ここでは、土浦市に存在する土浦駅以外の神立・荒川沖両駅と、新たに設置する新駅付近について、それらの整備計画の詳細を紹介していきます。
1.荒川沖
この地域は、東京に通勤する人も多く、そうした人々のベッドタウンとなっています。ロードサイドショップが多く存在し、人々の集客要素となっていますが、分散して存在しているために、交通混雑を引き起こすことはあまりありません。
写真.4.1 ロードサイドショップ
写真.4.2住宅地
計画としては、人々の生活圏、幹線道路にならぶロードサイドショップ付近の商業圏を一体化せず、市民にとって住みよい空間を考えます。
また、荒川沖駅西口の駅前道路整備を行い、歩行者、自動車、自転車のそれぞれにとってよい空間整備を考えます。
写真.4.3 荒川沖駅前
2.神立
神立駅前にある駅前商店街は比較的活発ですが、道路幅員が狭いわりに自動車交通量が多く、安心して買い物をする空間とはなっていません。そこで、既存の駅前商店街の存続・促進を推進するために、歩行者や自転車での移動がしやすい駅前空間を創出することとします。また、自転車利用促進の一環として、駅前の自転車駐輪場の整備を進めます。新たに施設をつくったりすることはせず、既存の魅力活かすことを基本的な整備理念とします。
(1) 歩道の確保
右の写真は神立駅から国道6号に向かって伸びる道路ですが、ここではかろうじて片方にだけ歩道がありますが、神立ではもう片方のように線だけが引かれていたり、線すらなく側溝のふたの部分を歩道として歩いているものが殆どです。そのため、自動車がすれ違う際には歩行者のすれすれの所を自動車がすり抜けていくといった危険な光景がよくみられます。そこで、看板が
路上にはみ出さないように徹底的に指導し、歩道をめいっぱい拡幅し、歩行者にとってはより利用しやすく、自動車にとっては利用しにくくし、より歩行者優先の空間として整備していきます。
写真.4.4 神立駅前
図.4.1 歩道整備イメージ図
(2) 駐輪場の整備
既存の駐輪場も数箇所ありますが、いずれも有料となっています。自転車通勤・通学をより普及させていくためにも、無料駐輪場を設置していきます。
3.台地地区
ここで取り上げる台地地区は、中心市街地南側に位置し、天川団地など多数の団地が存在するエリアである。また、谷津が台地の奥深くまではいりこんでいて複雑な地形を有する場所でもある。
図.4.2 土浦市の地形概略図
その複雑な地形に古くからの住宅が点在し、さらに、団地がスプロール状に開発されているため、道路をはじめとしてわかりずらい町並みを形成している。団地の一部には、住環境のよくないところも存在し、地区のイメージを悪くしている。以下に各団地の特徴をあげておく。
団地名 | 特徴 |
天川団地 | 街路樹が少なく、幅員が狭い道が多く、古く暗いイメージ。 |
永国団地 | 県が数年前に造成したもので、住宅はまばらだが、明るいイメージ。 |
上高津3丁目 | 古い住宅多し。幅員が狭く、一部では通過交通もあるため、危険。 |
パークシティ土浦 | 団地のメインストリートはきれいであるが、谷地形で暗いところある。 |
小松ヶ丘町 | 古い住宅が多く、幅員が狭い道で構成されており、暗いイメージ。 |
桜ヶ丘グリーンクレスト | 街路樹やボンネルフが整備されており、きれいに整っている。 |
桜ヶ丘ニュータウン | 外観がよくない住宅が多く、盆地状の場所に存在するため、暗い場所もある。 |
小岩田東2丁目 | 古い住宅が多いが、地形的に開けた場所に存在するため、暗い印象ではない。 |
集合住宅(県営住宅など) | 一般的な集合住宅が17棟ほど存在するが、オープンスペースはさほどない。 |
表.4.1団地名および特徴
団地は、以下の図のように県道桜ヶ丘大岩田線沿いに張り付いています。台地地区の事業計画である新駅および学園並木連絡道も示してあります。新駅などに関しては、次ページ以降にかいてあります。
