の地区はもとより、公共施設や商業施設等に行くことすら困難になる。そこでここでは現在全国各地で導入され始めている福祉循環バスを導入することで、交通弱者の救済・生涯学習の奨励・地域間交流の活発化・市全体のネットワーク構築を図る。

図57.アクセス強化イメージ
5−4−2.計画
@ルート
土浦市には現在7つの公民館が各地に点在している。この各公民館では現在様々なサークルが存在し、実際活発な活動が行われている。そこでこの公民館を回るルートを確立し、車を利用しない高齢者も気軽に足を運べるようにする。

図58.上高津公民館
A計画の内容
○地区の公民館に住民を集める
上にあるように、この循環バスの導入は高齢者の生涯学習奨励、交流活性化を目的としている。現在土浦市には多数のサークルが存在しており、活動も盛んに行われている。そこでここでは活動をより多くの人がその活動に参加できるようなシステムづくりを目指す。
・サークル活動を宣伝し、参加しやすい環境づくりをする
・各公民館にそれぞれの担当地区を循環させる循環バスを導入する。この循環バスを導入することによって、車を利用しないために公民館に行くことが困難な人(高齢者など)にも気軽に来られサークルに参加できるようにする。
○公民館同士を結んで交流を深める
一つの公民館では行われるサークル活動にも限界がある。そこで一中地区公民館を除く公民館を北部と南部に分けて、循環バスでその公民館同士を結ぶ。そうすることで、各公民館同士の交流を深めてサークルの活動の幅が広がるとともに、利用者にとっても選択の幅が広がるようにする。
○公民館と中心新市街地の公共施設を結ぶ
一中地区公民館のある中心市街地周辺は、他にも様々な公共福祉施設が集積している。そこで2.のネットワークから中心市街地に循環バスを運行することによって、中心市街地をサークル活動の拠点とするとともに、そこから情報を発信させサークル活動のネットワークを市全体に広げる。

図59.福祉循環バスルートイメージ