第5章 交通計画

現在では土浦市に限らず、多くの都市において、多くの人々が自動車を交通手段として利用している。全国の自動車保有率を見ると、自動車1台あたりの人口が1.72人となっておりその伸びも大きなものとなっている。

また自家用乗用車についてみると、土浦では自家用自動車1台あたりの人口が1.99人、茨城県は2.02人(平成11年市区町村別自動車保有車両数(運輸省),市区町村別軽自動車車両数(全国軽自動車協会連合会)より)となっており、実に2人に1人の割合で自家用自動車を保有していることになっている。

また自動車保有率の増加に伴い、自動車走行台キロの伸びも見られる。図2−7で自動車走行台キロの推移をみると、全国では202.4ポイントであるのに対し、茨城では274ポイントとなっており、全国1位となっている。

図2−7 自動車走行台キロの推移

資料:岐阜県警察本部 http://www.pref.gifu.jp/POLICE/

自動車を移動手段として利用することにより、人々が自由度の高い行動ができ、それによって現在の経済、社会も大きく発展してきた。しかし自動車交通量の増大により、交通渋滞や交通事故、環境汚染などさまざまな問題も引き起こしている。

交通事故についてのデータを見ると図2−8より茨城県の人口10万人当たりの交通事故死者数は14人となっており、全国平均よりも6人ほど多く、全国1位の数となっている。また図2−9より、茨城県の人口1万人当たりの人身事故件数は72件となっており、全国平均よりも12件多く、茨城は交通事故の多い県だと言える。その中でも土浦市は10万人あたり交通事故死傷者数は1301人で県内5位、土浦の交通事故発生件数は1430件(茨城県で3位)で、人口千人あたりになおすと10.60ポイント(平成10年茨城県警察本部交通企画課交通白書より)となり、茨城県の中でもその数が2番目に多くなっており、安全なまちとは言えない状況となっている。

図2−8 人口当たり人身事故件数と死者数分布・県別

資料:岐阜県警察本部 http://www.pref.gifu.jp/POLICE/

 

図2−9 自動車台数当たり人口と死者数分布・県別

資料:岐阜県警察本部 http://www.pref.gifu.jp/POLICE/

このような実状から土浦市では、「人々の移動がスムーズに行われる交通」、「人々が安心して利用できる交通」、「環境にやさしい交通」交通体系が必要であるといえる。「人々の移動がスムーズに行われる交通」については道路の容量を増やすといった整備、バス路線の増設などの公共交通のサービスの向上といったようなハード面の施策、また相乗りシステムの構築、時差出勤の推進、ノーマイカーデーの実施といったものを行うソフト面の施策による渋滞解消を行う。そして、「人々が安心して利用できる交通」というのは、高齢者などの交通弱者に対しても不便なく利用できるような交通。そして、交通事故が少ないといった面での安全に利用できる交通の施策を実施していく。また「環境にやさしい交通」とは、自動車の排気ガスに悩まされない対策、自転車に乗って街中が移動できるような整備をしていく。またこのような整備を行う際には、市民の意見を聞きながら進めていき、市民のニーズに合った交通体系づくりを行っていく。

まず土浦とその周辺の交通状況を把握するためにJICA-STRADA(*1)を用いて現況分析を行った。

*1 JICA-STRADA:国際協力事業団が開発した交通需要予測パッケージ

JICA-STRADAによる平成22年度の道路混雑状況予測は図0−0のようになっている。この様子を見ると、まず第1に国道6号での混雑状況が激しいことがわかる。この理由として、国道6号は首都圏の市町村と茨城県の主要都市とを結ぶ重要な役割をもった幹線道路であり、国道6号を利用する通過交通も多くなっているからであり、また国道6号の道路容量が需要量に達していないことが大きな要因となっている。

また、駅周辺で道路が混雑していることがわかる。これは人々がそれぞれの駅を通勤や買い物など様々な理由で利用する人が多くいるため、このような結果になったのだと考えられる。

 

図2−10 平成22年道路混雑状況(現況道路網)

 

次に図2−10から見られることは、阿見町、新治村、千代田町などの近隣市町村との境界部分で交通量が多くなっていることがわかる。これは図2−11から見てわかるように土浦市は土浦市近隣の市町村の商圏となっており、このような理由から土浦市と近隣市町村を結ぶ道路において、交通量が多くなっていると考えられる。

このような近隣市町村との結びつきは医療圏、余暇圏、通勤圏、通学圏についても強くなっている。

図2−11 土浦市の商圏

 

また土浦市とその周辺市町村のトリップ分析を行なった結果が図2−12であるが、土浦市は新治村・千代田町・霞ケ浦町・阿見町とのつながりが強いことが分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図2−12 JICASTRADA目的別希望線図を用いたトリップ分析

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このような状況から、土浦市では以下の点について道路整備を行っていく。

国道6号に関しては、道路利用が効率的に行われるように整備を行う。近隣市町村間のアクセス強化に関しては、新治村・千代田町・霞ケ浦町・阿見町との間の道路整備を行い、スムーズに移動が行われるような整備を行う。

また拠点間交通の強化に関しては、新興住宅地域周辺の道路整備及び工業団地周辺の道路整備など次のことに主眼を置き、整備を行っていく。

 

 

以上のような道路整備の必要性から、図2−13のように道路の拡幅、新設を行う。

<道路拡幅>

神立駅〜土浦北部工業団地〜国道6号間の道路拡幅

国道125号拡幅(新治〜土浦間の道路拡幅)

現国道6号バイパスの道路拡幅

荒川沖・阿見線の道路拡幅

<道路新設>

木田余地区周辺の道路新設

荒川沖・木田余線道路新設

土浦市役所南部の道路新設

ひたち野牛久駅周辺の道路新設

国道6号バイパス(国道6号バイパス中村入り口〜取手)の新設

 

図2−13 道路拡幅・新設箇所

道路整備後にJICA-STRADAにより、道路混雑状況について分析を行うと、図00のように混雑状況はほぼ解消したが、駅前周辺での混雑状況は効果が見られなかった。

改善を行った後の状況を踏まえた結果、そしてこれ以上の道路容量の拡大は難しいといった状況を考慮し、ソフト面を重視したTDM施策を実施していくこととする。

図2−14 平成22年道路混雑状況(道路整備後)

TDM(*2)施策についてはHOVレーンの設置、パークアンドライドの推進、時差勤務の推進などの施策があるが、これらの施策は市民の意向、土浦での実効性を調査してから採用すべきものなので、交通社会実験や市民討論会などで検証した後に採用する。

の交通行動の変更を促すことにより、都市や地域レベルの道路交通混雑を緩

和する手法。円滑な交通流の実現により、環境の改善、地域の活性化が図ら

れるため、全国各地で、TDMへの取り組みが始まっている。