図.4.3 台地地区概略図
(1)新駅設置(駅名・土浦だいちプラザ)
新駅は、県道桜ヶ丘大岩田線と常磐線が交差するところに設置し、桜川と花室川にはさまれた台地地区の交通の便を向上させることを主目的とします。この台地地区は、常磐線を利用する際には、土浦駅または荒川沖駅のどちらかを利用することになり、距離がいくぶんある上に台地と低地での高低差が大きく、自転車での駅のアクセスが不便と思われます。よって、新駅設置に伴い、常磐線へのアクセス向上、土浦・荒川沖両駅への車による送迎が減り、両駅周辺での自動車交通量を削減でき、人・環境優先の中心市街地づくりの後方支援になると考えられます。
また、新駅設置とともに、サイクル&ライドを台地地区でも導入するために、新駅に無料駐輪場を設置し、新駅利用を促進する。土浦日大高校の生徒・東京通勤者の利用はもちろんのこと、買い物などでの近距離利用者の需要を喚起し、周辺における車利用を削減できると考えます。なお、自転車による新駅へのアクセス向上のため、サイクリングロード・道路併設自転車専用道の建設などインフラ整備も同時に行います。
特に、土浦市の場合は、中心市街地での歩行者が減少しており、商店街衰退の大きな要因となっている。このため、中心市街地での歩行者を増加させることを考えると、近距離でも常磐線にのってもらい、土浦駅から中心市街地への歩行者を確保することが必要と思われる。現状では、台地から中心市街地への車の流入がかなりあると思われます。
平成10年1日平均乗客数は、土浦駅23209人で、荒川沖駅13577人になっています。次ページの表より、台地地区の人口21440人などから換算して、想定利用者を土浦駅20000人、荒川沖駅12000人、新駅5000人とします。土浦日大高校の全校生数は、平成11年度で2518人おり、かなりの生徒が新駅を利用すると思われます。
小松二丁目 | 448 |
小松三丁目 | 954 |
小松ヶ丘町 | 871 |
霞ヶ岡町 | 1910 |
桜ヶ丘町 | 2605 |
小岩田東一丁目 | 308 |
小岩田東二丁目 | 680 |
小岩田西一丁目 | 434 |
小岩田西二丁目 | 225 |
県営大岩田アパート | 357 |
市営大岩田団地 | 546 |
中高津町 | 279 |
上高津町 | 954 |
永国町 | 1073 |
永国東町 | 1833 |
永国台 | 240 |
国分町 | 701 |
中高津一丁目 | 1214 |
中高津二丁目 | 1779 |
中高津三丁目 | 624 |
天川一丁目 | 856 |
天川二丁目 | 1326 |
上高津新町 | 787 |
富士崎2丁目 | 436 |
合計 | 21440 |
表.4.2 台地地区内の地区別人口(平成10年10月1日現在/人)
(2)学園並木連絡道
本地区のメインストリートである県道桜ヶ丘大岩田線は、東側は、国道125号線・霞ヶ浦総合公園までつながっていますが、西側は、つくば市の桜ニュータウンで行き止まりになっています。そこで、つくば市からの新駅利用者も含め、人・物の新たな交流を生み出すために、学園並木団地まで延長します。途中、県道土浦岩井線ともリンクし、多方向とのアクセスを向上させます。
(3)新駅併設複合拠点施設整備
新駅設置とともに、台地地区住民のために、駅の拠点性を活かした駅併設複合拠点施設を建設します。これは、この地区に拠点をつくることによって、住民同士の交流はもとより、この地区のシンボルとして、地区のアイデンティティを高めていけると考えます。施設の内容ですが、以下のようになっています。
公民館 |
集会・習い事など地区のさまざまな行事に利用できます |
児童館 |
安全なオープンスペースが少ない本地区で貴重な遊び場となります |
学童保育施設 |
