第1部
理念と将来都市像土浦では、江戸時代前期の水戸街道の開通から本格的なまちづくりが進み、城下町として、また水運による交通の要衝、物資の集散地として栄えてきた。その後、明治・大正時代には、常磐線の開通により、水運に代わって鉄道・自動車などの陸上交通が発達し、戦前・戦中は海軍のまちとして進展したが、終戦に伴いその性格は失われていった。
その後は近代化が進み、土浦・千代田工業団地や宅地の開発も進み、県南地域における中核都市として成長した。昭和60年の国際科学技術博覧会(つくば博)を契機として都市基盤の整備が進み、また、第四次首都圏基本計画や「土浦・つくば・牛久業務核都市基本構想」などにおいて、つくば市や牛久市などとともに業務核都市に位置づけられ、業務核都市の育成・整備が期待されている。図1−1は土浦のこれまでの人口の推移をグラフに表したもので、現在の人口は約13万5千人である。
図1−1 土浦市の人口の推移
(資料:常住人口調査)
また、常磐自動車道の全面開通(昭和63年)や、工業団地テクノパーク土浦北の概成、土浦駅前地区市街地再開発事業への着手(平成7年)、都心型複合施設「ウララ」のオープン(平成9年)など、業務核都市を目指した都市機能の整備が行われてきた一方で、平成7年に第6回世界湖沼会議が土浦市とつくば市で開催されるなど、水質の浄化をはじめとする環境問題に取り組む気運が高まってきた。
土浦市は、首都東京から60km圏にあり、筑波研究学園都市に隣接し、新東京国際空港や鹿島港にも近いなどの地理的な優位性を持っている。また、日本第2の湖沼である霞ケ浦をはじめ、桜川や丘陵地帯の平地林など、水と緑豊かな自然に恵まれ、土浦城址や歴史的まちなみにみられるように、長い歴史に培われてきた文化的遺産も持っている。そして、JR常磐線、常磐高速自動車道、国道6号線、国道125号線などで東京をはじめ周辺の主要都市と連結されており、今後の広域幹線道路の整備や首都圏中央連絡自動車道の建設などにより、県南地域における広域基幹交通としての重要な役割を担っている。
首都機能の再編が叫ばれる中で、首都圏への近接性と開発可能性の両面から、土浦市を含む県南地域は重要な位置をもち、第四次全国総合開発計画や首都圏基本計画において、土浦市は首都の機能を分担する業務核都市として機能を果たす役割を期待されている。
また県の「グレーターつくば構想」においても同様の位置づけが示され、業務核都市の育成・整備に加えて、豊かな自然環境をいかし、業務機能等の近接性にも配慮した住宅の整備を進めるなど、ゆとりとうるおいのある職住近接型の住環境づくりを図るとされており、首都圏ならびに県における役割を果たすべく、都市の基盤が整備されてきている。
近年の景気の低迷の影響を受け、高度成長期に大きな飛躍を遂げてきた土浦市も、全国の主要都市と同様に、近年では中心部における人口の減少、大型空き店舗の増加、業務・サービス機能の低下、都市間競争の激化、ロードサイドショップなどにみられる郊外型の店舗の利用者の増加などにより中心市街地の空洞化が進行しており、その解決に向けた取り組みが求められている。
図1−2 中央商店街の写真
シャッターを閉める商店が多くなっており、本来買い物客で賑わうはずの
時間になっても人通りは少なく、活気が感じられない。
現状視察を行ってみると、古くからある中央商店街の店舗の多くが店を閉めていて活気がない、モール505商店街が高架道路の下にあるなどのことから雰囲気が暗いこと、西友や東武ホテルの撤退及び旧イトーヨーカ堂の移動などからモール505は人通りが少なく活気がないこと、営業している店舗が点在しており明確さがないこと、まちなみに統一性がなく連続性もないこと、などの問題点が挙げられ、全体として「流れ」が感じられないという問題点が浮かび上がった。
図1−3 モール505の写真
昼間でも暗く自動車が通るため、楽しめるような歩行空間ではないため、
人通りが少なく、活気に乏しい。
茨城県南の中心都市として発達してきた土浦市の商圏内購買力吸収率は年々低下傾向を示し、平成3年には初めてつくば市の影響圏に入り、平成9年現在では土浦市の商圏人口は366,000人となっている。つくば市が土浦市を約3万人上回っていることから、周辺の市町村の商業機能の充実により、土浦市の県南地域の商業の中心としての基盤が揺らいできており、今後の常磐新線の整備による土浦市の商業へのさらなる影響も懸念されている。
土浦の商業データに目を向けてみると、図1−4に示されるように、土浦市全体としての商業売場面積は年々増加しているのに対し、中心市街地においては年々減少している。加えて土浦市とその中心市街地の商店数はともに年々減少していることから、郊外型の大型ショッピングセンターが増加しているということがわかる。
図1−4 中心市街地の商業の土浦市全体に占める割合
(資料:商業統計調査)
商業の年間販売額を見れば土浦全体としての商業年間販売額は横ばい状態であるのに対して、中心市街地の年間販売額は年々減少している。また、表1−1を見ると、商店数・従業員数・売場面積・年間販売額のいずれについても、土浦市全体に占める中心市街地の割合が減っていることから、中心市街地の土浦市全体の商業における役割は年々縮小しており、中心市街地の商店街の客は郊外の商店に奪われていることがわかる。
表1−1
中心市街地の商業環境の推移(資料:商業統計調査)