共働き世帯の子どもを主対象に安心できる楽しい放課後を提供します |
パソコン・ 談話コーナー |
パソコンがない人や地区外からきた人同士などがのんびり過ごせます 特に、中学生や高校生が放課後を健全に楽しく過ごせる場を提供します |
展望室 |
筑波山・霞ヶ浦などの雄大な風景を楽しめ、ふだん忘れがちな自然を再認識できます |
表.4.3 施設の内容
写真.4.5 新駅併設複合拠点施設イメージ写真(愛称
だいちプラザ)
(4)団地対抗祭り
台地地区には、古い団地がいくつかあり、地形の複雑さもあいまって、暗いイメージになってしまっているところもあります。そこで、団地のアイデンティティ確立も含め、良好な住環境を創出するために、団地対抗祭りを行います。これは、団地内にとどまらず、団地同士の交流も生み出し、駅を中心とした地区全体に活気を持たせることにもなります。
基本的には、以下の表のように春・夏・秋・冬に祭りを開催します。
写真.4.6 暗いイメージの天川団地
暗いイメージの団地を注意してみてみると、街路幅員の狭さやよごれたブロック塀、街路樹の少なさが目立ちます。そこで、団地内または土浦市で協定・条例をつくり、明るく緑あふれる住環境づくりをします。例えば、ブロック塀は、生け垣・自然の石などを使ったものにする。団地内幹線道路には、街路樹を植えて、自然のやすらぎが感じられるよう配慮します。その一貫として、春に庭コンテストを行います。がんばっている人を表彰することで、住民の意識を高め、団地全体に輪が広がっていけばと思います。他に、夏祭り、運動会、大なべ会を開催し、人と人の交流のきっかけをつくり、これが発展して日常的な人のつながりができ、地区全体の活性化・イメージアップになると考えます。
写真.4.7団地対抗祭りのイメージ
(5)エメラルドアイランド構想
台地に点在する畑・雑木林などと台地にはいりこんでいる谷津の田んぼの緑資源を活かして、緑を身近に感じられる住環境整備を行います。これは、ボストンのエメラルドネックレス構想の考えを応用したもので、エメラルドアイランドとは、この台地を島に、周辺の低地を海にみたて、緑豊かな島のような場所になるようネーミングしました。これに、団地対抗祭りの庭コンテストもからめることによって、地区内および周辺も含め緑豊かな風景をつくりだしていきたいと考えます。
谷津の田んぼは、団地造成で貯水池としてコンクリートでかためられてしまったり、団地と谷津の境界をコンクリート壁で大きな段差にしてしまって、団地と谷津のつながりを失っているところもあります。これらハードの改善が非常に重要であると同時に、人と谷津・畑のつながりを持たせていくことも必要と思います。
具体的なものとしては、すぐそばに存在する谷津田を使っての田植え・収穫などへの住民の参加が考えられます。また、団地・谷津・低地をつなぐ遊歩道など小道・けもの道の整備によって、こどもの遊び場・大人の安らぎの場になるのではないでしょうか。
4.土浦駅前
土浦駅前では、商業施設の集約化を行い、人々がうるおいや安らぎを感じることのできる地区、賑わいを感じることのできる地区の2つのテーマに沿って、一体的な整備を行います。主な整備事業として、5つの施策を実行します。なお、実施場所は、以下の地図のようになっています。
図.4.4 土浦駅前整備計画図
(1)人人ストリート計画
モール505と向かい合う地区に高齢者ケアハウスを建て、1階部分を意欲のある高齢者の運営する商業・文化施設として地域の子供に開放します。具体的には、「駄菓子や」や「文房具や」の設置を検討します。
高齢者に自分の知識や経験を活かした人々との交流の場を与えることで「高齢者の生きがい問題」の解決を、核家族化が進み、異なる世代との交流が少なくなった子供たちの「子供の社会勉強の場の減少問題」、双方の解決策として提案します。また、現状では、建設予定地付近は、西友や旧イトーヨーカドーの跡地などにより、暗くなりがちな通りであるが、常に人が集う場所をつくることで、雰囲気が明るくなり、暖かい空間となることを期待します。
写真.4.8 人々ストリートイメージ
(2)駅前街区公園整備事業
駅前での潤い・安らぎ空間の創出を主なテーマとし、駅西口からモール505への人の流れをつくること、霞ケ浦を望み、水とふれあえる空間を創出することを公園整備の主な目的とします。
写真.4.9 公園イメージ
(3)つちうらMarket Street
中心市街地では、商店街の衰退・大型スーパーの相次ぐ撤退による中心市街地空洞化の問題をかかえています。空き店舗・空きビルが多数存在し、歩行者も少なくなっています。そこで、県道駅前川口線を中心にMarket
Streetを整備し、車の流入を制限し、歩行者を増加させ、中心市街地活性化をはかります。駅・市役所・新公園での回遊性を・Market
Streetを軸に、人々Streetとともに創出します。また新公園は、霞ケ浦とリンクしており、水・緑・まちが一体的になり、自然と都市の両方の魅力を楽しめるまちになります。Market
Streetは、駅前から旧小網屋までの県道を、バス・タクシーなど公共交通専用の一方通行の道にして、あまったスペースで歩道拡幅を行います。具体的な道路構造は、以下の図のようになっています。道路を蛇行させ、街路樹を多めに植え、アメニティ性の高い空間を生み出します。また、拡幅する歩道はタイル張りにし、フリーマーケットや屋台、ママちゃり大競争(年1回)を開催し、市民にとって、親しみのある空間づくりをします。
写真.4.10 マーケットストリートイメージ
図.4.5Market Street道路断面図
(4)東口連結高架道路新設
マーケットストリートの設置及び公園整備に伴い、西口から東口に抜ける目的や駅への送迎目的の自動車交通による渋滞が激しくなることが予想されます。
そこで一般の自動車が東口に抜ける手段として、駅南側に東西連携高架道路を新設します。
高架道路を東西方向の断面図で見てみると図のようになります。西口側はウララ3の南側を走る土浦・境線から7%の勾配で上り始め7m上げるのに100mを要するので、駅ビルを横切った線路付近で最高点に達します。東口側は土浦・港線からつながっており、貨物置場があるのでその部分も高架を高くとっておく必要があります。また、東口側は西口側からの交通を駅前流すために、ロータリーに降りられる道も考えました。
図.4.6 東西連結道路・断面図
図.4.7 高架道路の勾配
図.4.8 高架道・断面図
図.4.9 東西連結高架道路開通前の混雑度
図.4.10 東西連結高架道路開通後の混雑度
(5)市役所移転
現在の市役所は、中心市街地から離れた丘の上にあり交通の便が悪く、市民にとって利用しにくい場所にあります。また、施設の老朽化も進んでいます。そこで、より利用しやすい市役所を目指し、中心市街地地区への移転整備を行います。現在の小網屋跡地を中心とした敷地面積5400uの地区に新庁舎(建築面積1690u3階建てのA棟、建築面積850u6階建てのB棟)を建設します。A棟の1階部分には、現在「土浦名店街」として商店を営んでいる商店をテナント利用し、B棟の1階部分駐車場および駐輪場として利用する予定です。また、マーケットストリートに向けてオープンスペースを設けることで、市民に開かれた市役所をアピールします。
敷地面積 |
5400u |
|
|
A棟 |
B棟 |
階数 |
3階 |
6階 |
建築面積 |
1690u |
850u |
延べ床面積 |
5070u |
5100u |
備考 |
1階部分は 商店 |
一階部分は 駐車場および 駐輪場 |
オープンスペース |
||
750u |
表.4.5 建物概要
写真.4.11 新市役所イメージ
図.4.11 新市役所配置図