市の商業者へのアンケート調査によると、図1−5は今後商店街で必要な対策についてのアンケートの回答であり、今後商店街で必要な対策として、「空き店舗の解消・活用」や「特徴ある業種の集積」が求められている。空き店舗を活用して、土浦の駅前として独自の魅力をもった、回遊性のある商業空間となるような施策が必要である。図1−6は、「空き店舗の解消・活用」と回答した割合を商店会別に表したものである。特に中央商店会
図1−5 今後商店街で必要な対策
資料:商業者アンケート調査
図1−6「空き店舗」と答えた割合(商店会別)
資料:商業者アンケート調査(n=545)
中心市街地の人口の推移に注目してみると、図1−7のように、市全体の人口は増加しているのにも関わらず、中心市街地の人口は、昭和
図1−7
土浦市及び中心市街地の人口の推移
また、土浦市全体の人口については現在約
13万5千人であるが、近年の人口の推移を見ると、微増もしくは停滞傾向であり、近年の少子・高齢化によって今後全国的に人口が減少傾向をたどることを考えると、これ以上の大幅な人口の増加は望めなくなってきている。土浦市においても、子供の人口の割合は減少傾向にあり、老年人口の割合は増加しつつあるため、子供を産み育てることのできる環境づくりとともに、高齢社会に対応し、活力のある高齢者が積極的に社会に参加できるような環境を整えるとともに、地域コミュニティーの育成や、誰もが快適に過ごせるような環境を整備する施策の推進が求められている。図1−8 土浦市及び中心市街地の高齢化率
資料:統計調査
今後人口の分布がどのように変化していくのか、
TUDYを用いて分析した。対象は土浦市・つくば市・牛久市・茎崎町で、入力した政策は、下の表0に示した既存のニュータウン計画である。2010年の計画人口は、常磐新線(つくばエクスプレス)の沿線のニュータウン計画による影響も考慮し、48万人とした。図0は1995年の時点のゾーン別人口密度及び2010年の各ゾーンの人口密度の予測である。これを見ると常磐新線の沿線のニュータウン開発が行われる地域では、人口密度が大幅に上昇し、つくば市は全体的に人口密度が上昇している。土浦市でもニュータウン開発が行われる地域では人口密度が増加しているが、その増え方はつくば市に比べると少ない。また、土浦市は開発のある地域を除くと、どの地域もほとんど大幅に人口密度が減少している。以上から、土浦市は更なる魅力の工場に積極的に取り組まなければ、将来は衰退していってしまうと考えられる。
表1−2
TUDYの分析で入力した政策
年 |
ゾーン |
政策 |
開発面積( ha) |
1998 |
53 |
住居地域でのニュータウン建設 (牛久/人人ニュータウン) |
134.20 |
60 |
〃(〃) |
100.00 |
|
2000 |
16 |
〃(土浦/木田余) |
70.80 |
20 |
〃(土浦/田村・沖宿) |
99.60 |
|
3 |
〃(土浦/瀧田) |
20.70 |
|
2005 |
39 |
〃(つくば/萱丸) |
293.00 |
40 |
〃(つくば/島名・福田坪) |
243.00 |
|
36 |
〃(つくば/上河原崎・中西) |
168.00 |
|
37 |
〃(つくば/葛城) |
485.00 |
|
51 |
〃(つくば/中根・金田台) |
190.00 |
1995年の人口密度 2010年の人口密度予測
図1−9 1995年の人口密度及び2010年の人口密度予測
また近年の交通網の発達やモータリゼーションの進行等によって、住民の日常生活の圏域は広がってきている。そのため、住民が日常生活において周辺の市町村に行く機会も多くなり、これまでの市町村単位の枠組みでの行政サービスでは対応しきれなくなってきている。
下の図1−10は、土浦市、つくば市、牛久市、茎崎町の市役所や出張所のボロノイ図を描いたものであるが、現状では、市役所や出張所までの距離は住んでいる場所によってかなり異なり、隣の市町村の市役所や出張所のほうが近くなる場合もあることがわかる。ここで周辺の市町村と連携して互いの施設を利用できるようになれば、住民にとっての利便性は上がると考えられる。このように、これまでの市町村の枠組みにとらわれずに、周囲の市町村と連携した広域行政によって、住民の生活の質の向上を図っていくことも重要である。
図1−10 市役所・出張所のボロノイ図
第2章 まちづくりの理念と将来都市像
いよいよ始まりを迎えた21世紀、土浦市が更なる発展をしていくためには、今までのマスタープランのような開発型のプランではなく、今ある資源の活用などのソフトな手法による開発計画が、現状の段階においては望まれるものである。
今回のマスタープランにおいては、ヒトの流れやモノの流れなどに注目し、さまざまな「流れ」のある地域空間の創出を目指すこととした。まち単位の小さな流れから、市内全域、そして広域市町村間においての流れ等、様々な流れを創出・活用していくものとした。
また市民参加を積極的に取り入れ、計画の根底において市民の意見の反映に努めていき,市民みんなで作っていくまちを目指すこととした。その体系を構築及び実施していく中で、行政・市民、さまざまな人々の協力の流れができていき、そしてその流れがまちを作っていくことになるであろう。
以上により、他のどことも違う独自性を持ったまち「つちうら流のまち」として成長していくことを願う。
今回の第6次マスタープランは、この概念に基づいて構成されている。